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Abandoned Night 12話

同盟を組んだ私たちは、紅茶を飲み干して解散する事になった。

私とシオンちゃんが家を出ようとした時、ミラに引き留められた。

「もう夜ね。だから気を付けて?後、近いうちにソラに近づいてちょうだい?よろしくね。」

ソラか…危ない気がするけど、大丈夫かな…

不安そうな私に気づいたのか、ミラは「大丈夫。助けるって約束したでしょ?私、約束は守るタイプよ?」とニッコリ笑った。


私とシオンちゃんはミラの家を出てしばらく夜道を歩く。

「…これからどうしようね?」ポツリとシオンちゃんが呟く。

「…分からない。でも、とりあえずソラに会ってみないとかもしれない…。」

「そうだね!ソラ君に会ってみたら何か変わるかも!皆が生き残れる方法を見つけてくれるかもしれないよね!」

そうだろうか…?私から見てソラは一番殺気が高いというか、読めない危ない人だと思うけれど…。

「アイちゃんと一緒なら大丈夫な気がしてきたよ!ありがとう!アイちゃん!」


私とシオンちゃんは石を見ながらソラを探していると、一つの家にたどり着いた。

ミラの家とは雰囲気が全然違う。本当に人が住んでいるのか疑うほうど手入れされてない庭や、塀や門はボロボロで、どこか立ち入っては行けないような雰囲気を感じる。

「…本当にここにいるのかな…?」

シオンちゃんが恐る恐る聞いてきた。

「…分からない。でも扉…一緒に叩いてみよ?」


二人で扉をゆっくり叩くと、扉はあっさりと開き中からソラが出てきた。

「やぁ、こんばんは。お二人さん。訪ねて来る人なんて珍しいと思ったら、本当に珍しい二人が来たね?お客さんならいつでも歓迎だよ?さぁ、どうぞ上がって?」

ソラはいつも通り長い前髪で片目を隠したまま薄っすらと笑った。

私とシオンちゃんは顔を見合わせてお互いに頷くと家の中に足を踏み入れた。


家の中は以外と何も無い。不気味なほどに。

本当にソラはここに住んでいるんだろうか…?

廊下を歩いているとソラがピタリと止まった。

ソラは私たちの方いクルッと振り向いて「ここが僕のいつもいる部屋。」と言って中に案内してくれた。

すると中には薄暗くてよく見えないが人がいるように見えた。

それはシオンちゃんも同じ事を思ったようで「ソラ君…誰かいるの…?」

ソラは「あぁ」と呟いて言った「僕の理想の恋人だよ。」

理想…?の恋人?あまりにも生きているようには思えないほどグッタリしているが…。

ソラは続けて言う。

「僕はね、本当の愛を貰って育たなかったんだ。本当の愛なんて分からないだろう?でも本当なんだよ。僕は偽物の愛を貰って育ったんだ。だからね?僕は本当の愛を探そうと思った。でも難しい。だからまず理想の恋人を作る事から始めたんだ。」

何を言ってるのかよくわからないが嫌な予感がする。

「手が好きだと思った人からは手を。足が好きだと思った人からは足を。そうやって色んな子から好きな場所を貰ってきて、つなぎ合わせたんだ。でもね中々理想には近づけない。純粋な愛はどこにも無かったんだ。」

ソラは悲しそうに呟く。

シオンちゃんは震え混じりに聞く。

「ね、ねぇ、ソラ君。最近、行方不明事件が多いのって、もしかして…」

「あぁ、全部僕だよ。」

ソラはあっさりと答えた。

「な、何で?そんな事をするの…?」

「うーん。最初は人じゃなくても良かったんだ。純粋な物なら何でも試してみた。お風呂に溜めた水にキスだってしてみた。でも違うんだ。何か足りない。そんな気がしてね?人で試してみようって思ったんだ。」

ソラは頭が可笑しい。そう思った。

シオンちゃんは泣きそうになりながら言う。

「可笑しいよ。人を殺すなんて…そんな簡単に…だからユニ君の時も簡単に殺そうとしたの…?」

ソラはずっと薄ら笑いしたまま。「何がどう可笑しいのか分からないけど、僕は自分が正しいと思った事をしてるまでだよ?」

「それに」とソラは付け加える。

「人を殺すなんて可笑しいと君は言ってるけど、悪魔と契約してこの戦いに参加してるのに、そんな事ぬかしてるのかい?君の方が可笑しいよ。あっ、もしかして巻き込まれた側なのかな?だとしたら残念だね。君は向いてないよ。」

ソラは淡々と話す。

「良いこと教えてあげる。人殺しなんてそこら中にいる。身近な人から変えていけばなんてぬるい事を考えしてるかもしれないけれど、無理だよ。君には。」

シオンちゃんの目から涙が零れる。

「…どうして?」

と絞り出した声で聴く。

「君は僕を理解できないのと同じ、僕は君を理解できない。いや、したくない。殺し合わないで済むなんて綺麗ごとに反吐が出そうだ。いいかい?もっと君が理解出来なさそうな事を教えてあげる。僕の石の場所だ。目だよ。」


は?

訳が分からない。何を言ってるんだ…?

「…何を言ってるの?」シオンちゃんはもう限界のような声で聴く。

「僕の片目。潰したんだ。悪魔と契約すれば石は壊されない限り痛みは感じない。生き続けられる。だからね、片目に石をはめ込んで前髪で隠してたんだ。」


そうとう狂っている。そう感じた。

「…どうして?自分の事を傷つけるの…?ダメだよ…。良くない…人を殺すのも…自分を傷つけるのも…」

シオンちゃんは目が泳いでいる。混乱してるみたいだ。

私は何もする事が出来ない。

「どうして?生き残るために決まってるじゃないか!僕は生き残って理想の恋人を手に入れるんだ!君と一緒にしないでくれ!良いかい?君みたいな人を何て言うか教えてあげるよ!偽善者って言うんだ!分かりやすく言うと、いい子ちゃんぶりだ!君みたいな人は自害でもして僕の目の前から消えてくれ!!」

ソラが初めて感情を見せた気がした。

怒りだと思う。

シオンちゃんは震えて泣きじゃくっていた。そして震えた声で独り言のように呟く。

「悪魔…私の悪魔…?聞こえてる?私殺したい人できたよ。本当に憎くてどんくさくて、感情に任せて虐めて来た人皆殺しちゃうような子…」

シオンちゃんは震えながら石をポケットから取り出す。

「それは…私だ。」そう言って短刀で石をパリッと砕いた。

シオンちゃんの身体が塵の様に消えてしまった。

私は…私は。何も出来なかった。

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