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方角に向かえば良い筈なのに

 勇者及びその仲間達は黒曜石の板の上で動く赤い点が示す方角にいる。

 

「女王様は凄いものを作らせたな。技術が進めば距離すら把握できそうな代物だよ、これは」


「俺が勇者だったらあまりいい気はしない。体の中に何か埋め込まれたかと疑うし、帰りが遅かったりどっかに寄ってても強制的に捜索されると思うとな」


 情報屋社長と狐仮面はテーブルを挟んでお茶を飲みながら今後の方針を決めていた。

 要は喫茶店で小休憩である。

 狐の仮面を被り黒い忍び装束、そして女社長は黒いドレスであるが何故か各部に切れ込みが入っている。本人曰くダメージドレスとか言っているが服装に男のフェチを刺激する所を色々と目立たせている。

 個別に考えれば格好に関して別に目立っていたり浮いているわけではない。

 ただ黒の面積が多く一箇所に二人以上もいると、異様な雰囲気を発しているのか妙に周りがチラ見してくる。

 ついでに仮面は目立つことが好きではない。寧ろ社長は目立つ方が仕事において有効活用できると考えている。

 

「大事にされていると言えば聞こえこそいいが、女王様の話を聞くと私ならやる気をなくして城に引き篭もりたくなると思う。高価な飯に史上最大の宿(城)、メイドや女中、勇者なんだからその気になればハーレムだ。ついでに仲間達も同じ待遇でもてなされていたそうだよ」


 社長は三枚の黒曜石の板をテーブルに並べた。狐仮面も勇者の板を並べた。

 全部違う方向を挿し示しているが、位置が徐々にズレたり、大きく動いたりしている時もある。


「この場合、方向を変えたり何かしらの方法で大きく距離を移動したと見るべきなんだよな」


「ああ、仲間の中には魔術師もいるらしい。凄腕なら瞬間移動や空を飛ぶこともできるやつもいるとか」


「なぜ私はそんなやつ含め三人も探さなければならないのか・・・最悪勇者だけでもいいんだろう?」


 因みに勇者以外の三人の仲間達は詐欺師、奇術師、賭博師の三人。


「一人でいいからそっちが受け持ってくれないか」


「・・・一つ疑問なんだが」


 仮面は勇者一行の顔と特徴、職業が描かれたリストを見ながらつぶやいた。


「誰一人としてまともじゃないのは何故だ」


「私は頭脳派だよ。別にできなくもないけど得意じゃない」


「聞けよ。何にせよ・・・色んな意味であんたが適任だよ」


「ユーシャが勇者を探せというふざけた洒落任務も大概だと思うけど」


 仮面は顔を上げた。


「聞いてたのか」


「少しの間とはいえ出てくるのが遅いから気になってね。それで事実なのか?君の正体」


 仮面は今更隠してしょうがないと思い、仮面をずらした。


「それなりに整った顔立ちだな」


「満足か、いい脅しの材料が見つかって」


「脅し?何で」


「正体バラされたくなければとか、秘密にする代わりにとか、単純な悪党ならそうしようと思う筈だ」


 社長は固まったと思ったら深くため息をついた。


「そんな脅ししても後で何倍もの報復が降りかかってくることは目に見えてるよ。脅しで得られる利益は短期的で時がくれば倍以上の損をする。なら長期的に利用し育て利益を膨らませる方法を考える。それに君の正体には推測が確信に変わっただけで別に驚きもしてない」


 隠し事というのは観察力と勘の鋭い人間の前では意味をなさないのだろう。

 ユーシャは久しぶりに解放された気分になった。

 

 

 黒曜石は東を指している。

 勇者を探し始めて二日目、ユーシャが王都を出て向かった先にあったのは海だった。

 しかも水平線の見える海岸ではない。

(迂闊だった、忍びとはあらゆることを想定して動かなければいけなかったのに。陸を進んだ果ては海だったゆえに船に忍び込んだまでは良かった。無賃乗船したことにバチでも当たったのだろうか、まさか船が一晩で難破するなんて想定していなかった)

 ユーシャは今船の上にいない。

 つい先刻まで船の積荷の影の中に隠れていた。もしかしたら船員が勇者について何か知っている可能性があったからだ。

 下っ端から船長に至るまで話を聞いたが(盗み聞き)、何も収穫が無かった。

 なのでとりあえずこの船の目的地である土地の情報を掴み船の中をあらかた見終わった後、貨物室の中で眠ることにした。

 その数時間後、船体が不自然に揺れたと思ったら大きく傾きだし船内が騒がしくなった。何が起きているのか知らないが、とりあえず避難する。


「飛影の術」


 ユーシャの体が漆黒になり自らの影と同化した。


「逃げる隠れるにおいて影の術は最高位の忍術とよく言われていた」


 影は光の通る面に沿えばどこでも行き来自由だ。

 飛影の術は己の影と同化し人や物の影に潜り込む術。影化している限りどんな物理干渉の影響を受けないが、自らも移動以外できない。

 その結果海に浮かんでいた積荷の影と同化し、かろうじて水面の水影に止まることができている。しかし、自分の意志で動かすことはできない。

 つまりユーシャ自身怪我をすることはないし、腹の減りや喉の渇きも遅らせることは可能だが影に同化した対象が動いてくれないとジリ貧だし動くことができない。この状態で術を解けば危険なことこの上ない。

 それこそ嵐が吹いて動いてくれるか、どこぞの船が通りがかって拾ってくれることを祈るしかなくなる。

 


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