046:お約束!
今回も、趣味に走ってみた(笑)
やっぱり旅行中、一度はこうじゃないと…ね?
「あの~陛下…」
「しっ!御隠居でしょ!!」
「え?あの、その、ご、御隠居…って、なぜ我々は隠れているのでしょうか?」
「陛…御隠居…そうですよ、別に隠れる事なんて…」
「良いのよ、ここで身分を明かしたら、お忍びで出てきた甲斐が無いじゃないの!!」
「「………そうですか………」」
ここは、王都を出てから3日目、F国寄りの町ヴィッセン、長々と続く街の有力者からの挨拶に厭きたマリーが、護衛の近衛隊長と近衛副隊長の二人を騙して、町の市場までお忍びで出てきたのである。
おまけにいつ調達したのか、平民の服(男性用)に着替えている。
そして、お約束のように街のならず者と騒動を起こし、隠れているのである。
「う~ん、そろそろ良いかな?」
「陛…じゃなかった御隠居、そろそろ帰りましょうよ」
「そうですよ、フィリップ様にバレたら、まずいですよぉ~」
「もう仕方がないわね~、じゃお土産だけ買ったら帰るわ!」
スケさん、カクさん(マリー命名)の二人から泣きつかれ、これ以上は無理か…と言うことで、仕方なく妥協した。
そして、水晶の付いたブレスレットに、話しかける。
「ヤシチー、ヤシチー聞こえてるでしょ~」
『誰がヤシチーよ、男名前で呼ぶなら返事しないわよ!』
「あ!ごめんごめん!じゃあオエンー!これから帰るから、フィリップにばれないように誘導して~」
『あら~残念!それは無理ね~』
「え~?何でよケチ~」
『ケチって…酷いわ!私だってしてあげたいけど…』
『横で、私が聞いているから無理ですね!』
オエンー(エリザベス)との会話に、突然フィリップの声が割り込んできた。
「げ!ばれてたの~最悪~」
『最悪は、こちらです!!どうせ市場にいるんでしょう?迎えに行きますから、大人しくしていて下さいよ!!』
そう言って、一方的に水晶玉通信を切られてしまった。
「あちゃ~ばれちゃったわ…仕方ない、大人しく買い物して待ってるか~」
「「そ~して下さ~い」」
少しホッとした護衛2人組と一緒に市場の屋台へ向かっていく、そこならば市場の入り口が見えるので、すぐ合流出来るからだ。
マリーが目指した屋台は、飴細工をしている一角。
そこで、侍女達にお土産を選ぶことにしたのだ。
動物の形や、花の形などを手早く飴で表現していく。
「うわ~凄い!おじさ~ん、あれと・これと・それと…とりあえず一個ずつ下さいな!」
マリーがそう注文すると、飴細工のおじさんは、
「お坊ちゃん…じゃねえな、お嬢ちゃんか…そんなに買って大丈夫かい?あんまり食べ過ぎたら太っちゃうよ~」
「おじさん、太るはよけいよ~ま、これはお土産だから~」
「おや、そうかい…じゃ1個オマケだよ!」
「ありがとう!」
飴細工のおじさんから、ちゃっかりオマケをしてもらって、喜んでいたマリーだったが
「こんなところにいやがったな~!」
「さっきは逃げやがってっ!」
と口々に乱暴な言葉を話し、偉そうな態度の男に向かって
「管理官様、この者達が先ほど市場税の取り立てをじゃました奴らです!!」
と、言う言葉を聞いて、マリーの機嫌は急降下した。
「管理官様って…あんた達も、お役人?」
「そうだ!この街の代表である管理官様の役人だっ!」
「え~じゃあの乱暴な態度で、税金取り立ててたの?」
「乱暴はよけいだっ!たった3割の税金を払わないやつが悪いんだ!!」
「…ちょっと、3割って何?税金は1割でしょ?」
聞き捨てならない話に、思わずそう言うと、偉そうに立っていた管理官が、
「何を言っている!税は3割じゃ!1割が国に2割はこの街の整備費に決まっておろう!!役人の邪魔をするとはけしからん!捕まえろ!!」
その言葉とともに、マリー達の周りを取り囲む役人達…
そして、そんなやりとりに、飴細工売りのおじさんも市場の市民も固まっている。
「…マジで、お約束だわ~スケさん、カクさん、暴れちゃおう!」
「…ストラウドですって!ちゃんと名前を呼んで下さいよ~」
「私は、カークです!怒られても知りませんよ~」
「大丈夫!何たって私が一番だから!」
「「………」」
脱力感を覚えつつ、護衛の二人はマリーをかばいながら役人達に対峙しようとしたその時、役人達の後ろから、聞き覚えのある声がした。
「これは何の騒ぎですか?管理官殿」
その声に、管理官も周りの役人も一斉に振り向き、金縛りにあった。
そこには、笑顔なのに全く目が笑っていないフィリップが近衛兵を連れて立っていた。
「こ、これは副宰相様!申し訳ありません、ならず者が騒ぎを起こしまして…」
「ほう~ならず者ですか?」
「はい!市場で騒ぎを起こしましたので、取り締まっていた所です」
そんなやりとりを聞いていたマリーが、
「ねえ~副宰相様、この街の税金って3割なんだって!」
とフィリップに話しかけた。
「何ですと?管理官どういう事ですか?」
フィリップに問われた管理官は、青くなりながら
「いえ!この者が嘘を言っているだけで…」
「あら~そんなこと無いわよ~さっき、お偉い管理官様が『税金は国に1割、街の整備費に2割の全部で3割』って言ったじゃない!」
と、マリーが混ぜっ返す。そしてとどめに
「確か、街の管理費って、国から支給されてたわよね~じゃあ市民から取ってる2割の税金はどこに消えてるのかしら?ねえフィリップ?」
「なっ!フィリップ!?なぜ貴様が副宰相様の名前を…」
驚く管理官達を尻目に、はぁあ~とため息をついたフィリップが
「…マリー様、お遊びは大概にして下さいよ~
この街のことは、監査がもう査定していて、私達が去ったら管理官共々役人も捕縛する予定だったんですから…」
「あら良いじゃない!自分から尻尾を出してくれたんだから、手間が省けたでしょ~」
「陛下っ!!!!!怪我でもしたらどうするんですか!」
「「「「「「「「陛下ぁ~~~~!?」」」」」」」」
管理官も役人も飴細工のおじさんも遠巻きで見ていた市民さえも、マリーを見て絶句している。
「あ~あ~良い所はみーんなフィリップに持ってけれちゃったけど、一応言っておくわよ?国王として命じます。
不正をしていた管理官及び役人は財産没収のうえ罷免、ちゃっちゃと捕まえて裁判受けさせてね~そうそう、さっき市場で聞いた話によると、管理官の一族も手広く不正をしていたみたいだから、一緒に処分してね!不正に関係なかった親族は神殿預かりで対処して、新しい管理官は後ほど選定します。それまでは、監査官が兼務します。」
ここは、マリーが滞在しているホテルのスイートルーム。
応接セットに座るマリーに立ったまま怒っているフィリップ
「…全く、良いですか?今後このようにお忍びで出かけることはやめて下さい!!」
「は~い、はい」
「はいは、短く一回です!」
「はい!」
あの後、ホテルに連れて帰られて、延々と油を絞られたマリーなのでした。
これで、フィリップ=口うるさい爺やで決定ね
あ!でも、ちゃっかりハチベーがいない!(笑)
一度はやってみたかった、水戸○門(笑)