044:二兎を追う者は三兎も四兎も得る
久しぶりに、1日2話同時更新してみました。
何とか、46話くらいから旅立てそうです。
が、明日と明後日は、もしかしたら更新できない可能性大…
更新がなければ、次は火曜の夜か水曜日になると思って下さい。
ここは、衣装部屋。
クローゼットではなく、部屋である。
小学校の体育館ほどもあるスペースに、舞台衣装かと思えるほどの衣類が並んで下げられている。
元々は、前国王の道楽衣装部屋だったのを、改装してマリーの衣装部屋兼デザイナーなどの仕事部屋にした物である。
一角には、大きなテーブルが6つほど置かれ、1つのテーブルには人が3~4人おり、凄いスピードで衣装を縫っている。
そして、大きなガラス越しに隣の部屋が見え、そこではデザイナーのレットを筆頭に助手達が集まって白熱した話し合いがもたれていた。
「そこはダメ!もっと甘めのカーブにして左胸のあたりにドレープを寄せて!」
レットが助手のデザイン画に注文を出すが、助手のミミから
「先生、それでは肩が強調されてしまいますわ!そこはこちらのレースを少し見える程度にした方がっ!!」
「ええ~!?それじゃああ女らしさが出ないからダメ!」
「しかし、出し過ぎるとイヤミですわ!」
その横では、他の助手も
「カーラ!ここにレースを足しましょう!デザイン画はどこ?」
「エリーこちらよ、どのモチーフにします?髪飾りをあわせるなら少し大きめが良いかしら?」
「そうね~当日はアップにするらしいから、髪飾りの方を大きくして、ドレスの裾に小さめな物を付けるわ!ジャケットの方はシンプルにって言われてるけど、シャツの襟元と袖口には思いっきり派手にレースを付けて!」
「色はこちらの白にするの?」
「いえ、シャツは黒だそうよ~」
そんな戦場に、マリー達は入って行けずにいる…
応接用の椅子に座って侍女達にお茶を入れてもらいながら、既に待つこと30分。
「は~なかなか大変そうね」
横に立つナナにそう話しかけると、
「…やはり最終兵器が、大変らしいですよ。本当に宜しいんですか?」
心配そうに、ナナが聞いてくるが、
「う~ん、使わないで済んだらいいんだけど、A帝国の皇帝ってくせ者らしいから、ちゃんと予防線は引いておかないとね~
まあ、これは念のため…だから使わないこともあるわ」
「はあ…そうですか…」
そんな話をしていると、廊下側の扉がノックされ侍女が応対してまもなくエリザベス達が入ってきた。
「ごめんなさい、ちょっと遅かったかしら?ヴィクトリアがシリルの実験につきあわされていたので、手間取ったのよ!」
そう言いながら、侍女のエリスに何か渡している。
「それなあに?」
私が聞くと、
「ああ!差し入れよ~スーザンとイブが、城下町に行くって言ってたから、頼んでおいたのよ!今、城下で人気のフルーツタルトよ!みんなの分もあるから、仕事中の人は後で食べて!」
「あら!気が利くわね~エリザベス、ありがとう!じゃあみんなで後からお茶にしましょう。早速で悪いけど、ヴィクトリア達はエリス達について行って侍女の衣装を着てみてちょうだい。エリザベスは、私とデザインルームに来て!」
「わかったわ~じゃあみんな後でね~」
そこで、侍女達と別れ、私とエリザベスだけで、デザインルームに入っていく。
デザインルーム内は、議論に決着がついたのか、さっきと違いデザイン画を描く作業が進んでいた。
「レット!忙しい所ごめんなさいね~エリザベスが来たから出来上がった所まで見せてくれる?」
そう話しかけると、レットがやっと顔を上げ、2枚のデザインを差し出した。
1枚は女物のドレス、1枚は男物の宮廷服
それをのぞき込み、変な顔をしてエリザベスが質問する。
「なあにこれ?」
「あなたと私の最終兵器よ!」
「…まさか、ジョージの身代わりを私にさせる気?
イヤよ!!!絶対イヤ!!!!
私の恋人達に誤解されるじゃない!!!」
「まあまあ、エリザベス!ちょっとよく見てよ!!!!
実は、これは………でもって………だから………」
「…え?まあ♡それって………」
こうして、腹黒狩人たちの、旅の下準備は進んでいく…