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死にゆく人

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

治る見込みのない人の元への見舞いって、本当に辛いんですよ。

何も出来ないから。声も届かないから。

じゃあ、私がここに居る意味は何? って。

死にに往く人間を見たことがあるだろうか? 幾日にも渡りベッドで横になり、幾重にもチューブで繋がれて、糞尿の匂いに包まれた眠り姫を見たことがあるだろうか?

キッついよ? 何度呼掛けても反応なんか無くて、日に日に弱り果てる様を見せ続けられるのは、本当にキッついよ? 会いたくないと、叫びたくなる程。


「死にに行く人間と会うのって、凄いキツイんだよね。精神いかれるの。会う度に傷付くの。もう元気にならないんだなって思わされるだけだから」

友人に会った帰りに今日初っ端いわれた事を彼に話した。

一時本当に病みかけて、死にかけそうになった事がある。気丈に振舞ってはいたつもりだけど、どうやら周りには薄ら気付かれていたようで、会う度にこんな話になる。

――君、誰か近くにいないとすぐ死んじゃいそうなんだもん。

――あの時の君、マジ病んでてさぁ〜。ずっと愚痴吐いてて。

軽いジャブ。猫の戯れのような軽いパンチ。今は笑い話に成り果てて、流せるようになったけれど、今思い返して見ても、相当負担を掛けた事は想像に難くない。

「病みかけてた時の私、死に往く人間だったんだろうね。多分、私と同じくらい周りも皆傷付いてたと思う」

あの時は全く気づかなかったけれど。今になって思う。日に日に弱り果てて、生きる気力がない人間と相対するのは、本当に縁を切りたくなる程辛いのだと。身をもって知ったから。

「元気な姿、もう少し頑張って見せれば良かったな」

あの時の私に言ったところで、『もう限界だ』と帰ってくるだけだろうけれど。あれだけ『息して』、『動けて』、『話せる』ならば、生きる姿のひとつでも見せられただろうと思うのだ。

「私がベッドに縛られぬうちは、ちゃんと元気なふりをしないとね。心配かけちゃう」


大切な人が亡くなった

「見舞い行かなかった事、後悔してる?」

「……私が何度行っても、何も変わらないよ。声も届かない、ただ眠り続けるだけ。だから別に後悔はない」

漫画とかでよくあるじゃない? 好きな人が現れたら、瞼開いて元気になったって。そんなの、現実である訳ないから。それで元気になるのなら、会いに行くから。元気になんかならないから。会いに行っても、ただ此方が無様に泣いて、空気を悪くするだけだから。だから行きたくなかった。意味を……見いだせなかった。

「……その割に、墓参りには行くんだね」

「墓参りは泣かないからね」

これは懺悔なのだろうか? 死にゆく人から逃げた私の。


死にゆく人間を見たことあります?

相対するだけでキツイんですよ。

もう顔を合わせるのが苦しくなるくらいに。


あれだけ元気だったのに、昏睡状態だから声をかけても反応がないし、行く度に浮腫んでいるし。

ただ自分の無力さを突き付けられて、傷付くだけなんです。

だから『見舞いに行くの辛くて』という人を責められません。


そんな貴方に比べれば、あの時は病んでいたけれど、比べるまでもないくらい元気だったなと。

そのくせ死にに行っていたなと。


懺悔に近い話でした。

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