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噂の矛先は、私?

 


「おはよう、モナリー」

「あっ、る、ルエッタ…。お、おはよう…あはは」

「?」


 とある日の朝。明らかに様子のおかしいモナリーに私は首を傾げる。


「なに? どうしたの?」

「え!? なっ、なんでもっ?」


 上擦った声で、忙しなく目を泳がせた彼女は私と目が合うとサッと視線を逸らした。


「???」


 今までに見たことのないモナリーの態度に私は訳が分からず。


 でも、その態度の理由は数時間後に判明することとなる。



「あれよね、ユダ様の婚約者…」

「なんというか…花がないわね…」

「シッ! 聞こえちゃうじゃない」


 チラチラとこちらを見る視線。ヒソヒソと行われる会話。


 こうしたものにはユダ様の婚約者になった時から付いて回ってきたものだったので、もはや慣れたけれど今回はなんだか様子がおかしい。


「アリシア様への想いが報われないのは、あの子のせい?」

「未練がましく執着してるんでしょ。だってそれ以外取り柄なさそうだもの」


 …なぜ、アリシア様の名前が出てくるのだろうか?


「王太子殿下を介してお二人は仲良くなられたそうよ。それなのに、彼女がいるせいで踏み切れないって」

「自分が釣り合ってないことくらい鏡を見ればわかりそうなのに」

「お二人の並んでいる姿…絵になりすぎて私見惚れてしまったわ…」


 バッチリ聞こえてしまっているその内容に、明らかに今までのそれとは違うと感じた私は、急いで彼女の元へと理由を詰めに行った。



「何か知っているんでしょう? モナリー」

「…え、っとぉ〜…」


 私が理由を確かめに行ったのは、もちろん噂好きで情報通のモナリーの元。


 彼女は見たことのないほど目を瞬かせると、うんうんと唸る。


「ほ、ほんとに聞いちゃう…?」

「聞くわ。だって身に覚えのない噂ほど気味が悪いものなんてないもの!」


 モナリーは数分頭を抱えた後、大きなため息を吐いて私に向き合った。


「これはあくまでも噂だからね…?」

「うん」

「真実だとは限らないからね…?」

「うん」

「私は絶対ルエッタの味方だからね」

「もう分かったから、早く」


 モナリーは一度深呼吸をした後、私の目を真っ直ぐ見つめてこう言った。


「ユダ様とアリシア様は、両思いだって噂が」


 …。


「…どういうこと?」



 モナリーの話をまとめると。


 王太子殿下と仲が良くて婚約者候補なのではないかと噂が上がっていたアリシア様だが、最近ユダ様とよく一緒にいることが多いらしい。


 そしてとある生徒が2人が密会している現場を目撃してしまったらしく、そこから話が広がり、実はもうずっと前から2人は生徒の目を盗んで愛を育んでいたのではないか、と。


 その時の2人の様子はとても仲睦まじく、ユダ様がアリシア様に対して砕けたような話し方をされていたそうだ。


 まるで本物の恋人同士のようだったと。


 しかし私という婚約者の存在が2人の関係を邪魔しているせいで、2人は両思いであるのに恋人にもなれず、隠れて会うことしかできないのではないか、ということらしい。



「わ、私はこんな噂信じてないからね?!」

「…」


 私は、なんて言ったらいいのか分からない気持ちだった。

 別にこの目で見た訳ではないから信じてる訳ではない。けれど、火のないところに煙は立たないともいうし。


 所詮噂だ、と思う気持ちと、やっぱり私の存在が彼を苦しめているのではないか、という不安とで、もうぐちゃぐちゃだった。


「噂なんて真実が伴ってないことの方が大半なんだから、気にしない方がいいわ!」


 モナリーは私を元気づけようと一生懸命激励してくれる。


 でも、確かにモナリーの言うことは一理ある。

 やっぱり所詮噂は噂、だよね。


「そ…うよね…! 気にしないことにするわ…!」


 正直今すぐにでもユダ様に聞きに行きたい衝動に駆られたが、学園でユダ様に必要以上に話しかけないようにしている私のマイルールに背くのでグッと堪える。


 それに有る事無い事言われるのには、だいぶ慣れている。


 こんな噂一つ程度で心を折っている様ではユダ様の婚約者なんて務まるはずがない。


(気合いを入れるのよ、ルエッタ…!)


 私は今一度自身を奮い立たせるために、心の中で叱咤激励した。



 しかし、その叱咤激励も虚しく、翌日に現実を思い知ることになる。



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