表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/15

3-1

 


 皆様。「酵母」はご存じですか?

 お酒を含む、様々なモノを作るのに必要不可欠な「菌」です。


 正式に治すと「酵母菌(イースト)」。

 この酵母菌は糖類を利用しアルコールと炭酸ガスを生産。その結果お酒等、違う物質にと変貌させると言う仕組みです。

 コレをアルコール発酵。嫌気的発酵とも呼ばれています。


 嫌気的発酵と言うのは、先の納豆と違い「酸素」が無くても出来る発酵の事を示します。

 微生物が有機物……。餌となる物質、この場合は糖質かな?コレを代謝、エネルギーに変えて行う発酵――とでも言いましょうか。


 因みに酸素を利用して発酵させるのを産膜(さんまく)酵母と呼ぶそうですが、此方は今回は割愛させて頂きます


 この酵母菌はさまざまな発酵食品に使われていますね。種類も沢山あります。

 お酒では、ビール酵母、ワイン酵母に清酒酵母等。

 他を上げれば醤油酵母なる物も存在していて、造るものによって使う酵母を使い分けているそうです。



 此処は異世界ですから、今回は此処の世界にある簡単な物に着目しましょう。

 ずばり、簡単にワイン酵母。

 すぐに分かると思いますが、ワインを作るのに必要な酵母です。


 では、ここでワインについて説明を変えましょうか。


 ワインとはブドウから作るお酒に事です。

 今は、他の果物から作られていますが、やはりブドウが主流でしょう。


 と、いうのも。

 ブドウの皮には元から酵母菌が付着しており、コレが働きアルコール発酵を起こるのです。

 なので、昔だと一番簡単なお酒作り言えるのではないでしょうか。

 現代では更に此処に酵母菌を追加する事が多いそうです。


 酵母菌の活動が活発になるのは20度から30度。40度を超えると活動停止する納豆菌に比べれば弱い菌です。

 ですが日常的には簡単に生産できる菌とも言えましょう。

 市販のブドウや。イーストさえあればジュースでも作れるものです。皆様も作ってみてはどうでしょうか。

 イーストはパン作りに欠かせない、あの粉の事です。



 ただ、現代ではお酒作りにも免許が必須ですので。

 そちらはご自身でお調べください。



 ちなみに、此処で余談ですが。

 ワインの種類について簡単に話をしておきましょう。

 ワインには赤ワイン、白ワイン、ロゼワインが存在しますよね?

 どう違うかご存じでしょうか?



 ブドウの種類が違う。それも正解ですが。

 実は、作り方が若干違うのです。

 少し詳しく書けば白ワインとロゼワインが同じ作り方、赤ワインだけが違う作り方。


 簡単と言ったので簡単に言いましょう。


 白ワイン、ロゼワインは木の実を「ジュース」にしてから発酵した物です。

 そして、ブドウ(木の実)を発酵させた後。搾り、種や皮等の不純物を取り除いたもの、これを赤ワインと呼びます。


 残念ながら、このジュリアンナ。まだ未成年ですので、お酒は飲んだことが無いので、味の違いは明確に言えませんが。赤ワインの方が、ブドウの香りと味が強く出ていると聞いた事があります。


 こちらの「ワイン」

 難しくても作り方さえ知っていれば、結構簡単に作れる代物です。

 大昔から作られていた、太古の一品です。

 だからでしょうか、この異世界にもワインは当たり前の様に存在して、追放先の村にもワイン製造は行っていました。


 自分から作るのも手ですが、此処はまず。

 村では年に一度の収穫祭でワインを作るそうなので、私も今年の収穫祭には参加してみようと思っております。



 さて、ではワインに続いて別の発酵についてお話ししましょう。

 その発酵の名は「酢酸発酵」


 此方は酸素を利用して発酵する菌の事でして。

 アルコールと、糖質を利用して生産される酢酸の事を示します。

 ちなみにアルコール以外でも酢酸は発生するのですが、それらは酢酸発酵と言わないとか。

 あくまでアルコールが発行した物を「酢酸発酵」と呼ぶそうですよ


 ――え?酢酸とは何か?


 あー、面倒ですよね。細々と、何々菌とか言って。

 では、こちらも簡単に言い表しましょう。


 つまり「酢」の事です。


 そう、実は皆様良く知る「酢」はお酒から出来ているモノなのです。

 え?もう知ってる?


 では此方は知っていますか?

 こちらの「酢」。ワイン同様、地球では塩の次に古い調味料として知られているのですよ。紀元前からあったとか。


 ワインがあれば、造れるそうなのでこちらも造ってみると如何でしょう

 現在のワインでは酢酸予防の薬が混入しているので、市販のワインでは作りづらいそうですが。酢酸菌を用意出来れば、造れます。



 ―― と、まあ、そう言うことで私は。



「これ、本当に成功するのかしら」


 村で買い取ったワインを使って、今現在この酢作りに挑戦中である。



 ◇



 あれから一ヶ月。

 私は、部屋に置いてある数個の小瓶の前で首を傾げていた。


 目の前の、瓶の中には葡萄酒。つまりワインが入っている。

 瓶は簡単な物だ、と言うか、買った時の容器そのままを使用したり、お父様の飲んだワインの空き瓶を再利用している。

 ただ、密封されるコルクは捨てて。酸素を取り入れるために、代りにガーゼを口に被せて紐で縛り固定させているのだが。


「えー、半月経ったけど変化が見えない……酢の香りもしない」


 私の酢作りは困難を極めていた。

 いや、変化が無いので困惑しているだけなのだが。


 私は、まじまじとワイン瓶を見る。

 純度100%の本物のワインだ。余計なものは入っていない。

 だから、酢酸発酵は起るはず。


 何故なら酢酸菌は元から果物に付着している菌なのだ。

 加工していないワインになら、まだいるはず。


 どうして部屋の中に置いているかと言えば。

 酢酸発酵に必要な酢酸菌は20度から30度の温度で活動するから。

 そして、部屋は体感的に25度前後。


 それプラス、使用するお酒のアルコール濃度も重要だ。

 適したアルコール濃度は5から10%。それ以上だと酢酸菌は死滅。気温より重要なのは此方じゃないか?



 そして、問題を上げるのなら、この世界ではアルコール濃度の測り方とか存在して無かった。

 酔いが強いか、弱いかぐらい。

 ただ、生前の記憶ではワインのアルコール濃度の平均は12%。


 だから、幾つかに分けて水で薄めてみた。其々薄める為に使った水の量も違う。

 6本作ったけど。成功しそうなのは4つほどかな…?

 出来る事はやった。

 成功すれば、液体の表面に薄い膜が出来上がるらしいんだけど。その様子は見られない。


 しかし、酢酸発酵は時間が掛かると聞いてもいる。

 記憶が正しければ、長くて6か月とか。でも、簡単で早ければ1ヶ月とも書かれている。

 いったいどちらが正しいのか、初めて作る私には正直見当もつかないのだが。


 希望を上げるのなら、この瓶を作ったのは丁度半月前。15日前の事だ。まだ発酵始まったばかりだと信じるしかない。

 なんにせよ、気長に待つしかなさそうだ。


 そう、決めて。仕方が無く私は部屋の外に出た。

 なにせ今は朝。ほら、朝食の時間だ。



 ◇



 何時ものように、家族総出で朝食を取る。

 今日の朝食は目玉焼きとクロワッサン。それとサラダである。


 ―― 一ケ月前の私なら、食欲もなく食べる気も起きなかった食材たち。


「――今日も神の御恵みに心より感謝いたします」


 でも今は違う。

 神への御祈り、所謂「いただきます」を済ませて、私はクロワッサンを手に取り腹ペコのお腹の為に口に押し込むのである。


「ううん!おいしい――!」


 思わず笑みが零れる。

 外はぱりぱり、中はふわふわ、甘い香りのパンが口いっぱいに広がる。

 次は半熟の目玉焼き。口に入れれば、黄身がとろりと溶け出す。

 青臭くて食べれもしなかったサラダ。シャキシャキした感触と野菜の自然の苦さと甘さが絶妙。


 ああ、幸せと心から思う。

 ご飯をこんなに「おいしい」と感じる事が出来て、お腹がすいたら素直に食べられる日が来るなんて!



「うふふ、ジュリア。最近あなたは本当に美味しそうに食べるのね」


 私の食べっぷりを見てか、マリア・フランソウワーズ……お母様は、それは嬉しそうに笑った。

 当然だわ。今まで私は真面に食事1つ口に入れる事無くやせ細っていくばかりだったのだから。


「――そうだな。顔色も随分と良くなった」


 続いてお父様が言う。

 うん、当たり前だ。

 だって、あれほど悩まされていた貧血が、随分と良くなったのが自分自身で分かるのだもの。


 あんなに重たかった身体は嘘のように軽く、随時感じていた気怠さも無い。

 月の物も最近は軽くて、あの気力を失う痛みは和らぎ。

 顔色だって青白い顔から血の気が通った健康な物に変わったのだから。


 足りていなかった、鉄分を十分身体に取り入れ貯蓄することが出来たからだわ!


 足りなかった栄養(鉄分)を十分に蓄えたのなら、次は他の栄養を取るの。

 今まで真面に食べられなかった前世の私と「ジュリアンナ」の為にね。


 今度こそ、美味しい物を一杯食べてやるんだから!

 だから私は笑ってやる。



「――ええ!そうでしょう?体に合う食材を見つける事が出来たの!」



 そして、心から感謝しよう。私を此処まで回復させてくれた食材に。

 一か月間、ただひたすらに食べ続けた「納豆」に――。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ