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スザク

「神託の勇者って……それ、レイドたちのことでしょ? なんでユークに神託の勇者しか使えないスキルが発現するわけ?」

「わからない。けど、魔物を聖獣にするスキルは他にないはず」

「そりゃ確かにあたしも聞いたことないけど……」


 サリアとルルが難しい顔をする。


『きゅいきゅい』


 俺の足をひたすらすりすりしてくる鳥だけが楽しそうだ。

 ん? 

 さっきまで熱かったのに、この鳥、今はちょっとあったかい程度だ。

 聖獣とやらに変化した影響だろうか?


「ユークはやっぱり、ちょっとおかしい」

「そう言われてもなあ……神託の勇者って同じ時代には一人しか存在しないんだろ? レイドがいる以上、俺は普通の冒険者だよ」

「「それはない」」


 声を揃えて言わなくても。

 しかし俺が神託の勇者でないことは確かだ。


「たぶん、【聖獣化】ってスキルは神託の勇者じゃなくても発現することがあるんだろうな。それがたまたま俺だっただけで」

「むう」


 ルルはやや納得いかなさそうだ。


「ところでルル、聖獣ってテイマーが使役してるような魔獣とはどう違うの?」

「レベルがあって、主人と一緒に成長していく。あと、【自在召喚】のスキルで遠くにいても一瞬で主人のもとに転移できる」


 おお。

 レベルはともかく、転移能力があるのか。やるじゃないか。


「で、ユークはその鳥どうするの?」

「んー……まあ、連れて帰ろうかな。俺たちがいない間、ファラは暇してるだろうし、遊び相手になってもらおう」

『きゅい』


 任せろ、とばかりに鳥――ではなくスザクが頷く。


「まああんたがそれでいいならいいけど」

「んー……私もいい、と思う?」


 ルルはまだなにか悩んでいるようだが、特に反対はしなかった。

 ちなみになにを食べるかルルに聞くと聖獣は食事を必要としないらしい。

 家計に優しい鳥だ。





「かわいいです~~!」


 ファラがスザクを見て目をきらきらさせる。

 どうやらファラはスザクを気に入ってくれたようである。

 一方予想外だったのがスザクのリアクションだ。


『……? …………ッッ!?』

「おい、なんだその「マジかこいつ……!?」みたいな反応は」


 スザクはファラを見るなり、怯えと呆れが半々になったような視線を俺に向けてきた。

 どういう意味合いなんだよそれは。

 うちの可愛い妹になにか文句でもあるのか?

 焼き鳥にするぞ。


『きゅいきゅい、きゅいっ!』


 翼をばたつかせ、「おかしいって! これ絶対おかしいって!」とでも言いたそうなスザク。

 やれやれ。


 ポンッ ギシギシギシッ……


『きゅ、きゅいいいい』

「スザク。ファラは俺の可愛い妹なんだ。仲良くしてくれるよな?」

『……きゅい』


 優しく頭部を撫でながら俺がそう言うと、スザクはがたがた震えたあと、やがてゆっくり頷いた。

 それからファラのもとに行き鳴いて挨拶する。


「よろしくお願いしますね、スザクちゃん」

『きゅいぃ……』


 ファラに抱きしめられながらスザクは諦めたように鳴くのだった。


 それにしても意外だ。ファラは動物に好かれるタイプだと思っていたが。

 ……あ、もしかして呪いの影響かもしれない。

 レッドバードは感覚が鋭いと聞いたことがある。


 まあ、それでもしばらく一緒にいれば慣れるだろう。

 呪いがあるとはいえ、ファラ自身は穏やかな性格なわけだし。


 これでファラの寂しさや不安が少しでも和らげばいいと思う。





 僕の名前はレイド・アークレイ。

 神託の勇者に認定された、素晴らしい人間だ。

 そのはずなのに――なんでこんな目に遭っている!?


 バキッ!


「どうした勇者殿! そんなことでは魔王など倒せませんぞ!」

「ひぎぃいいい!」


 もう嫌だ!

 なんで僕がこんな汗臭い男と戦いの訓練なんかしなくちゃいけないんだ!


 現在僕たち勇者パーティは王都の騎士団詰め所にいる。

 すべての原因は聖都で起こった邪教『紫紺の夜明け』によるテロ事件。

 あれに対処できなかったことで、僕たちは戦闘技術が未熟と判断された。

 だから訓練のために騎士たちをあてがわれた。


 僕の相手は騎士団長。

 でかい体はムキムキに鍛えられ、近くにいるだけで暑苦しい。


 魔術士キャシーや聖女セシリアは宮廷魔術師たちのもとで訓練をさせられている。

 戦士ウォルドは近くで倒れている。


 僕たちは今、スキル封じの魔道具をつけられている。

 これがあるせいでスキルやジョブの補正を受けられない。


「まだまだ! 次は素振り千本です!」

「はっ、はひっ、ふひぃぃ」


 ふざけるな、この体力馬鹿が!

 僕たちはすごいスキルをいくつも持っているんだ。

 なのにどうしてそれを封印して、肉体なんて鍛えなきゃいけない!


「集中!」


 バシン!


 ビンタされた。

 こんな汗臭い男に僕が殴られた……!? 神託の勇者である僕が!?

 あまりのショックに頭が真っ白になる。


「おええええええ」


 体力の限界だったこともあり、僕はその場で思いっきり吐いた。





 その日の夜、僕は復讐を決意した。

 なにが戦闘訓練だ。

 馬鹿馬鹿しい。

 そんなことでこの僕に恥をかかせやがって。

 あの騎士団長とかいう男、目にもの見せてやる。

 宿舎をコソコソと移動して騎士団長の寝ている部屋に入る。

 鍵は昼間のうちに盗んでおいたのだ。

 騎士団長はベッドでいびきをかいている。

 僕は剣を振り下ろした。

 死ね!


 パシッ


「……な、なななな」

「ふむ。気配の消し方がなっておりませんな」


 それまで確かに寝ていた騎士団長がいきなり目を覚まし、僕の振り下ろした剣を白刃取りで止めてきたのだ。


 そんな馬鹿な!

 こいつは化け物か!?


「我々騎士たちは魔物の住む森で野営することなど日常茶飯事! このくらいでは私の首は落とせませんぞ!」

「け、剣を離せ!」

「残念ながらここでは私があなたの世話役です。さて、やんちゃの罰として今さら夜通し私との訓練を命じます! 熱い夜を過ごしましょうぞ!」


 がしっ、と肩を組まれた。

 汗臭い!

 あまりの暑苦しさに気分が悪くなってくる。


「さあ、まずは素振り三千本からいきましょうか!」

「嫌だぁあああああああああ!」


 誰かここから僕を解放してくれ。

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