藤崎くんはやっぱり可愛い
藤崎くん視点からはじまります。
図書館で先輩が俺を見つけた時
嫌悪感が見えなくて心底ホッとした。
ポカンとした表情の後、頬が赤く染まっていくのが可愛いかった。
しかし、中庭に連れ出してから明らかに動揺し始めた先輩の様子に、微かに見えた希望も萎んでいく。
傍目に見ても可哀想になるくらい眉を下げて落ち着きのない様子で、今にも逃げ出したいと言う風に見える。
「…あの、無理しないでください」
必死で言葉を選ぼうとしている先輩に思わずそう言っていた。
「この間は強引に…その、してしまって、すみません」
本当は謝るつもりはなかった。
自分の気持ちを否定するみたいで嫌だった
でも、先輩を困らせるのはもっと違うと思う。
「困らせたいわけでは…」
「まっ、待って……」
「?」
先輩が思わずといった様子で俺の制服の端を掴んだ。
「違う――…」
「先輩?」
「……だから」
俯く先輩の表情が見えないけど何かを伝えようとしてくれているのはわかるので
少し屈んで覗き込むように先輩を見ると、急にのけぞるように背を逸らし後ろに下がって叫ぶような声を出した。
「っ好きだから!!
ちょっと待って……………くださぃ……」
制服を掴んでいる手も声も震えてて、最後は微かにしか聞こえなかったけど
確かに先輩から好きだという言葉が聞こえた。
顔を真っ赤にさせた先輩はそのまま頭を抱えてしゃがみ込むと「む、無理……心臓爆発する……」といったようなことをぶつぶつ呟いている。
先輩のそんな様子に、やっと伝えてもらった言葉の意味を理解した。
めちゃくちゃ嬉しくて自分もしゃがみ込み
先輩に「嬉しすぎて心臓止まりそう…」と呟く。
困ったようにそう言って笑う駿の表情を見た莉乃は、胸がきゅうっと締め付けられて心臓を押さえる。
(可愛すぎてつらい……)
でも、自分だけがこんな気持ちになるんじゃないと感じられて少しホッとした。
駿は莉乃を立たせながら驚かせないように距離を詰める。
まだ挙動不審な彼女は、少し驚かせたらものすごい勢いで逃げ出してしまいそうな雰囲気がある。
驚かさないように慎重に言葉を選ぶ。
「一緒に、帰ってもいいですか?」
「う、うん」
「手、握っても?」
「……うん」
「キスは?」
「ぅ…キ?!!」
クスッと笑って「冗談です」と言うと、先輩は揶揄われたと思ったのかムッとした表情をした。
「今日は、待てます」
(あ、待ってくれっていったから……)
″今日は″と言うところにあまり猶予が感じられないけど
莉乃は自分の言ったことをちゃんと聞いてくれていたことが嬉しくて、くすぐったいような気持ちになった。
「ありがと」
そう言って優しく握られた手をぎゅっと握り返した。
これにて一旦完結となります!
また番外編を書くかもしれません。
見ていただきありがとうございました♪