先輩は心臓がもちません
莉乃視点です。
後輩くんにキスをされました。
告白もされました。
名前も、初めて呼ばれたんだけど……
んなぁああああああああああああああああああああああああああああああーーーー!!!!
めちゃくちゃ恥ずかしい
めちゃくちゃ恥ずかしい
莉乃は自分の部屋のベットで枕に当たり散らしながら恥ずかしさを一生懸命に誤魔化そうとしているが一向に収まらない。
あのあと自分がどうやって帰って来たのかまで記憶がないんだけど……
恥ずかしすぎて記憶喪失になるってなに、怖い……
ずっと、触れないように
一線を引くように接してくれていたから
勘違いしないように気をつけていたのに
「勘違いして良かったなんて聞いてないっ!!」
今までどんなに心臓がうるさくても可愛い後輩だからーー
で、済ませてきたのに、これからどんな顔をして会えばいいんだ……
多分、私は彼のことが好きなんだと思う
でも世の中の人は皆こんな気持ちで好きな人と一緒にいるの?
心臓、強すぎないか……???
尊死とかキュン死する人の気持ちがよくわかる。
下手をすれば命に関わるぞ……
ちょっとした笑顔で死にそうになるんだけど、心臓さん大丈夫?
普通に顔を合わせて会話できる気がしないんだけど、眼球もつかな?
目つぶれない?
頭の中だって混乱して爆発しそうだ。
こんなことを考えていて1日潰してしまった。
自由登校だからいいんだけど、これじゃあまるで避けてるみたいだよ……
罪悪感がものすごい……
駿くんがくれた連絡に返事もできていない
せめて明日、告白の返事だけでもしなきゃ
あとは事情を話してそっとしておいてもらおう……
✳︎✳︎✳︎
せめて返事だけでもしようと、タイミングを見計らうつもりで図書室で参考書を読んでいたらあっという間に放課後になってしまった……
私の意気地無し……
お陰で本の中身はきっちり読み込めました。
はぁ……
顔を両手で覆い自分の不甲斐なさを嘆けど時間は戻ってはくれない。
これは、もう本当に申し訳ないけどメールで……
いや、手紙の方がまだマシかな……
そんなことをぐるぐる考えながら立ち上がろうと前を向くと、目の前の向かい側の席に駿が座って勉強している。
彼は立ち上がった莉乃に気がついたようで動かしていたペンを止め、顔を上げるとふわりと笑った。
あ、かわいい
(…って、違ぁう!!!!)
すぐに現実逃避しはじめる頭を振っていると、早々に荷物をまとめて席を立った駿が莉乃の横に立ち内緒話をするように背を軽く曲げて囁いた。
「先輩、時間いいですか?」
図書室では迷惑になるため、中庭に場所を移して話をすることにした。
「いつからいたの?全然気が付かなかったよ」
「30分前くらい前です。学年末テスト前で部活が休みになったので」
「そうなんだー、私も話したかったから、ちょうどよかったぁ……」
(逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……)
無難な話をしながらも、私の心臓は悲鳴を上げ続けているし、逃げ出しそうになるのを必死で耐えている。
こんな状態で話なんてできるんだろうか……
暑くもないのに脂汗がダラダラ出てきている気がする。手先が冷たい。
「あの、無理しないでください」
「…え?」
「この間は強引に…その、してしまって、すみません」
駿くんは瞳を伏せて申し訳なさそうに言葉を紡いだ。
見ていただきありがとうございます!次で完結できるかな