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第8話〔変態、等級変化における魔物の選択〕②

安心してください、ちゃんと書いてますよ!








 姫様から預かったと告げるロゼから受け取った道具袋には幾つかの品が入っていた。


 主に野営や野宿を想定した道具一式、に加えて冒険者を生業にしていた自分でもその価値が分かる程の超貴重な品が三つも。


 その一つが目の前に舞い降りた――魔法の伝書鳩。


 内容としては何時でも手紙を送ることができるという単純な物だが。


 これ一つで、貴族の住む様な豪邸が買える程の価値がある。


 何せ送り人以外には文面が見えない高度な防護魔法が施された究極の書状。


 通常は国家間での遣り取りなどに使われるレベルの超絶貴重な最大等級に近い逸品。


 それを一方的に送ってくるだけでなく、こちらからも送り返せる様に――しかも魔物相手に贈るなんて……。


 姫様、貴女は本当に腕白わんぱくな人だよ。


 ……また怒られてなければいいけど。


 そんな訳で自分達は定期的に鳩を使い文通等をしていたのだが、最近になって急に連絡が途絶え、心配をしていたところ。で。


 一見して荷物等は何もない。


 ――やや悲しい。が。


 久しぶりの通知は素直に嬉しい。


 一体どの様な事が書かれているのか。


 前回の手紙には毎度将来に向けて始めた特訓の成果と最近城の皆が忙しそうにしているなどの日常事が書かれていた。


 送り先である相手が触れた事でエーテルで形作られていた鳩が宙に浮く文章と成る。


 今回は――。



〝た す けて〟



 ――その連なった文は短くとも、最大限に感情を表現したものとなっていた。






 助けて……?


 どういう意味コトだ。


 いや言葉としては思い付くが、一体なにから……?


 冗談、にしては文面からは本心を感じ取れる。


 そうかと言って具体性には欠け、悪戯と判断するには常軌を逸する。


「ぅが……」


 うむむむ。


 イヤ、悩んだところで仕方ない。


 元冒険者としての勘が告げている。


 ――こういう時は情報を得る事が大切。


 よし、さっき敗走したばかりだが、情報を仕入れるには人の居る所に行くしかない。


 一応腹は満たされたし今回はコソ泥まがいの調達は一切無しだ。


 いざッ。――変態開始。






 二大神が創造せし、その加護を受ける世界。


 だがその対象は人間だけであり、その他種族は加護の対象外である。


 故に魔物は勿論の事、野獣や家畜と言った動物には神の御加護がないのだ。


 ――なので現状容易には近付きたくない。


 下手に近寄り害悪と認識されれば空間が形成され強制転移をさせられてしまう。


 人目を避け、最寄りの茂みに降り立ったのち――変態。


 主として成るゴブリンに変わって直ぐ傍の木をよじ登る。


「……ハァハァ」


 何処にでもある普通の木だが体格差は体力に直撃ダイレクトする。


 そして登り切り休憩を挟むことなく道具袋から望遠鏡を取り出し覗く。


 さてさて――ぉ、居た居た。


 狙いは井戸端会議。


 要はオバ様連中の世間話だ。


 彼女達は巷で話題になっている事なら飽きを知らずに毎日同じ事で会話の花を咲かせる。


 とはいえ、こちらの求める情報があるのかは定かではないが、多少なりとも世情を知るには有効だろう。


 丁度死角となる家屋なども点在していて時間帯も都合の良い。


 それでは早速聞き取りを開始だ。


 スルスルっと降りる時は早いのよォー。






 そうして人目を避けながらの情報収集は呆気なく達成した。


 一応念の為と村全体を回ってはみたが得る内容は、ほぼ変わらず。


 次いでに食べ物もと思うほどの余裕はあったものの、さすがに度重なる泥棒鳥の襲撃を警戒した様子に断念。


 現状、食い繋ぐコトは出来ていたので、早々に去る事とした。


 ――さて、ここまで来れば問題はないだろう。


 村から最も近い樹林の中、後ろを気にして木を背に腰を下ろす。


 で、休息などそっち退けで先ずは感想。


 どうやらかなりマズい事になっている様だ。


 おそらくは小さな村の噂話、正確さとしても大した情報量ではないかもしれないが。


 知り得た目的と思しき情報を纏めると――。


 戦争が始まるとの事。


 ――マジでヤバい。


 何がヤバいって、自分には確信もあるからだ。


 もしさっき聞いた話が本当なら、あの手紙――事は既に始まってしまった。


 というコトかもしれない。


 勿論断言はできない。


 しかしここ最近の音信不通、と久しぶりに来た手紙の内容。


 何より自分にまで救援を出すという事が最も悪い。


 ……いや。


 逆に言えば、それ程までに切迫した状況と捉えるべきなんだ。


 だとすれば自分は……?


 と考えるのもバカげている。


 今の自分は魔物、しかも最低等級の雑魚中の雑魚。


 行ったところで何も出来やしない。


 ましてや救助等、力量を弁えろと言う他はない。


 がさごそと。


 ――辿り着いた時は安定した暮らしを保障されたと呑気に思った程だが。


 一応これも。


 ――蓋を開けてみれば木の皮をしゃぶる度合いの過酷な条件。


 これは絶対に忘れてはならない。


 ――それでも一月、ほんの数十日ではあるが一時の安息を得れる場所だった。


 最終確認、忘れ物はなし。と。


 ――ありがとうな。


 まあどの道もう帰って来る事はないだろうが。


 ――簡易的ではあるものの、愛しの我が家に。


 さようならだ。――変態開始。




  ※




 姫様からと受け取った物の内、最も貴重な品は三つ。


 内一つは魔法の伝書鳩で孤独を紛らわすにも大いに役立った。


 残りの二つは正直、身に余る。


 とは言えその価値以前に物としては冒険者ならば先ず知っていて当然の道具で利用用途も当初思い描いていた生活を大幅に変更する程の利便性。


 何より冒険する気があるのなら正しく知っていて損はない。


 ――その道具と言うのが。


 能力値開示書――通称ブック。


 しかも抄本でも謄本でもなく、原本。


 こんなの普通は冒険者ギルドくらいでしかお目に掛からない。


 正直お姫様は一体自分にどれだけの事を望まれているのか。


 大げさではなく、これ一冊があれば好きな場所でギルドを立ち上げることだって出来るのに、まあ魔物なので不可能なのだが。


 とはいえ冒険者として名を馳せるにしろ何にしろ、自身の力を知る為には必須の道具。


 それは生き残る上でも、イヤ何にも増して大切な――情報。


 自分を知る、即ち身の程をわきまえる。


 うん実に大切な事象ステータスだ。


 そんな自分の、直近に確認した時の内容は――。



[ブリ]

 HP:12

 MP:0

 SP:0

 Lv:2


 固有技能:変態Lv1



 ――主としたモノだけを抜粋してはいるが、そう。


 ワタシはヘンタイだったのだ。


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