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第33話〔対決、最弱vs.最弱な選択〕③

 さて、話はこれまでにない程の広がりと進展を得て――迷宮内。


「ギャー! ゴブリンさん魔物が来ましたー!」


 煩いし分かってる。


 分かれ道のない洞窟で、正面から来る敵を見落とす理由などない。


 既に握っていた短剣を目線のやや下で構える。が。


 背後からの風切り音と同時に襲い掛かってきた魔物の一体が矢を眉間に射立ち走り来る勢いのままに倒れる。


 次いで気を取られた、仲間の死に様を見る一瞬の隙に――。


 悪いね同士。と。


 ――容赦なく全弾急所を目掛けての、武器による乱突き。


「ゲーッ!」


 計三度目の戦闘が終了。


 で領域外での特技は判定が確立では無くなる分、実用性が異なる事が分かった。


 こんな身体に成ってそれなりに経ったがまだ試すコトが残っているみたいだ。


 外と内、特技一つとっても向き不向きはある。


「おい、いつまで隠れてる……」


 戦闘の開始前に一目散、声を上げて敵と味方の位置を両陣営に通達した後は直ぐにエルフの陰へと身を潜めた自称魔物使いの治療士様が恥ずかしげもなく顔を出す。


「――終わりましたか?」


「……終わりましたかじゃねぇよ、普通に手伝え」


「回復ならいくらでもしますよ?」


「ケガどころか傷一つねぇよ」


「……腰痛とかは?」


 年寄りか。と思いつつ、自分は腰をトントンと。


「大体魔物を使うどころか勝手にヤってくれてんじゃねぇかよ」


 そら使われてませんからね。


「ゴブリンさんですからね」


 イヤ答えになってないし。


「……そんなんでよく迷宮に行こうなんて思ったな」


「言ったのはゴブリンさんなので」


 待て、なに人のと言うか魔物の所為に。


「行き先まで決められてんじゃねぇか……主従関係もクソもねぇな」


 如何にも。


「まあその、友達みたいなものですから……」


「魔物がか?」


 自分で言うのも何だが、友達は選んだ方が良いぞ。


「たく、門番なんて立場がなければアンタみたいなオカしな連中は無視すべきだったな」


 まあ門衛としても此処まで来る奴は早々居ないと思うが。


「そんなぁ、リエンさんが居ないと心細いですよぉ……」


 戦力的にも無謀だしな。


「……べつに戻るとは言ってないだろ」


 途端に全身で喜びを表現する人任せな治療士マリア


「おいッくっ付くな!」


「イイじゃないですか射るモノも居ないですし」


 そういう問題か? ――ま、無事に目的を達成できればそれで構わないが。


「あーッ鬱陶しい!」




  …




 新米冒険者にも見捨てられた楽なダンジョン、なのだが。


 進行度は冗談かの様に遅い。


 原因はたった一つ、イヤ一人。


「そろそろ休憩にしませんか?」


 またか、基本的な洞窟型の一本道だぞ。


「アンタ……」


 さすがに呆れ過ぎたのか声に含みすらない。


 当然だな、戦闘だけでなく小競り合いが終わる度に聞いてたらウンザリとする。


「いいか、このペースだと日が暮れるぞ? 本来こんな迷宮は一日どころか数時間で攻略が出来る位の規模と難度なんだ、ちまちま休憩なんかせずにさっさと終わらせて出た方が楽だろ?」


「それは……リエンさん達が強いから言えるコトで」


「強い? そうは思えないけどな」


 無論ダレの話とも言うまい。


 なにせ折り紙付きの最弱ですから。


「……とにかく、アンタも少しは頑張れよ。最悪前に出てもエンカウントがあるだろ」


 ああそれは。


「――……無いので」


「ぁん? 何だって?」


 イヤその前に――。


「私、加護が無いので……」


「はぁ? なんだそれ」


 話の途中で悪いが。


『キタゾ』


 ――新たな雑魚ゴブリンの登場だ。






 これまでと違い、戦闘は実に快調だ。


 マリアの回復力に物を言わす強引な遣り方ではなく、援護ありの正当な戦い。


 しかし圧倒的に不足している。


 主力となる戦力の要、そう自分オレがだ。


「マジで言ってんのか……?」


 やや声高に、先頭を歩く自分の後ろから会話が漏れ出す。


「本当です」


「証拠は?」


「……ゴブリンさんです」


 ん? ああ。


「魔物とご一緒できるってコトか……まぁ」


 取り決めではないが手っ取り早い解釈だ。


「そのゴブ、魔物が特別って訳じゃねぇのか……? 正直未だに信じてねぇぞオレは、魔物使いだなんてな」


「ゴブリンさんはお友達です」


 承諾した覚えはないがな。


「友だちって……魔物は魔物だろ」


「なら、私の話は本当ってコトで信じてもらえますよね」


 時々だが。


「意外に抜け目ないな、アンタ」


「アンタじゃなく、そろそろちゃんとマリアって言ってくださいよリエンさん」


「……――本当なのかよ、加護が無いなんて」


「嘘は言ってません。――ほら、この通りです」


 前を行く自分にわざわざ近付いてまで頭をペシペシするな。


「……よくこれまで生きてたな」


「この前死んじゃいましたけどね」


 明るく言うことか?


 まあ、洞窟内が暗いので丁度いいか。などと思いつつランタンをもとに警戒を続ける。


「その話もさ、本当か? オレが田舎者のハーフエルフだと思って馬鹿にしてんじゃねぇのか」


「してませんよ。第一馬鹿さ加減では私の方が絶対に上です」


 自分で言うかね。


 とはいえ人を騙せるようなタイプではない明白。


「……――馬鹿で正直だと反って皮肉だな」


 なるほど、確かに。そして足を止めるは到着。


 予想以上に早かったな。


「ゴブリンさん? どうしたのですか」


「どうもこうもねぇよ、着いたんだよ」


 そう目指していた場所に、ただ目的は更にその奥だ。


「ぇ、もう……?」


「だから言っただろ、ここはれた迷宮だって」


 分かってはいたが流石にここまで浅いとは驚きだ。


「じゃぁ……」


 恐る恐る確認する治療士様。


「お目当てのブツは深宝の在る最深部だ、当然この先には迷宮の主が居るっておいっ、後ろに隠れんな!」


「いっ嫌です! まだ心の残りがッ今朝の食べ残しが!」


「はぁッ? ここまで来てナニ言ってんだっ、いい加減観念しろよ! 大体たいした相手は出ねぇよっ、精々コボルトで数体、それか弱めのオークが一体、それで関の山だ!」


 うわマジか、主でその程度か。――今の状態ゴブリンだと十分に強敵ではあるが。


「油断大敵って言葉を知らないのですかッ? 私はそれを戒めに生きています!」


「ああもう面倒メンドウクセぇ! おらっ行くぞ!」


 文字通り首根っこを掴む形で襟首ごとの連行が執行される。


「わあ! はっ放してくださいッうわわ!」


「アンタ結構力強いんだな……」


 と言うわりに難なく深部へと続く扉にマリアを引きる多少身長差の有るエルフ。


「わーっ放して! ダ、誰か――」


 必死に助けを求めるマリアと目が合う。


 魔物オレとです。


「――ま、まさか私を裏切ったのですかッ? ゴブリンさんともあろう魔物が!」


 だとしたら何が悪いと言うのか。


「お願いしますっ助けて! も、もし助けてくれたら寝てる時にこっそり乳を揉んでる事は金輪際ダレにも言いませんからー!」


 よし、いっそのコト口封じに遣ってしまおうか。


「ひィー!」








皆さまのおかげで、マイペースに投稿させてもらっています。


自分で言うのもなんですが、自身の傾向として進行のテンポが遅かったり悪かったりしますが、そこは悪い癖だと思って御愛敬でよしなに宜しくお願いいたします。m(_ _)m

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