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第27話〔死闘、最低な選択と最悪な結末〕③

 ――念の為に若干場所を変えて、種族もゴブリンへと戻す。


「やっぱりゴブリンさんっ」


 ああもう本当に止めて。


 静かに、と指を立て状況に頓着せず付いて来たバカな娘をしたためる。


 それで漸く立場を理解してくれた様子で。


「……ゴブリンさんも、蘇ったのですか……?」


 んな莫迦ばかな、この世にそんな秘術はある訳ない――と言いたいところだ。が。


 言葉は出ない。


 元より無いのだが、そういう事情ではなく、正直に分からない。


 今この瞬間この場所に居る事すらも現時点では理解すら出来ていないのだ。


 故に蘇る術、蘇生の肯否は不確かなものとなった。


 しかしだ。生き返った事を何かと言う前に、先ず以て確かめなければならないコトがあるだろうと道具袋に手を掛けるや否や――あっとマリアが声を出す。


「待ってください、凄くイイ物があるのですよ」


 ん? 何。


 自身の袋をガサゴソ漁る、ものの数秒後にようやっと取り出したのは――ネックレス。


 ……ペンダント?


 しかし装飾品にしては飾り気が無いと言うか、実に単純な作りだ。


「先生がくれました、着けてみてください」


 ェ。イヤ、何で……。


 無論着けるだけなら構わないが、何故それを今にという疑問と不審。


 しかも見るからに変哲もない――石? が付いている。


「ぁスミマセン、見た目はこんなのですけど機能は果たすとの事なので」


 きのう……? 何の。


 明らかな疑いを示し、手に取るのを躊躇する。


「安心してください、変な物ではないので」


 だったら先んじて説明をしてくれ。そんな感じで、物を差し出している相手を見詰める。


「えっと、これは音声読み上げ石です。型は古いですが、ゴブリンさんの話をしたら先生から頂きました。なので着けてください、きっと便利ですよぉ」


 音声読み上げ石……? あぁ、なんかそんな風な物の話を聞いた事あるな。


 で、それを――。


「これがあればゴブリンさんと会話がしやすくなると、思いませんか?」


 ――なるほど。


 そういうコトか、なるほどね。大凡理解した。


 ただ実際にやってみないと分からない未知モノなので、そういうコトならば。


「ぁゴブリンさん手が短いので私が着けてあげますね」


 ――やかましいわ、アリガトウ。






 さてと、何はともあれ早速。


 いつも通りに魔法の鳩へ――伝言を託す。


 そして今回の受取人は――差出人。


 手紙を出す本人へと、その文面を送るのだ。


 すると如何なるか――。


『コンニチハ』


 ――やや違和感、だが思惑通り。


「ギャァ!」


 何っ?


 突如として声を上げるマリアを見る、が特に変わった様子は無い。


「ぁ、スミマセン……突然ゴブリンさんが喋ったので……驚いて」


 此奴……。


「――うが」


「ひッ」


 マジ、いい加減にしろよ。






 鳩で手紙を送る、その受け取り側を差出人――つまり自分自身にする。


 その文面、本来であれば受け取った側に出現する内容を音声での読み上げ――道具を介して外部へと伝える。


 結果ペンダントのトップから発生させたその内容が現状の会話へと流用され。


『コレクライカ?』


「ぁ、いい感じですね」


 生の声では無いのでやや片言気味且つ本来より下方からで違和感は残る、が飛躍して会話が楽になった。――……しかし。


「ですが、ゴブリンさんっぽくない声色ですね? そういうモノなのでしょうか」


 そもそも“らしい”判断の基準が分からん。


 しかし何処かで聞いた覚えのある、様な……声。


「おかしいですね、確か旧型は受け取った相手の声質で読み上げを行うはずなので事前登録はされていないと思うのですが」


 ああ、そういうコトか。


「ゴブリンさんはもっとこう、高い……ですもんね?」


 道理で聞き覚えのある筈だ。


「なんかこう低く、歳食ったおっさん……? みたいな声で、小柄なゴブリンさんには似合わない感じです」


 まんま俺の声じゃん、人だった時の。後おっさんはウルセ。




  …




 さて感動と呼べるかはどうでもいいとして、漸く――。


『――ドウナッタ?』


「どう……? ああ、トロールに潰され殺された後の話ですね」


 マジで普段は全くだが偶にムチャクチャ察しの良い時があるな。


 あとそんな死に方したのか、オマエは。


 ちょっと――気にはなったが聞くのを止めておく。


「それがですね、気付いたらこんな感じだったんです」


 こんな、と言うのを手を広げ街全体を示す様にマリアが告げる。


 なるほど。――概ね自分と同じ感じね。


 要するによく分かっていない状態、と言う。


「時間が戻ってしまったのでしょうか? だとすればとんでもない魔法ですよ、これは」


 フム。――それは、まあ……。


「ただ他の人達に話を聞いて回りましたが覚えているのは自分と、ゴブリンさん。皆さん何も分かっていない様子でした」


 それは寧ろ逆で、コイツ何言ってんだ。と思われたのは、おそらくマリアの方だろう。


「そんな訳で頼りの綱と先生に話してはみたものの忙しいのを理由にまともには取り合って貰えませんでした……トホホ」


 なるほど、でさっき見た所って流れか。


「先生なら本気になってさえくれれば何とかなると思うのですが、何分なにぶん多用が尽きない身との事で、自己解決を命じられる始末ですよ……。ただゴブリンさんの話をしたら、また会うだろうよとその首飾りをくれたのです」


 だろうって、別にそんなつもりで来た訳ではなかったが。


 まあ――結果として便利にはなったと思う。


「それで、どうしますか?」


 如何? とは何を。


 思わず小柄な割に大きめな頭で傾げる。


「モチロンなんとかしますよね?」


 ……だから何を? いや、ひょっとして。


「――私達の知る結末を回避しましょうよ」


 ァ、やっぱり。


『ドウヤッテ?』


「分かりませんッですがその為に、ゴブリンさんは来たのですよねっ?」


 いいえ違います。


 まあ、明確には――回避などとは考えてもおらず。


『ソレハムリダ』


「ぇ……それなら、何故……?」


 ――何故。改めて誰かにそう聞かれると、いやイヤ。


 理由なんて一つしかないだろう。


『ヒメヲタスケル』


「ひめ……? ぁ、アンジェ様の事ですね」


 頷きで返す。


「なら、結果的に皆さんを助ける流れにはなりますよね……?」


 まあ関わりがないとは言い切れない。


 ただあくまでも目的とする対象は個であり、絶対条件として他を含む訳ではない。


 故に返答には困る。


「……姫様をお救いになりたいと言うのであれば、結果として魔物の襲撃を避ける必要があると思うのですよ。となればアンジェ様にお会いして、直接事情を説明し協力してもらうのが最善ではないでしょうか」


 それは、そうだ。


 魔物の大群を相手にするよりも逃がす対象を事前に動かす方が言うまでも無く容易い。


 ただ何と言おうか……――。


『――タノシソウダナ?』


 笑っている訳ではないが、何処か活き活きとした感じを見受ける。


「ぇ、そうでしょうか? ぁーもしかすると一度死んだ事で吹っ切れているのかも?」


 フム。なら試しに――。


「ほら私って怖がりですが、それはきっと幼少からの、ぉ? ゴブリンさん……? ぇ、それは――ぃ、ヒィ! や止め、ヒィイまだ死にたくありませんっ!」


 ――フッ。


 ま、この位にしておくか。


 ちなみに何をしたかは当面内密で。








あぁ~今年もォ夏が来たァ♪ 猛烈に暑すぎるわ!

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