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第26話〔死闘、最低な選択と最悪な結末〕②

 



 …※




 ハ……?


 気が付くと何故か戻っていた。


 動揺は隠せない。


 そして、腹が鳴る。


 冷静とまではいかないものの現状を整理するゴブリンな俺。


 イヤ、間違いなく、死んだ。


 マリアを助けようとし呆気なく。


 ただ――……恐らく、あの状況では共に逝っただろう。


 だが問題は其処ではない。


 何故――、生きている……のか、というコトだ。


 あの状況刹那の痛み一瞬の暗転からの、意識再会。


 判断ができない部分はいくつかあるものの死を回避できたとは到底思わない。


 だとすれば奇跡的に助かった……?


 ならば、……此処は?


「キャーーッ!」


 ――ホわっ?


 何事と周囲を見渡す。


 すると二度目の悲鳴と思しき声がして。


 イヤ待て、これは。


「キャァーーー!」


 どうも考えている間は――恐らく無い。




  …




 ――驚き発起賞賛の意、再び。


 よもや二度目となる。


「ありがとうございますっ、ありがとうございます!」


 寄り掛かってくるお姫様の現に懐かしい温もりと匂い。


 最早疑う余地の無い――。


「ところで貴方は、……魔物さん?」


 ――現実。


 初めて出会った時間に、俺は戻っている。




  ▽




 人生にやり直しは無い。


 例え同じ事を繰り返すとしても、それは以降の試みであり最初とは違う。


 ――選択とは残酷だ。


 どちらかが正解という訳でもなく選ばなかった一方を知る由も無い。


 ならば超絶希少な報酬とは、文字通り人生が生まれ変わる程の――。




  △




「……魔物さん? どうかされまして……?」


 ――ポカポカと暖かい陽光を浴びて走る馬車の中、はっと我に返る。


 あぁ。


 途端に向かいの席から、カチャリと柄を握る手の奥で馬の足音にかき消される程度の微かな音が鳴る。


 此度も落ち着け青年。


 とはいえこの先、本人にとって最大限に辛い出来事が待っている等とは微塵も……イヤ。


 そうか、イヤそうだ。


「魔物さん……?」


 戻った理由はどうであれ――先を知るこの状況でならと勇み立ち上がる、次の瞬間には喉元に鋭い痛みを感じ硬直する。


「ロゼっ!」


 おう、……俺が悪かった。だから落ち着いてくれ……。




  …




 さて、そうと決まれば――。


 二度目となる王宮での出来事。


 全ては夢の様に、出来る事なら永遠に醒めぬ時間で在ってほしいと思う。が。


 限り有る時の流れは一度っきりの刻を逃さない。


 そうして一夜が明けて。


 ――始まりは凡そ一ヶ月後、それまでに可能な限り準備を整える。


 先ずは事前調査、今のところ自分の知る流れと何も変わっていない。


 とすれば王城の――正確には最初に城下が襲われる、しかも突然に大量の魔物が押し寄せて来て……。


 無論現状は何の危機的状況も見受けられない。


 東西南北、人の居る場所へ急襲できる魔物の群れ等は影も形もない。


 しかも国王の居る城が建っている場所だけあって立地は悪くない。


 攻めるにしても、文字通り正面から堂々突破するのが妥当だろう。


 ふぅ――、一旦下りるか。






 変態は解除せずにスティンジーバードのまま、極力人目の無い路地裏の屋根に立つ。


 意外と言うか案外警戒心とは日常的な場所ほど薄いものだ。


 とはいえ流石に見付かると動きづらくもなる、なるべく目立たない方法で情報を集めなければならな――、――ん?


 不意に眼下で人の話し声が、次第に気配は強くなり。


「先生っ信じてくださいよ!」


「あぁ分かった分かった。帰ったら、な?」


「それでは遅いのですぅ!」


 咄嗟に屋根の軒先で隠れるよう身を縮める。


 ん、ぇ、まさか。


 しかし建物内から路地へと出て来た二人の内、一人は――。


「いいかいマリア、アタシはこれから大事な用があるんだ。アンタのおとぎ話に付き合えるのは一ヶ月後の夜、クタクタで帰ってきた師匠の肩を揉む時までお預けだよ」


「そんなぁ……先生」


 あの間の抜けた雰囲気と金髪、それでいて見た目だけなら美女と言えるが幸の薄そうな顔で、なのに超回復特化型の強力治療士様は、――マリア。


 そうかアイツも、時間が戻ったのならば。


「不服があるのなら証拠をもってしてくつがえしな、口先だけじゃ本物は動きやしないよ」


「……証拠?」


「そうだね、アンタの言う喋る魔物だったか? そのお友達とやらを連れて来れば話が早く付き合ってやらなくも、ない」


「やるのかやらないのかどっちですかっ」


「アッハッハ、じゃあ期待せずに待っててやるよ。じゃあね、未熟な弟子よ」


「ぁ、先生ッ!」


「精々くれてやった道具を旨く活用しなー」


 ヒラヒラと手を振る先生と呼ばれる人物、その背は声を上げる弟子の存在には一度もくれず人の行き交う表通りの方へと消えて行く。






 何とは無しに一部始終を見ていた。


 と次の瞬間、あっと思ったのはお互いかその表情から確実に目が合った事を悟る。


 ――しまった、油断していた。


「……ゴブリンさん?」


 ヘ。


「ェ、あれ……? そうですよね?」


 いや、確かにそうではあるが。


 現状は別種なので。


「ぇっと、……違うのですか?」


 如何すべきか。


「やっぱりゴブリンさんですよねっ? そうですッゴブリンです!」


 ぁ、ぁ、バカ。


「ゴブリンです! ゴブリンっ!」


 アホ止めろ! 人が集まって来るバカッ大声で叫ぶなよっ!








ようやく7万文字か……、文才があって且つ努力の出来る人は本当に凄いですね!

ところでミスドの白いポンデ、美味しいですねぇ(*´ω`*)

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