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第16話〔変革、AT戦闘でのリアルな選択と失意〕④

 



  *




 二大神の加護を受ける世界ヘレ――において魔物は、人間が評定し共通する二つの区分で体系付けがされている。


 その一つが等級、これは魔物だけでなく全体の評価にも適用されている。


 そして生息域、対象の魔物が活動する主な区域を指すと同時に生態の特徴をも示す。


 具体的に個々の等級には三種類の生息域に魔物が該当するとされて分類する陸・海・空に其々一体ずつ、対応した種族が存在する。


 例えばゴブリンだと最低等級の1、生息域は陸となり同位の空にはスティンジーバードが対象として名前を並べる。


 ちなみにコボルトは一つ上の2で分類は陸。


 まあ、分かり易い公然の基準だと思えばいい。


 序でに言うとそれ等の魔物や能力の詳細を載せた〝魔物図鑑〟という物があり、冒険者業をして生き抜く為の知識を解説し知恵を身に付けさせて優れた判断力の源となる見識を高める事に――。


「おーい、聞いてますかぁ?」


 ――ヌ。


 何だと言った感じで自身に肩を貸す相手へ口端から顔を向ける。


「イテテっ若干刺さってますッ」


 やれやれ、と話が進まなそうなので少し横へ移動する。


 そして改めて、何? の雰囲気で見詰める。


 と頬を擦りながら前方を指差す。


 其処に――。


「治療士様っ、支援をお願いします!」


 ――魔物、ゴブリンが三体。


 次いでェっと惚けた声を出すマリアの前で身構える兵士達。


 自分は巻き込まれないように空へと避難――ガシッ。


 エっと下を見る。


「一人だけ、安全な場所には行かせませんよ……」


 なっ。


 若干憎しみがこもる絞り出す声色で細い我が足を掴み、告げられる。


 バカ、何を――。


「来ますッ」


 ――止めろアホっ放せぇェェェェッ。




  …




 ――生きた。


 いや、行けた。


 急遽参加させられた戦闘だったが、ちゃんと人間側として行動ができた。


 ただ打っ付け実証だったので相当焦りはしたが。


「ありがとうございます、治療士様のお陰で随分と安全な戦いを行うことができました」


 マジで、やたら回復をするから無駄な着手で目を引く。


「それしか能がないので……」


 だとしても攻撃を加える事くらいは選択の内だろ。


「そんな、今の私共にとっては十分過ぎる程のお力添えです。さりとて本隊と合流するまでには息を長めに調整しておくのが治療士様にとってもご都合が宜しいのではと」


 さすが人前に立つだけあって、控えた物言いだな。


「そ、そうですねっ、……考えておきます」


 まったくだ。


 とはいえ完全には否定をしていない、のには理由がある。


 先刻の開示書ブックでの拝見、特に自動回復は体力が万全なら魔力にもその効果は及ぶ。


 行き着くところ回復をおこたらなければ、ほぼ尽きる事なく魔法が使える。


 実質治療士として有能中の有能と言っても過言ではない、が。


「それでは行きましょう。後を追う我々の足なら、そう遠くない内に先の隊を見付けられるはずです」


「ぁハイ……」


 そして移動を再開する二人の後ろを付いて行く治療士様とやらの横顔は何かに怯える様子で、小さく震えていた。


 ――まあ、結局のところ。


 どんな力も使う者次第と言う事だろう。




  ※




 人であった頃、まだ冒険者としては駆け出し時分の話だ。


 挨拶程度の関係ではあったが顔見知りのパーティで悲劇が起きた。


 当事者は死亡したのだが何より悲痛なのは直接の仲間、の内で治療士の役割を担う者だ。


 無論責められるべきではないのだが、決まって責任を感じる立場であるのは想像に難しくない。


 故に心を病んで辞める者も少なくはない。


 人の死に関わる、それだけでも心苦しいと言うのに、それが仲間であれば当然の事。


 治療士とはそういった憂惧ゆうぐの中、決断をしなければいけないのだ。




  ※




 計六回、追跡を始めてから魔物と戦闘になった。


 その殆どはゴブリンで、コボルトは一度のみ。


 ――いずれにせよハッキリとした事がある。


 どうもあの女――マリアは、戦闘に於いては攻撃が出来ないらしい。


 いや、出来ないと言うか〝選べない〟と言った方が、正しいか。


 理由は定かではない。


 にしても――。


「治療士様、今夜はこの辺りで野営します。宜しいですか?」


「ぁ、ハイ」


 ――類い稀に見る個人性。


 ホント、一体何者なんだ?






 これまでのところ何だかんだと順調に進んでいる? と思う。


 当初あてもない捜索だったのが人も増えて目的地に誘われる。


 そうなると愈々(いよいよ)本格的に如何助けるのかを考えねばならない。


「治療士様はこちらでお休みください、見張りは私共が」


「ぇ、良いのでしょうか?」


「もちろんです、ゆっくりとお休みください」


 夕食後野外に張ったテントを示して告げる隊長の意に添う形で得た、私的な時間。


「――何をしているのですか?」


 おっと、厳密には個人ではないか。


 と昨夜同様寝袋に包まれながらの自分達。


 ちなみに用事を効率的にする為、変態は解除しゴブリンに戻っている。


 さてと外の焚き火がイイ感じの照明になっています。


 ので――手の平を表紙に押し当てて、触れる。


 すると自動的にパラパラと頁が捲られてから開かれる面に浮かぶ内容、前回との変わり様は特にない。が。


 表示された項目から更に個別の詳細を見る。と――。



[変態]Lv2。

 固有技能。

 ヘレの第五元素により産み出される等級2までの魔物に変態が可能。

 但し過去にその対象を倒す必要がある。


 またLvが上がると低い等級の変化は速くなるが、飛び級での変態は不可。


≪現対象目録≫

 等級1。

  ゴブリン〝Lv3〟

  スティンジーバード〝Lv2〟



 ――……等と。


 つまり、これは。


「ほへぇゴブリンさんて凄い技能をお持ちなんですね」


 ああ必然というか、そりゃこの状況だと見えるわな。


 今のところ止むを得ない。


 ただ外の二人にまで知られるのは事が複雑化するので。


 同じ寝袋で寝ている後ろのマリアへ、指を口の前に立てて黙視を促す。


「ェ、ウ〇コしたいのですか?」


 おい如何解釈したら、というかウ〇コって言うな。








七夕は、八月にする所もあるみたいですね。

――登録者数が増えます様に、カキカキ( ..)φ

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