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第13話〔変革、AT戦闘でのリアルな選択と失意〕①

 ――翌朝、日の出と共に動き始める。


 現状お姫様捜索の過程で出くわした風貌騎士だった女から新しい情報や状況を知らされ、精神的な混乱や動揺を完全には落ち着かせることが出来てはいない――ものの。


 運良く生き残った都合上尋ね人との再会を果たすまでの首尾貫徹を目標に進まねばならない。


 誰かの為ではなく自分自身、として意地を通すのだ。


 よし――。


 それでは少なからず世話にはなったと一応の礼をして。


 ――再出発だ。






 徘徊する魔物が居ないか注意をしつつ一先ず城内を後にする。


 と今来たばかりの後方から騒がしい、もとい忙しない様子でその大本が駆け寄って来た。


「ゼーゼーッ」


 なんだ追いかけてきたのか……。


「ハーッ、ハー」


 見たところ気づいてから直ぐに、急いで来たって感じだな……。


「ヒュッヒューっ」


 ……。


「ゼッハっ、ヒュッ、っハ!」


 おい本当に大丈夫か?


 あと、上着を着るかせめて羽織るかしろよ。




  …




 一先ず本人が手に抱えていた衣服を着たのち。


「何も言わずに私を置いて行くなんてヒドいですよ」


 果たして去った事と黙って行った事のどちらに重きを置く発言か、を質問する手間は省くとして。


 道具袋から巣箱を取り出し。


〝ナニ?〟


「ェ。――な、何じゃないですよっ。私を独り置き去りにするなんてあんまりですっ」


 何故と言った感じで首を捻る。


「城の近辺はまだ魔物が残っているのですよッ? そんな場所に独りで私を放置するとか正気を疑いますからっ」


 現状自分はその魔物に分類されると思うのだが。


「念を押しますが、私は戦闘では治療が専門でッ戦う力は皆無なんです!」


 それは本人のやる気――の問題と思うが。


「尚且つ、私に加護が無いのは既に見ましたよねッ?」


 未だに信じ難いがそれについては議論の余地はもうない。


 通常であれば危機的状況下で形成される神の恩恵――戦闘遷移は、主として強制力が有り人間だけに与えられた摂理。


 自分の意思とは関係なく、一定の距離感で対象者を空間転移する。


 それ等を踏まえて実際に見て出た結論が本人の言い分と矛盾しないのだ。


 ――信じる他にない。


 ただ、現状それが目の前で不満の様に告げられる意図が不明。


「ぅぅここまで言ってもまだご理解をされていないって顔ですね……こ、このひとでなしさんっ……!」


 はい、人でなしですが。


「もうっとにかくッ私も一緒に連れて行ってくださいよ!」


 ハィ?


「あんな所に独りで置き去りにされたら気が狂ってしまいます……」


 否――。


「先に言っておぎまずが逃げようどしでもしがみ付いで、泣き喚ぎまずよ」


 ――それは嫌だな。


 次いで、気の進まない感情を読み取られたのか今にも宣言通り泣き出しそうに。


 ああもう。


 分かったその代わりと昨夜から使用し始めた手紙に載せて条件を眼前の相手に表示する。






「――改めまして、私マリアと申します。潔く宜しくお願いいたします」


 別に潔い感じは何処にも無かったと思うが。


 まあしかし、妥協したとはいえ今後行動を共にする上でも自己紹介くらいはあったっていいだろう。


 と言ってもこちらからは名乗る程の事は何も……――。


 ふと思い立つ。


「ゴブリンさんのコトは今後も、ゴブリンさんと呼べばいいですか?」


 うむ、ここらで一度見ておくべきだろう。


 自分だけでなく一緒に居る以上は把握して損もない。


 ――という訳で近場の木陰を指し、女を誘導する。


「ェ?」






 兼ねて用心する人目を忍び、目立たない木の下で足を止める。


 さて、先ずは自身から能力値を開示して、視よう。


 袋から本を出しその表紙に掌を置く――。



[ブリ]

 HP:14

 MP:0

 SP:1

 Lv:3


 固有技能:変態Lv2

 特技:乱突きLv1



 ――値は主な、て。


 こ、これは……。


「ひょっとして、それはブック……?」


 おっと忘れていた。


 今回は自分以外の目が在るのだった。


「何故そんな物を……、それも姫様からの……?」


 否定する理由がないので肯定として頷く。


「姫様……、凄い」


 感想としては単純だが、的を得る。


 そもそも個人? での所有は貴族でも稀な事――だというのに、それを選りにも魔物なんかに無償で贈るなど前代未聞の所業。


 まあ完全に奉仕無き振る舞いではない――とはいえ、口約束程度の関係でする、もとい簡単には譲渡出来る事柄では絶対にない。


 本当に、あの女神様は一体どれだけの期待を自分に寄せているというのか。


 ――正直荷が重い、イヤ重過ぎる。


 ただ、だとしても――。


「……ェ?」


 ――みっともない今の自身にも出来る事があると言うのなら微塵の可能性すらも選択の内に受け入れて、今の内に思考の幅を増やしておきたい。


 それが長きに渡り決定を躊躇し人生が一変した事で得た究極の教訓だ。


 なので、さぁぐいっとそれでもってぽんと――曝け出してもらおうか。


「ッェ?」






 ふむふムっと本の内容から傍らの女に目を向ける。


 途端に何故か落ち着かない様子だった肩がビクッと動く。


 ん……? まあ、いいか。


 ――それより。


 此奴コイツは予想を上回る実体だ。


 本人の発言通り主な値は治療士の体で予測できる範囲も越えない。が。


 治療魔法がLv2。


 更には解毒治療がLv1と治療士の立場では能力と値が中級に近い実力を持っている。


 そして極め付けはコレ――ヒーリング、しかもLvはなんと2。


 だというのに分類は固有ではなく保有と区別されており、その実態。


 ――自動回復持ち、だったのか……。


 そら、しぶとい訳だ。


 Lv2というコトは自己回復だけに留まらず、他の。


「ぁ、ぁの……」


 ん――。


「――うが?」


「ヒっ」


 おっと、って。


 さすがにもう怖がるなよ、一応軽く傷ついてはいるんだからな。








最近はなんでも値上げ値上げなのに、私のうだつは上がらないってね。

ふぅ……、平坦な努力が一番ですよね☆

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