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第12話〔変態、等級変化における魔物の選択〕⑥

 時刻は定かではないが、窓から見えるは星のきらめく空模様。


 室内に置かれた暖と明かりの両方を担う魔法石を使用したランタンを中心に、床で寝袋に包まれている自分達。


 ……一体なにがあったのか。


 聞こうにも言葉がない。


 故に、思い出せる範囲では――。




  ▼




 瓶ごと大量の毒を飲んだコボルトのピクピクと動く身体が完全に止まる。


 次いで全身から白い霧状のエーテルを発散し、消滅シンだ。


「ハァハァ……」


 途端に視界がグラっとくる。


 ゥぐ。


 ――早く、解毒しないと。


 ドクセリなら手持ちの毒消しでなんとかなる。


 急ぎ道具袋から自作の丸薬を取り出し、服用する。


 ……ふゥ。


 一先ずはこれで。


 出来ることなら腕の傷も処置したいが……。


「ひぃいイッ! 嫌ーっ!」


 ああもう何処だ、――外か。


 続く叫びを聞き――、鬼気迫る声のもとへと向かう。






 部屋を出て直ぐに姿を見付ける。


 状況を――確認している暇はない。


 見たままの窮地、崖際に追い詰められた獲物同然――考える余地がない。


 ああクソ。


 叫んで助かるのならと、飛び出して。


 また止めろと自分を非難する。


 そうこうしている内に辿り着くも此度は足がもつれて。


「ガっ!」


「ェ?」


 背後からコボルトを強襲、もとい体当たりで――。


 あぁダメだ……。


 残る毒気の所為か朦朧とする視界の閉じ際、赤く染まった空を見る。


「ゴブリンさんっ!」


 ――最後は落下する意識の中、微かに鳥の羽ばたきが聞こえた。




  ▲




 ……――凡そ思い出したが肝心な部分、最後の決着が。


「ゴブリンさんがコボルトと一緒に落ちてしまった時は肝を冷やしましたが……、直後に鳥となって衝撃を軽減されたみたいでホッとしました。アレはゴブリンさんの魔法か何かで?」


 なるほど、そういうコト。


 無意識ながらに危機を脱する行動を取っていたのか。


 けれどもあの一瞬で、変態する余裕はあったか……?


「ェ。ト、鳥……?」


 後頭部に当たる、背側の肉が動く。


 その弾力ある隙間に収まっている所為で自身の意思とは無関係に顔の向きが同調する。


 イテテ。


 無理に動かすと首筋が伸びるだろう。


 と。


「キレイですね……、これは?」


 目の前に舞い降りた鳥、正確には鳩――を見て女が呟く。


 ヌ……。


 やっぱり駄目か。


 これで何度目かの不通、やはり宛先は所在不明のままで戻ってくる。


 そして此度の仕事を終えた鳩は己の巣となる持ち物の中へと寝袋を透り消え行く。


 それを見てか、背後からは感嘆の様な声が漏れていた。


 が、そんなコトはさておき――これは本格的にヤバい。


 イヤ最悪の事態をも想定し居場所を探す方法を。


「ひょっとして今のは、姫様がお話になっていた魔法の……?」


 そういえばそうだった。


 だが如何にして……。




  ※




 今更ながら改めて、この世界の基本原理を顧みたいと思う。


 名はヘレ、二大神によって選定の加護を受ける人間が住まう世界。


 簡単に言うと人間にのみ適用される神の加護が在る。


 端的には魔物との戦闘時にコマンド選択が現れ、長考できる様になるという。


 なので魔物である今の自分には加護は対象外となる。


 逆に言えば、人間であるにも拘らず加護を受ける事が出来ていない奴なんて見たことも、まして聞いたことすらもない。




  ※




 そして難問はあっさりと解決した。


「ではゴブリンさんはお独りで姫様をお探しに来たのですか?」


 直ぐ様返答文を思い描き、送る。


〝ホカ ニ アテガナイ〟


 と言った文字が相手の視界には映ったであろう。


「そうですか……、でもこの状況では姫様も何処にお逃げになったのやら……」


 そう、ソコだ。


 透かさず聞きたかった事を発信。


〝ナニカシッテイルカ?〟


「ェ姫様のことですか?」


 相手は背後だがその場で頷く。


「いえ……私も必死だったので、行方までは……」


 それは非常に残念だ。


「ただ先日訪問した際に姫様が魔物とお友達なった事をそれはそれは嬉しそうに、いえ楽しそうな口振りでお話をされていたのが印象的で、――それで私はピンと来ました」


 なるほど、と同時に疑問が湧く。が話しを続ける様子に耳をそばだてる。


「ああこの人が姫様の言っていた魔物なんだと」


 まあ、どう見ても人間ではなく、魔物ですから。


「本当に驚きです。人間と仲良くしようとする魔物なんて、まるで御伽話です」


 ふム。――まぁ元は人間なんで。


 と、そうしたら次は質問の番だ。






 本来は互いに送り合えるのが理想の文書だが、希少な魔法具である巣箱を起点に思い浮かべる言葉が文字となって一方へと伝わる。


 若干の時差はあるものの意思疎通は過去の労力を必要としない分、各段である。


「私、ここの城下町で魔導治療専門の医療施設に修行と出稼ぎを兼ねて滞在中だったんです。姫様とは歳が近いことで定期訪問の診察では担当をさせていただく機会が多く、毎度馴染みのないお話を聞かせていただきました」


 なるほど、そういう事情コトか。


 しかし何故――。


「今回の事は本当に……、私だけでなく、きっと誰もが訳も分からないまま……、こんな酷い状況に」


 ――そう、なので。


〝オマエ ハ シロ デ ナニシテタ?〟


「ェ、私ですか? 私は施設の皆と従軍治療士として任に当たる、予定でした……」


 すぐさま予定だったと言う疑問符で首を傾げる。


「本当に突然のことでした……。突如として、沢山の魔物が攻めて来たんです」


 ハ? ェ。


「魔物達は城下を襲い出すと瞬く間に城まで攻め入って……乱戦状態に」


 な、ナニ。


「あっちこっち其処彼処で戦闘が始まり、私も近くに居た兵士や騎士さん達に協力して戦闘の支援をと試みたのですが、……其処で驚く事態を目撃しました」


 驚く事態……? 何だ。


「加護が、神様の加護が壊れてしまっていたんですっ」


 壊……? ――いったい今ナニが起こっているんだ……。








  変態、等級変化における魔物の選択/了


ようやく序盤の流れが出来てきた感じでしょうか……?

――それはそうと新ジャガ美味しいですね☆

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