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甘々短編集

七夕ごっこ

作者: 衣谷強
掲載日:2021/07/04

今年の七夕はあいにくの空模様のようですね。

七夕にまつわる小ネタを膨らましていたら、何か甘いのができました。

久々の夫婦もの、お楽しみください。

 仕事を終えた俺は、疲れた身体を引きずるようにして家に帰った。


「お帰り。あ、濡れてるね。雨降ってる?」

「あぁ」

「残念。せっかくの七夕なのに」


 頬を膨らませる妻に疲れが解けていくのを感じる。

 七夕の伝説を信じているのか。可愛いやつだ。

 ベガとアルタイルはただの恒星だし、二つの星の距離はおよそ十四光年。

 年一回の出会いに光の速さで十四年かかるなんてナンセンスだ。


「じゃあさ、せめて七夕ごっこ、しない?」

「七夕ごっこ?」


 言うなり妻は抱きついてきた。

 成程、遠距離恋愛で久々に会えた恋人ごっこ、か。


「あぁ、いいぞ」

「やった」


 顔を上げて嬉しそうに笑う妻。


「久しぶりに会えて嬉しいよ」

「? 何言ってるの?」


 あれ? 久々の再会を喜ぶ設定じゃないのか?


「七夕ごっこって、織姫と彦星になりきるんじゃないのか?」

「そうだよ」

「じゃあ一年振りの再会なんだから、久しぶりで合ってるだろ?」

「んふふー。ちょっと違うの。あのさ、星って長生きなんだよね」

「あぁ、十億年とか百億年とか光り続けるらしいな」

「百億年だったら、年に一回会う織姫と彦星は百億回会うんだよね」

「……そう、だな」


 すると妻は嬉しそうにまた「んふふー」と笑う。何だ?


「私達が百年生きるとして、百年で百億回会うとしたら、一年に一億回会うわけよ」

「……ん?」

「という事は、一日に二十七万回以上会う事になるの」

「お、おい」

「一時間に一万回、一分で百九十回、一秒にして約三回。つまり密着が最適解」

「ちょ、ちょっと待て!」

「『いいぞ』って言ったもんね?」


 うぐ。いや言ったけど!


「離しませんよ彦星様」


 妖艶な色を帯び始めた妻の目に、俺は降参を宣言する。


「……トイレだけは勘弁だぞ織姫様」

「よろしい。じゃあまずはお風呂ー!」


 横に回って腕を引く妻はとても嬉しそうだ。

 ここのところ忙しくて後回しにしていた夫婦の時間のツケか……。

 腕を優しくほどくと、細い肩を抱き寄せる。

 妻は犬のように頬を擦り寄せてくる。


「んふふー。今夜はずっと一緒だからねー」

「何言ってんだ」


 俺は鼻を鳴らして妻の言葉を訂正する。


「一生だろ?」

「へっ!? あ、う、うん……、そうだね……」


 真っ赤になった妻は、にっこり笑って、


「一生、離さないでね?」


 星よりも輝く笑顔で俺をノックアウトした……。

読了ありがとうございます。


はい皆さんご一緒にー。

「リア充超新星爆発しろー!」


しかし「織姫と彦星は人間に当てはまると一秒に三回会ってる」というロマンのかけらもない小ネタから、こんな甘いものが生まれるなんて……。

前世で砂糖に何か悪い事したのかな……。


「血糖値が上がった」

「嫉妬の炎が燃え上がった」

などのご不満がありましたら、短冊に書いて吊るしてください。

『僕は悪くない』

悪いのは全部七夕です。


それでは皆様、良い七夕の夜を!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初は織姫奥様が攻めているところを、するっと逆転させて攻めに回る彦星旦那さん。 そして最後はまた織姫奥様が攻めて終わる、相変わらず攻めの転換が上手で流石だと思いました。 最近では悟りが開…
[一言] よ、よのなかそんなに甘くないんだぞ。だぞ(´Д⊂グスン リア充超新星爆発!!
[良い点] ちょっとしたネタからこんなに素敵な作品を生み出せる。 相変わらず素晴らしいです! 仲良しなお2人の様子に癒されます。 七夕の日はしっかり晴れた!という印象が少ないのですが、1秒間に3回も会…
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