第86話 決戦
それから小一時間ほどが経過しようとしていた。
いよいよ収録本番の時間だ。
ADさんが迎えに来て、収録スタジオまで向かう。
「では、Whiteの皆さんはここで待機をお願いします。プロデューサーさんはこちらで見学出来ます」
「分かりました」
俺はWhiteの背中を見送った。
少し離れた、収録の邪魔にならない所でWhiteの様子を見守っている。
『頑張れよ』
俺は3人に目線で合図を送った。
そして、遂にWhiteの順番がやってきた。
その様子を俺は緊張しながらも眺めていた。
しかし、メンバーはまるで先ほど緊張が嘘のように生き生きとした表情を浮かべていた。
ダンスも歌もいつも通り。
いや、いつも以上のパフォーマンスをしてくれているとも思った。
日頃のレッスンの成果なのだろうか。
3人とも、初期の頃より確実に成長している。
やっぱり、人は成長する生き物なのであろう。
そして、持ち時間10分という短く長い時間は終了した。
俺の元に戻ってきたWhiteのメンバーは額に汗を浮かべながらも、清々しい表情をしていた。
「お疲れさま」
「「「お疲れさまでした」」」
とりあえず、俺たちは収録スタジオを出た。
収録が終わり、楽屋に戻る。
すると、ドアをノックする音が響いた。
俺がドアを開けると、そこには向井さんが立っていた。
「ちょっといいかな?」
「はい、どうぞ」
そう言って、俺は向井さんを楽屋に通した。
「皆さんお疲れ様でした。今日のパフォーマンスは最高でした」
向井さんはWhiteのメンバーに向けて言った。
「「「ありがとうございます」」」
3人はペコリと頭を下げた。
「いえ、さすがは四宮さんが押し上げたグループですね」
「恐縮です」
「それで、ここからは提案なんですけど、今後もうちの番組に出てくれませんか?」
「願ってもないご提案です」
向井さんからは予想外の提案が出てきた。
「視聴率にもよりますが、私個人としてはWhiteを高く評価しています」
「ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします」
俺は向井さんと握手を交わして言った。
「では、私は次の仕事がありますので、これで失礼します。気をつけて帰ってください」
「はい、お疲れ様でした」
そういうと、向井さんは楽屋を後にして行った。
「さて、着替えて帰ろうか」
もう、収録は済んでいるので帰っても大丈夫だ。
「じゃあ、外で待ってるから」
俺は廊下でに出てメンバーが着替えを終わるのを待っていた。
「何とかうまく行ったみたいだな」
今日の感触としては十分だろう。
向井さん的にも前向きに検討してくれているので、このまま行けば順調にWhiteはメディア進出することができるだろう。
ようやく、Whiteは半地下と呼ばれるラインに乗った訳であった。
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