第64話 運営と
しばらく歩いて、俺は対バンライブの会場へと到着した。
エレベーターに乗って3階へと上がった。
「おはようございます」
そういうと、スタッフの一人が俺の姿に気づいた。
「四宮さん、ご無沙汰してます! 本日はありがとございます。代表ですよね?」
「久しぶりです。ええ、二条さんもう来てますか?」
「はい、今呼んできますので少々お待ちください」
そう言うと、スタッフの人は奥に小走りで向かって言った。
何となく手持ち無沙汰になったので、俺は今日の会場を見回していた。
「お待たせしました。この度は出演依頼を快諾していただき、ありがとうございます」
流行の最先端を行っちゃっているようなファッションをした二条さんがやって来た。
果たして、それがオシャレなのかは常人では理解できない。
「いえ、二条さんの頼みは断れませんよ」
「ありがとうございます。最近、勢いがあるWhiteに是非出演していただきたいと思いまして」
「それは、光栄です」
週刊少年ブレイブのグラビアに載った時から依頼は着実に増えている。
こちらから営業しなくても仕事が舞い込むようになった。
「いやあ、前の会社をお辞めになったと聞いた時はどうなることかと思いましたが、無名だったアイドルをここまで引っ張るとは腕は落ちてないようですね」
二条さんも前の会社時代に知り合った運営の代表である。
「色んな人に助けられてここまで来れました」
「皆さん、貴方だから力を貸しているんだと思いますよ。誰にだって協力する訳じゃありません」
「そうなんですかね。今日はよろしくお願いします」
対バンライブは他のアイドルのファンの方にも見てもらえるチャンスである。
Whiteが勢いがあると言っても、大手と比べたらまだ足りない。
「こちらこそ、よろしくお願いします。楽しみにしていますよ。四宮渉プロデュースのWhiteを」
二条さんは俺の肩をポンと叩いた。
そんなことを話している時、他のアイドルたちが事務所の人と一緒にやって来た、
俺はまだ見たことがないアイドルだったので、最近結成したばかりのアイドルかもしれないと思った。
俺は軽く会釈すると、Whiteの到着を待とうとした。
その時、事務所の人と思われる男性が目の色を変えてこちらに向かってきた。
「失礼ですが、四宮渉さんでいらっしゃいますか?」
「ええ、そうですが」
「私、株式会社フュチュールの荒木駿と申します」
そう言って、名刺を差し出してきた。
「頂戴します。ちょっと待ってくださいね」
俺もスーツの内ポケットに手を突っ込んで、名刺ケースを取り出すと、名刺を一枚抜く。
「株式会社フルムーンの四宮です」
「頂戴します」
そう言って、荒木さんは名刺を受け取った。
「四宮さんのお噂は伺っております。あの、ユメミヤのプロデュースをした方で、今は無名のアイドルを一気に引っ張ってると」
どうやら、同じ業界でも噂が回っているようだった。
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