第58話 アイドル特集の撮影
今日はアイドル雑誌への特集記事の撮影が入っていた。
現地集合と連絡してあるのでもうすぐ来る頃だろう。
新宿なら迷うこともあるまい。
前に一度来たことのあるスタジオでもある。
「おはようございます兄貴!」
俺がスタジオに到着すると、貴雄の姿があった。
「ああ、そういえば今日の撮影もお前だったな」
「そうっすよ。兄貴のご指名じゃないすか」
「いや、今日は指名してない。出版社の方からお前に撮って欲しいから口添えしてと言われただけだ」
流石の大手出版社も世界的なカメラマンを呼べるほどのコネも予算もない。
だからこそ、俺を使って交渉してきたのだろう。
「じゃあ、兄貴は俺じゃなくてもよかったんですか?」
「いや、お前に撮ってもらえるのは正直助かる」
やはり、カメラの腕だけは確かなのだ。
他のカメラマンが撮るより、個々の良さがより引き出される気がする。
「やっぱり、俺が必要なんじゃないですかぁ」
貴雄は俺の肩に手を回してきた。
「やめろ、暑苦しい」
そんなやり取りをしていると、Whiteのメンバーが到着した。
「「「おはようございます」」」
時間通りである。
「おはよう。今日もコイツが撮ってくれるから」
俺は貴雄を指さして言った。
今日は、他にも雑誌の出版社の人やスタッフが何人か入っていた。
「石川さん、今日もよろしくお願いします」
莉奈がぺこりと頭を下げた。
「うん、よろしくねー」
そして、撮影が開始される。
やはり、撮影している間は俺のやることは少ない。
少し離れた所から宣材用の写真が撮られているのを眺めているだけだ。
「これだと、結構早く終わるかもな」
俺は左手につけた腕時計を見ながら思った。
貴雄も基本はふざけたヤツだが、仕事はできる。
だからこそ、一緒に仕事ができるというものだ。
時計の針は昼の12時を回った。
撮影は終盤に入り込んでいた。
個人の写真を撮り終えたら、全員一緒の撮影が始まる。
これが終わったら、撮影は終了だろう。
「お疲れー、これでおしまいにしよっか」
貴雄はカメラから視線を外した。
「これも兄貴が後で確認する感じですか?」
「ああ、そうだな。色校は送られてきますよね?」
俺は出版社の担当者に確認する。
色校とはイメージ通りの印刷物に仕上げるために印刷物の色味を確認、調整する作業である。
「もちろんです。一週間くらいで送れると思います」
「分かりました。では、私はその時に確認しますのでよろしくお願いします」
「承知しました」
確認すべきことも終わり、撮影は終了した。
「お疲れ様でしたー」
Whiteのメンバーは着替えを済ませる。
「お疲れさん」
俺はメンバーたちとスタジオを後にしたのであった。
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