第29話 撮影お疲れ様でした
撮影を開始してから1時間ほどが経過した。
「兄貴、こんな感じでどうでしょう?」
貴雄が俺に尋ねてきた。
「お前がいいと思うならいいいよ」
「信頼してくれてるんすか?」
「写真の技術は、な」
俺は『写真の技術』というところを少し強調して言った。
「そこ強調しなくてもいいじゃないですか」
「まあ、俺は修正された写真が送られてきた時にちゃんと確認するよ」
当然のことだが、出版社からはこれで載せていいですか?という確認がくる。
そこで俺がOKを出せば雑誌に掲載されるというシステムだ。
「来月の頭の発売でしたよね?」
俺は保谷さんに聞く。
「ええ、その予定です」
「それだと、来週には確認来ますか?」
「そうですね。早くて今週末ですね。遅くとも来週の頭にはお送りできると思います」
「分かりました」
なかなか素早い対応である。
やはり、大手の出版社は違うな。
出版社の中では1ヶ月くらいかかるところもある。
そこと比べたら鬼のようなスピード感である。
「では、今日はこれで解散という形で大丈夫ですので」
「分かりました。ありがとうございました」
「こちらこそです」
俺はメンバーに着替えてくるように言った。
「兄貴、またお願いしますよ」
「ああ。てか、受賞したなら言えよな」
こいつなら真っ先に自慢してくるタイプだと思っていた。
「兄貴なら言わなくても知ってるもんだと思ってたので」
「俺の知らない所でどんどんすごい人になってるんだな」
「あざっす。兄貴ほどじゃないですけどねー」
貴雄はらしからぬ照れたような笑みを浮かべていた。
「別に俺はすごくないさ」
人脈チートと言えば聞こえがいいかもしれないが、見方を変えれば他力本願に過ぎない。
「誰かが付いてきてくれるだけの人望があるってのは俺は尊敬しますね」
「ありがとうよ」
貴雄とそんな話をしているうちにメンバーの着替えが終わったようである。
「四宮さんお待たせしました」
「はいよ、じゃあ帰るか」
俺は挨拶を済ませると、スタジオを後にした。
そのまま、メンバーを駅まで送っていく。
「雑誌載るの楽しみですね!」
「こういうの初めてだからねぇ」
「うんうん」
女の子たちはすごく楽しそうで嬉しそうだ。
そんな姿を見ているだけでも微笑ましく感じてしまう。
「じゃあ、確認の画像が送られてきたら共有するから」
俺は駅の改札までメンバーを送ると言った。
「四宮さんは乗らないんですか?」
「ああ、俺はちょっとこれから寄る所があるから」
「そうなんですね。お疲れさまでした」
莉奈たちがぺこりと頭を下げた。
「うん、お疲れ様ー」
そう言うと、莉奈たちは改札を抜けて駅のホームに向かった。
「さて、俺も行くか」
俺は駅と反対方向へと歩みを進めた。
作者からの切実なお願いです。
『面白い』『続きが気になる』と少しでも思って頂けたら、ブクマや評価をお願いします。
星1つでも大変ありがたいです。
普段は評価を入れないという方もこれを機に入れて頂けないでしょうか?
もちろん、出来ればで構いません!
その応援が作品、作者の力になります!
執筆のモチベーションも保たれるので何卒よろしくお願い致します。
物乞いみたいですみませんが、執筆活動するうえで切実なお願いです。