第103話 最終選考へ②
俺は3人にテレビ出演が正式に決定したことを伝える。
「テレビ出演はもう少し先になりそうだから、詳細がわかったらまた共有するね」
向井さんからは大まかな概要しかまだ伝えられていなかった。
「分かりました」
「俺の方からはこのくらいだけど、皆んなから何かある?」
俺は対面に座る3人に尋ねた。
こっちから伝えたかったことは全て伝えた。
「あの、アイドルオーディションの方はどんな感じなんですか?」
莉奈が興味ありげな表情を浮かべて言った。
「あ、やっぱ気になる?」
「はい。私たちの後輩になるかもしれない人たちですから」
今回のアイドルオーディションに合格したら、自動的にフルムーンの所属となる。
そうなった場合、Whiteの後輩になる訳である。気になってしまうのも頷ける。
しかし、時間の都合上、俺がプロデュースするのは引き続きWhiteのみということになりそうだ。
Whiteの仕事量から考えて、本来は1人で回せるようなもんではないのだ。
「結構、見込みのある子が多かったよ。あと、やっぱり俺は有名だったらしい」
俺は苦笑いを浮かべた。
「だから、言ったじゃないですか。四宮さんはこの業界では有名なんだって」
美穂が口にした。
「みたいだな。名前だけが1人歩きしてるような感じだがな」
「この前、WEBメディアの取材を受けてましたもんね」
最近では、取材依頼のメールはWhite宛に大量に届くようになったが、俺個人への取材依頼は珍しかった。
以前ならこの手の取材は断っていた。
あまり、プロデューサーが前面に出るものではないと思っている。
しかし、時代は変わつつある。
時代に文句を言っても仕方ないので、時代に合わせて自分が変わる。
これが1番手っ取り早い方法だった。
「まぁ、結構有名な所からだったし、Whiteの宣伝になればと思ってな」
図々しくもその記事ではガッツリWhiteの宣伝をさせてもらった。
おかげで、そこからも導線を引くことができた。
「結局は私たちの為なんですね」
莉奈は嬉しそうな表情を浮かべていた。
俺はこの仕事が好きだし、誇りを持っている。
「そうだね、俺は君たちと一緒に成長して行きたいと思っているからね」
「ありがとうございます」
莉奈は笑みを浮かべて言った。
「そうだ。最終選考、見学に来る? みんながよかったらだけど」
俺は3人に提案してみた。
「え、いいんですか!」
「行きたいです!」
「私も、興味あるかも」
答えは3人とも結構乗り気だった。
「Whiteも結構知名度を上げて来てるし、居てもおかしく無いから大丈夫だと思うよ」
今、Whiteはうちの事務所を代表するアイドルである。
そのメンバーがオーディション会場に居てもおかしくはないだろう。
地下アイドル界隈でも人気と知名度を誇り、憧れる対象となってきている。
「じゃあ、俺から社長に伝えておくね。今日はこれで終わりにするけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」
これにて、今日の打ち合わせはこれにて終了する。
「じゃあ、ワンマンライブに向けてレッスン頑張ってね」
今日はこれからダンスレッスンだったはずである。
「はい、頑張ります!」
3人は意気込んだ様子で言った。
「うん、何かあったら遠慮なく相談してくれ」
俺はそう言って、レッスンに向かう3人を見送った。
そこから、メールの返信やスケジュールの調整などといった仕事をこなす。
「最終選考は来週か……」
全ての仕事が一段落した時、カレンダーを見て気づいた。
すでに望月社長が2次選考通過者にはメールを送っているはずである。
「まだ、仕事してるのか。忙しいのは分かるが、早めに切り上げろよ。明日できることは明日やればいいんだから」
望月社長が社長室から出て来た。
これから帰る所なのだろう。
「ありがとうございます。あの、最終選考にWhiteのメンバーを見学させていてもいいですか?」
「いいんじゃないか? Whiteは四宮くんのプロデュースで今はうちを代表するアイドルだし、地下アイドル界では大手と言っていい。会場に居ても違和感はないだろう」
「ありがとうございます」
「うん。じゃあ、私は帰るから、四宮くんもほどほどにな」
「お疲れさまでした」
そう言うと、社長は事務所を後にした。
「さて、俺も今日は帰るか」
キリのいいところまで行ったので、俺はパソコンを閉じた。
窓の外を眺めると、辺りは既に暗くなり始めていた。
休める時に休んでおくのも大切なことである。
「これからまた忙しくなりそうだしな」
俺は荷物を片付けると、帰路に就いた。
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