第101話 最終選考へ
「では、最後に質疑応答に移ります。美波さんの方から何か聞きたい事はありますか?」
俺は美波さんに尋ねた。
「はい。私、ダンスには自信があるんですけど、歌にはあまり自信がなくて。だから、それがちょっと不安なんですが」
「大丈夫ですよ。もし、うちの事務所に入ってアイドルとしてデビューすることになったらちゃんと歌のレッスンが入りますから。最初は皆んな初心者の人が多いですので、あまり心配しなくても大丈夫ですよ」
フルムーンでは専属の講師の元、ボイストレーニングや歌唱指導、ダンスレッスンを受けることが出来る。
どれも、その業界で実績を残してきた人が講師を務めてくれている。
「それを聞いて安心しました。私からは以上です。本日はありがとうございました」
「お疲れ様でした。選考結果は一週間以内にメールでお送りします。お気をつけてお帰りください」
「はい、本当にありがとうございました。失礼します」
彼女は綺麗にお辞儀をすると、部屋を後にした。
「彼女、四宮くん的にはどう見えた?」
隣に座る望月社長から尋ねられた。
「アイドルになる素質はあると思います。何より、明確な目標が持てるというのはいいことです」
「君がそう言うなら間違いはないな。君に憧れたと言ってもいたな」
「そうですね。あそこまで言ってもらえると嬉しいですね」
俺がこの業界ではアイドル志望の子までに有名だと言う話は莉奈たちから聞いてはいたが、半信半疑だった。
それがこうして、生の声で聞けるというのは嬉しいものである。
「君はもうこの業界では有名人ということがわかった所で次の志望者の面接に行こうか」
今ので大体30分と少しといった感じだ。
これがあと10人ほどいるのでテンポよくいく必要がある。
「はい、次に行きましょう」
こんな感じでアイドルオーディションの面接はお昼休憩を挟んで、夕方ごろに終了した。
終わった頃には皆んな結構疲れた顔をしていた。
「でも、さすがは四宮くんが1次を通しただけのことはあるね。皆んなアイドルとしての素質を持っていると思うよ」
望月社長が今日の選考メモを見ながら言った。
「そうでしたね。皆んなアイドルに向いていると思います。これは、選考に悩みますね」
「だな」
そこから、会場の片付けを手伝って会場を後にした。
「それでは、お疲れさまでした」
「お疲れさん」
俺は会場の最寄り駅から帰路に就いた。
♢
翌日、選考資料をカバンに入れて事務所へと出勤する。
昨日の夜のうちに大体の選考は終わらせておいた。
あとはこれを望月社長に提案するだけである。
「社長、今からお時間大丈夫ですか?」
「ああ、構わないよ」
そう言われて、社長室へと入った。
「昨日の選考の件ですが、この8人を最終選考に通したいと思っております」
俺はエントリーシートを8人分、社長に手渡した。
「見せてもらうよ」
エントリーシートを受け取ると、社長はペラペラとめくって行った。
「うん、私も四宮くんと同じ意見だ。この子たちを最終選考へと通そう」
「ありがとうございます」
「最終選考への通知は私の方から送っておこう」
「分かりました。よろしくお願いします」
俺はそう言うと、社長室を後にした。
「さてと、もうそろそろ時間だな」
今日はWhiteのメンバーと打ち合わせが入っていた。
時計を見ると、もうすぐ約束している時間である。
「おはようございます」
デスクで仕事していると莉奈の声が聞こえて顔を上げた。
「おはよう。会議室取ってあるから行こうか」
俺はいつものように3人と対面の椅子に座った。
「はい、お茶あげる」
ペットボトルのお茶を3人分冷蔵庫から取ってきて渡した。
「あ、ありがとうございます」
3人はそれを受け取ると一口飲んだ。
「じゃあ、早速だけど打ち合わせの内容に入っていくね」
「「「はい」」」
今日のメインの話はWhiteのワンマンライブについてである。
「ワンマンライブの日程と箱が正式に決定した。この前言ったこととは違う部分もあるからよく確認しておいてくれ」
俺は3人に印刷した資料を手渡して言った。
「分かりました」
「いよいよかぁ」
「緊張するね」
3人は期待と不安は入り混じったような表情を浮かべていた。
日程は来月末ということで正式決定し、すでに動きだしている。
「キャパは初めてのワンマンということも考慮して400人にしておいた」
「そんなに……」
莉奈は驚いた様子で言ったが、俺としては割と控えめな数字である。
初めてのことなので保険をかけておいた。
「チケットの販売はうちのホームページではすでにスタートしているから、皆んなのS N Sでも宣伝して欲しい。後で販売元のリンクを送る」
「分かりました」
現段階ではチケットは4割ほど売れている。
ここから莉奈たちの宣伝込みで8割ほどは売れると見込んでいる。
散々、電卓を叩いて計算したので、問題ないだろう。
「公式アカウントの方では俺が宣伝しておくよ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、もう一つなんだけど、Whiteのテレビ出演がもう一度決まった」
セントレルテレビの向井さんが動いてくれて、ついさっき正式決定のメールがあった。
「す、凄い……」
「ちゃんと2回目も決まった」
「さすが、四宮さんです」
3人はそれぞれの感想を口にした。
またしばらく毎日更新が出来るように頑張ります。
別作品の書籍化作業と重なって来ていますので、更新出来ない日があるかもしれないですがご容赦頂ければ幸いです。
【作者からのお願い】
『面白い』『続きが気になる』という方は☆☆☆☆☆での評価やブクマへの登録をお願いします。
皆さんの応援がこの作品の力になります!!
執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。