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エッセイ集

続・鬼滅の刃はなんでこんなにヒットしてるの? その理由を考えてみた

作者: 水源

 さて、映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」は10月16日から18日までの3日間で記録した約46億円という興行収入は、同期間の日本を除く全世界の映画興行収入を超えているそうですね。


 まあこれには、コロナ禍と動画配信サービスの普及で、全世界の映画業界が客入り減少に苦しんでいるというのも理由にあるのでしょうが、日本映画の歴代記録である『千と千尋の神隠し』の308億円や『君の名は。』の250.3億円にどこまで迫るか、そして追い抜きどこまで伸びるかといった次元で語られたりもしているらしいです。


 ”鬼滅の刃はなんでこんなにヒットしてるの? その理由を考えてみた”で、理由を


 1.アニメの完成度の高さとアニメ動画配信の普及。

 2.そもそも日本人はむかしからチャンバラが大好きである。

 3.女性作者であることと、子供向けゆえに、萌えに頼っていないこと。

 4.わかりやすい王道の物語の構造と裏切られない努力の成果。


 としたのですが他にも理由はありそうです。


 5.そもそもここ20年くらい「売れないからやめとけ」と言われて来た要素がガッツリ詰まっていて、むしろそれが根幹であるがゆえに新鮮に見えた。


 ”設定としてはよくある話””正直絵柄も古いというか下手””初めに身内がほぼ全滅””時代背景が大正というマイナーな時代””最初は戦いなどもあまりなく修行ばかり””全体的に話が暗い””鬼を倒すなんて古すぎる””いまどき時代物ははやらない””明確に主人公が好きなヒロインが不在””主人公の属性が派手な火とか雷じゃなくて地味な水”


 などあげればきりがありません。


 しかし、ここ20年くらい「売れないからやめとけ」と言われて来た要素であるため、ほかの漫画家が書かなかったこともあって新鮮に見えたのだと思います。


 ラノベで2010年代まで、ファンタジーは売れないということで”ゼロの使い魔”くらいしか、ファンタジー作品がなかったのに、なろう路の異世界転移転生作品が大ヒットしてるのは皆さんご存じですね。


 ファンタジーラノベ初期に大ヒットしたスレイヤーズも当時の王道ファンタジーを皮肉った作品で”主人公が魔法使いの女””やたらと軽いノリのファンタジー””王子がひげ面のおっさん””主人公が努力しないで最強”などはとても受けると思われて、いなかったのですが実際には大ヒットでした。


「高い技術力でセオリーの真逆を全力でいく」とそこはブルーオーシャンなので大ヒットすることがあるわけですね。


 6.世の中は平和に暮らしている人が多いのに主人公などが運悪く、悲惨な状況に巻き込まれたことに対する状況に対しての共感


 鬼滅の刃の世界は進撃の巨人の世界のように、人類が滅亡しそうとかいうことはなく、たまたま運悪く鬼の被害者になった家族とか生き残りが鬼殺隊になるわけですが、今のご時世自分もいつ何時、不幸に巻き込まれて、転落するかわからないという不安を皆抱えていると思います。


 そういった意味では炭次郎たちのことを他人事と笑って済まられない、何かがあったんではないかと。


 7.禰豆子に対する女性の共感


 現代の女性は「周囲から見捨てられることにたいする不安」や「孤立無援感」などが強めの傾向があり、それを緩和させるために周囲の人々の援助、愛情を渇望することが多いようです。


 禰豆子は、もともとは家族思いの大人しくて礼儀正しくて優しくて非の打ち所がないいい子なのですが、たまたま鬼舞辻無惨の襲撃によって運悪く鬼にされ、排斥される立場になってしまったわけですが、鬼になっても兄の炭治郎に命がけで愛され大切にされている、という特に女性にとってあこがれの理想的な環境なわけです。


 これは第70回(2013年4月期)JUMPトレジャー新人漫画賞の佳作を受賞したものの、読み切り作品が数度誌面に掲載されるがヒットせず、連載会議用の連載ネームがなかなか通らない時期が続き、もうあとがない状況に陥ってから書いたのが「鬼滅の刃」で、「見捨てられる不安」「消えてしまう恐怖」を強く抱いていたからかもしれません。


 実際に「鬼滅の刃」もアニメ後半までは打ち切り候補だったようですので。


 8.原作の巻数が極端に多くないから最初から読み始める新規読者が買いやすかった


 ワンピースみたいに長々続いていると最初から読み始めたいという、読者はなかなかいないでしょうけど、鬼滅の刃くらいの巻数でしたら最初から読むのにそこまで大変じゃないですからね。


 いや私はキングダムを蔦屋のレンタルコミック&整骨院の置き本で、半月ほどで全部読みましたけど。


 9.結局は運


 ヒットの下地となる要素はあっても、結局は時の運というのが一番強いでしょう。


 小さな成功は失敗する要素を減らせばヒットを狙えますが、創作で確実に大成功する方法なんてないのですから。

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― 新着の感想 ―
[一言] この漫画は、ストレスを感じるくらいに合わなかったので、ヒット理由の考察はとても助かりました。 共感以前に、男の子主人公の行動・思考が完全に女の子なのがしんどいです。 プロット段階で行き詰ま…
[一言] 「引き延ばさなかった」これが特に大きかったと思います。とにかくスピーディにサクサク進んでいって重要キャラの過去話すらあっさり一話で片付いたりしたのも一因と思います。長引かせすぎで話がまともに…
[一言] 腐に頼り過ぎず、女性支持を得たのも良かったのではないかなとも思います。 鬼の設定が効果的だったのだとも思います。 鬼をキッチリ倒す事で勧善懲悪と鬼の心も救う事が両立できる。 なろうだと、ざま…
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