表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大江戸コボルト【WEB版】  作者: ふーろう/風楼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

210/216

決戦


 それからは鍛錬の日々が続き……何事もなく七日となり、ついに決戦の日を迎えることになった。


 具足を着込んで装備を整え江戸城に向かうと、城内各地に戦力となるダンジョン攻略者、幕府軍、エルダー達が集められていて……点呼や連携の確認が行われていた。


 いきなり全員でダンジョンに突入することは不可能なので、各地にばらばらに配置し、近い順番にダンジョンに送り込み……そうやって集まった数百にもなる戦力をダンジョンに送り込むことになっている。


 その数はいくらなんでも過剰じゃねぇかと思われそうだが……足りねぇよりはよっぽど良い、余ったら余らせておけば良い……演習と思えばそれで問題ねぇだろうと、そういうことになったらしい。


 そして俺達はダンジョンでの経験と符術の第一人者であるクロコマの仲間であるということから先鋒を務めることになり……江戸城の天守台、地下最奥の最終ダンジョンの入り口前に陣取ることになった。


 具足姿の俺、ポチ、シャロン、クロコマ、ボグにペル、そしてクロコマの弟子たる符術士が人間三人、コボルト四人の計七人。


 エルダー達は俺達に続いて突入する組として後方に控えていて……エルダー達が入ったなら御庭番衆、他のダンジョン探索者、そして幕府軍が突入するという手筈になっている。


「よ、よ、よ、よしよしよし、い、行くぞ、行くぞ、狼月!!」


 そんなダンジョンの入り口を睨みながら吉宗様の合図を待っていると、がちがちに緊張したクロコマがそんな声を上げてくる。


「おう、落ち着けよ、お前がとちっても他がなんとかしてくれるんだからよ」


 しゃがみ込みクロコマに視線を合わせながら俺がそう返すと、クロコマはがちがちに緊張したままこくりと頷く。


「落ち着けって……なぁに、やばくなったら全員でけつまくって逃げりゃぁいいだけさ。

 それで恥はかくかもしれんが命は残る、今の世の中命あれば上等で……その恥も美味い飯を食っちまえばすぐに忘れられるだろうさ」


 続けてそう言ってクロコマの頭をわしわしと撫でてやって……ついでに同じく緊張しているポチ、シャロンを撫でて……何故か羨ましそうにこちらを見ているボグと、鬱陶しそうにこちらを見ているペルも撫でてやる。


 そうしてなんとか動ける程度に緊張をほぐしてやったところで……後方、天守台入り口に設営された本陣から、突入の機を知らせる鐘の音が響いてくる。


 一度、間を開けて二度、だんだんと間隔を短くしながら三度四度。


 それを受けて立ち上がった俺は黒刀を引き抜き……真っ先に切り込むために先頭に立つ。


 そして鐘の音が間隔を置かずに連打されていって……じゃぁんと一度大きくなったなら、連打が終わり、それを合図として俺がダンジョンの入り口へと駆け込む。


 暗転、歪み……いつも通り視界が奪われ、そして少しずつ光景を取り戻していって、何もなくただ広く、硬い床はしっかりとあるが、あまりにも高すぎて天井があるのかねぇのかも分からない灰色一色の世界に立ち……そんな世界に勢ぞろいしている魔物の群れが視界に入った瞬間、全力で駆け出す。


 クロコマ達が弾力の符術を張り、敵を寄せ付けねぇ陣を整えるまで時間を稼ぐ必要があるからで……大鬼や伊勢海老、猪鬼に大アメムシ、見たことねぇような獣型、人型、俺が知っている生物ではたとえられねぇような容姿をしたばけもん共が勢ぞろいしている場へと突っ込んでいく。


 勢ぞろいした大物連中はまるで俺がダンジョンに入り込んだ瞬間目覚めたと言わんばかりの困惑した様子を見せていて……そして俺を見つけるなり、相争うことなく一直線にこちらに向かってくる。


 他のダンジョンで連中は食い合っていたが、どうやら最終ダンジョンではそうじゃぁねぇらしい。


 お互い敵対せず邪魔せず、邪魔にならねぇよう気遣っているような素振りまで見せていて……小物と大物の頭の出来の違いと見るべきか、全てのダンジョンが合わさった最終ダンジョンだからこその現象と見るべきか。


 その理由を考える間もなく息を合わせた連中が攻撃を……まだまだ俺達の間にはかなりの距離があるのだが、それぞれ個性的な咆哮を上げながら、液体やら爪やら何かを飛ばすってな遠距離での攻撃を仕掛けてきて、それが戦闘開始の合図となる。


 どれもこれも黒刀や具足で受けられそうな攻撃だがあえて受けねぇ、この先戦いがどうなるか分からねぇ状況で変に破損させても面白くねぇ、駆けながら体を傾け姿勢を低くし、攻撃を避けながら距離を詰めていく。


「狼月さん、あまり前に出すぎちゃ駄目ですよ!!」


 後方から響いてくるポチの声、同時に小刀の斬撃が飛んできて、敵の攻撃をぶつかり合っての相殺をしていく。


「クロコマが仕上げたらすぐに下がるさ!!」


 咆哮が響き渡る中で、そんな声を上げたとしてポチ達に聞こえてくれるかは分からねぇが、それでもそう声を上げて……そうして前に進み続け、同じく前に進み続けてきた猪鬼に向けて黒刀を振るう。


 猪鬼も同じように手にした斧を振るってきて、黒刀を打ちのめそうとしてくるが、ぐいと力を込めることで軌道を逸らしてそれを避ける。


 そうして猪鬼の腕を斬り付けて、そのままとどめを刺そうと斬り返そうとするが、大鬼がそれを邪魔するかのように棍棒を振るってきて、仕方なしに床を蹴って飛び退き、一旦距離を取る。


 距離を取ったなら黒刀を構え直し、猪鬼と大鬼二体を同時に正面に捉え……大ぶりの連中の攻撃を避けながら黒刀でもって連中に斬り傷を増やしていく。


 ここで倒し切る必要はねぇ、時間を稼げば良いだけ。


 そう考えながら斬撃は軽く、だが確実に痛むように浅いながら長い斬り傷を作るようにし……これでもかと猪鬼と大鬼をいたぶってやる。


 すると二体の鬼が我慢の限界に来たのか激昂して、がむしゃらってな具合に武器を振り回してのでたらめな攻撃を仕掛けてきて……それを避けるために大きく全力で飛び退く。


 直後、ポチの小刀斬撃、シャロンの毒煙玉、そして追いかけ突入してきたエルダーエルフの放った矢が俺とすれ違う形で敵陣に突っ込み……連中が上げていた咆哮が悲鳴や怒声に変わっていく。


 それでも猪鬼なんかは痛みに耐えながら斬撃を放ってきて、俺に向かって放たれたそれを体を反らせて避けたなら、お次は奥の方で様子を見ていたらしい大アメムシが飛び上がって大砲の砲弾かのように突っ込んできやがるので、それを避けるために地面を大きく蹴り飛び……床に転げて、ごろごろと転がって……その勢いで起き上がりこぼしの如く立ち上がり、両手両足を全力で振ってポチ達の方へと駆けていく。


 そうやって正面に捉えてみると、既に符術士が横一列に展開していて、床のそこら中に符を張り付けていて、横一列、かなり長い弾力の壁が構築されているようだった。


 クロコマの符術の弾力は敵だけを弾く、という訳で何も考えずに駆けて駆けて壁の中に突っ込み……逃げる俺に追撃を仕掛けてきた猪鬼と大アメムシだけが弾かれ、なんとも悔しげに壁に張り付く。


「おらぁ、稼ぎ時だぁ、御庭番ばかりに手柄とられてんじゃねぇぞ!!」


 そう声を上げたのは毛皮と鉄鎧というなんとも不似合いな組み合わせの装備をした、見るからにダンジョン探索者だって具合の大男だ。


 直後、同じような格好の連中が駆け出して……それぞれの攻撃方で、槍や鉄の棒、魔力なのか何なのかよく分からねぇ光をまとった杖なんかで、壁に張り付いた連中に攻撃を仕かけ始める。


 それに続いて幕府軍が次々とこちら側に入ってきて……、


「陣構築始めぇ!!」


 との掛け声を受けて、符術の壁の中での本格的な陣造りが開始となるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

以下の画像をクリックorタッチで特集ページに飛ぶことが出来ます!


ji6mlm4hggrajm2zh3cc6x8acbhm_9tf_160_1nq
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ