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ぶっ放し


 岩山のダンジョンとしてはまだ始まったばかり、先は長くいくつもの分かれ道があるのだろう。


 そう考えると焦ってもしょうがねぇ訳だが、だからといってもたついていると連中がどんどん食い合って大きくなっちまう。


 そういう訳である程度足早に、無防備になりすぎねぇ程度に前方へと駆け進んでいって……姿を見せたワニ達をエルダーとの連携で倒していく。


 この広さの空間だ、大ワニが居るとばかり思っていたが、どうやらまだ大ワニに成れたもんは多くねぇらしい。


 小鬼達はあんな短時間で増えてたのになぁと思うが……まぁ、迷宮の混ざり具合とか、そこら辺の事情が影響してのことなんだろう。

 

 あるいは俺達がさっさと奥へと進んで成り上がるための食料……小鬼や伊勢海老をさっさと倒しちまったってのも影響しているのかもしれねぇ。


 どうやら同族で食い合ったりはしねぇようだし、先手を打って餌を無くしちまうってのも悪くねぇのかもしれねぇなぁ。


 なんてことを考えながらワニを駆除していき、更に奥へ奥へと足を進めていくと、扇状に空間が広がっていって、かなりの広さとなった辺りで……大ワニが鼻息を荒くしながら俺達のことを待ち構えている姿が視界に入り込む。


「……待ち構えているのを見て、連中も作戦みたいなもんを練るようになったかと一瞬思ったが……そもそもあの体の大きさじゃぁ自由に移動することもできねぇのか。

 出来るだけ広い、存分に暴れられる空間で待ち構えるのが一番で……もしかしたら狭い部屋や通路で大きくなっちまって、どうにもならなくなって圧死した、なんてのもいたかもしれねぇなぁ」


 その姿を見て俺がそんなことを言っていると、ドワーフ達が抱え大筒を手に前に進み出て……にやりとした表情でもって、自分達に任せておけと、そんなことを伝えてくる。


 ならばそうするかと俺達が足を止めて様子見の構えを取っていると、ドワーフ達はずんずんと足を進めていって……それを見て大ワニが凄まじい咆哮で空気を震わせながら大きな口を開けての突撃をかましてくる。


 そんな大ワニに対しドワーフ達は怯むこと無く後ずさることなく、大股を開いて堂々と立って待ち構え……良い距離まで引き付けたなら一斉に抱え大筒の引き金を引いて轟音を響き渡らせる。


 大ワニの咆哮なんてものはあっという間にかき消され、直後に無数の弾、大筒の中に押し込まれていたらしい鉛玉が物凄い勢いで大ワニに襲いかかり、大ワニの口の中や顎、肩の辺りなんかに直撃し、口の中は大出血、肩の辺りも鱗が割れて割れた鱗が肉に突き刺さり、ひどい有様となっちまう。


 それはもう本当に見てらんねぇ程の有様で、辺り一面に広がる血から見ても決着かと思うほどのもんだったのだが、大ワニが一度口を閉じてもごもごと動かし、改めて口を開くと出血が綺麗さっぱりに止まっていて……一斉砲撃を受けて足を止めていた大ワニは、再度の突撃をかましてくる。


 それを見てすぐさまエルフ達が矢を放ち、俺達もそれぞれの武器を構えて前に出ようとするが……それよりも早くドワーフ達は、円筒状の何か……あれが実包ってやつなのか、そんなものを取り出し、大筒を中程からぱかりと折り……そこに詰め込んで折ったのを元に戻し、そうして再び引き金を引く。


 最新式の銃を真似して作ったとか言っていたが、まさかあんなに簡単に装填が終わるとは……大筒の装填が銃と同じ感覚で出来ちまうなんて全くなんて悪夢だよと、そんなことを考えているうちに、二度目の大筒斉射を食らった大ワニが全身を跳ねさせ、悶えのたうち、ぐったりと倒れ込む。


「銃感覚でぶっ放せて、威力が絶大な大筒とは……怖えぇもん作りやがったなぁ。

 これを並べて連射されたら幕府の軍でもやられちまうんじゃねぇか?」


 ぐったりと倒れ込み血を垂れ流し、まず間違いなく死んだ大ワニを見やりながら俺がそう言うと、ドワーフの一人が言葉を返してくる。


「そんな便利なもんでもねぇよ、装填が速いったって砲身の強度には限界があるんだからそこまで連射はできねぇし、筒も弾も無駄に重いから行軍にも向かねぇ。

 量産しようにもし辛いし、この弾……散弾と名付けたが広範囲に散らばって中々の殺傷力を発揮する反面、単体での威力はいまいちだからなぁ。

 恐らくだが狼月、おめぇの着物を貫くことすらできねぇぞ、これ」


「……仮に着物が弾を防いで受け止めたとして、衝撃はそのまま通ってくるわけだしなぁ。

 全身着物で覆える訳でもねぇんだし……普通に死ぬと思うぞ、ぶっ放されたら。

 ……だがまぁ確かに、この大筒量産するくらいなら、最新式の銃を量産した方がいろんな状況に対応できそうではあるのか……。

 そうなるとますます刀の価値が無くなっていく訳で……なんとも夢のねぇ話だなぁ」


「はっ……お前そんな黒刀持っておいてよくも言えたな。

 気付いちゃいねぇんだろうがそれ、今にも燃え上がりそうなくらい魔力を吸い上げてるぞ。

 その刀、敵を斬り結ぶことで燃えるとか言ってやがったが、俺が見た所そんなことをしなくてもただ魔力のある場所にいるだけで、魔物がいる場所にるだけで、魔物が死んだ瞬間に立ち会うだけで、魔力を吸い上げるんじゃねぇかな。

 魔力と炎をまとった折れぬ刀……そんなもんで斬りつけられたなら件の黒船だって真っ二つになるんじゃねぇか?

 くわばらくわばら、その刀の方がよっぽど恐ろしいわ」


 そんなドワーフの言葉を受けて手にした黒刀を見やると……刀身が少しだけ赤みを帯びていて、確かに今にも炎を吹き出してしまいそうだ。


 こんな敵もいねぇ所で炎を出されても困るんだがなと、そんなことを考えながら周囲を見渡していると、エルフもドワーフもポチ達も周囲を警戒していて……俺もまたそれに続いて警戒体勢に入る。


 大ワニの死体が消えてねぇ、ということはまだここでの戦闘は終わっていねぇと、そういうことのようだ。


 ワニがいるのか、二匹目の大ワニがいるのか……さて、どっちだろうなとそんな事を考えながら周囲を見回した俺達は、見える範囲に動きもなく気配もないことを受けて……この先にいるのだろうかと、警戒しながらもそれなりの早足で奥へと進んでいくのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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