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大蜥蜴?


 翌日。


 残念会を終えた俺達は気持ちも新たに第七ダンジョンに挑むことにし……新たな気持ちでもって新たな作戦を考え、それを実行することにした。


 そもそも前回の攻略ではろくに前に進むことが出来ておらず……第七ダンジョン本来の光景である岩山にたどり着くことすら出来ちゃいねぇときたもんだ。


 小鬼と伊勢海老に翻弄されて、ろくなドロップアイテムも持ち帰れず、これといった攻略法を編み出すこともできねぇで……無策に突っ込んだとしても前回の二の舞いだろうと考えたからだ。


 これでもかと小鬼がいて、伊勢海老がいて……それらが食い合ってどんどんと強くなっちまって。


 それを防ぐにはどうしたら良いかと考えると、小鬼が小鬼のうちに、伊勢海老と食い合わないうちに攻略するしか手はなく……そういう訳で俺達は組合全員での攻略を決断したのだった。


 俺、ポチ、シャロン、クロコマ、エルダードワーフ三十五名にエルダーエルフ二十名……今はいねぇが、数日後にこっちに来るというボグとペルにも、到着次第に参戦してもらうつもりで……とりあえず今日は俺達とエルダー達での攻略となる。


「いけいいけいけいけ!! どういう訳か知らねぇが連中が食い合うのは俺達がダンジョンの中にいる時だけだそうだ!!

 駆けて駆けて食い合う前に倒しちまえ!!」


 隊列を組んで順番にダンジョンに入っていき……全員がダンジョンに入ったのを確認した俺がそう声を上げると、大槌を構えたエルダードワーフ達を先頭に、弓矢を構えたエルダーエルフがそれを追いかける形で駆けていく。


 俺達が残念会をしている間に、江戸城の職員達が調べたところによると、連中はダンジョンに誰かがいる時だけ食い合いを行い……食い合って強くなった個体を放置して帰還したとしても、ダンジョンが無人となった時点で吐き出しと似たような何か……仕切り直しというか、初期化というか、そんなものが行われて元の小鬼へと戻りやがるらしい。


 元々ダンジョンの魔物は定期的に復活していることから、ダンジョン内では初期化に近いことが行われているんだろうと、そんな仮説があったそうで……中鬼や鬼へと成った小鬼が元に戻るという現象を確認したことにより、それは定説ということになったようだ。


 そういう訳で初期化した状態から一気に、数でもって奥までごり押すというのが俺達が考え出した新作戦だった。


 小鬼も伊勢海老もそこまで強い魔物じゃぁねぇ。


 エルダードワーフの大槌やエルダーエルフの弓矢で、一撃加えてやりゃぁそれで倒せる相手で……一団の後方を駆ける俺達の前方には、その想定通りの光景が広がっている。


 轟音鳴らす大槌が小鬼を粉砕し、伊勢海老の甲殻を砕き、瞬速の矢が小鬼の頭を穿ち、伊勢海老の甲殻の合間を穿通し……。


 手数が圧倒的で、進軍速度も速く、鎧袖一触としか言えない光景が目の前に広がっていて……あっという間に前回撤退した地点まで辿り着き、その勢いのまま奥へ奥へと進軍していく。


 当然分かれ道もあったのだが、先頭のエルダードワーフは迷うこと無く道を選んで駆け進み、後方のエルダーエルフ達が地図を作りながらの指示を出し……迷っている暇などないとばかりに、ダンジョンを蹂躙していく。


 ……自分達だけでダンジョンを攻略したいという気持ちが無かった訳ではねぇが、いつダンジョンが無くなっちまうのか分からねぇ現状、もたもたしていられねぇし……仕方ねぇことなんだろうなぁ。


 なんてことを考えながらエルダー達を追いかけながら駆けていると、先頭集団が手を挙げてこちらへの合図をしてから駆ける速度を緩め始め……それを受けて俺達も速度を緩めて、足を止めて……そうしてから周囲を見渡す。


「なるほど、これが本来の第七ダンジョンの光景か」


 誰かが恐山のようだと評したその光景は、草木が一切ねぇ白岩だらけのもんとなっていて……その白岩はどこからか落下してきて激しく砕けたのか、あちらこちらを割れたばかりのガラス玉のように尖らせていて……触れることはできねぇが恐らくは相当に硬い岩なんだろうなぁということが分かる。


「岩山……確かに岩山か。

 岩が白すぎるやら尖りすぎているやらで、違和感しかねぇが……まぁ、異界の光景ってのはそんなもんか。

 で、確かここに出る魔物は……」


 その光景を見やりながら俺がそう声を上げると、続く形でポチが口を開く。


「大蜥蜴、ですね。

 その大口で噛みついてくるのが主な攻撃で……爪で引っ掻いてきたり尻尾で叩いてきたりするそうですが、そちらは大したことないそうです」


「大口で噛まれると鉄鎧すらもかみ砕かれるそうですから、十分気をつけてくださいね」


 更にシャロンがそう続いて……クロコマはその身をぶるりと震わせて恐れおののく。


 そんな中エルダー達はトカゲ相手ならなんとでもなると考えているのか、なんとも気楽そうな態度を見せていて……そんな状態のまま俺達は、駆けはせずに慎重に前へと進んでいく。


 ここから先は未知の領域、本当に大蜥蜴がいるのかも分からねぇし、小鬼達との食い合いが起きている可能性もある。


 今日でダンジョンを突破するつもりはなく、出来るだけの情報を集めるつもりで……情報を集めたなら後はさっさと、無事に帰ることを考えるべきだろう。


 なんてことを考えながら前へと進んでいると、またもエルダードワーフからの合図があり……その直後ずずずずと音を立てながら大蜥蜴が前方から這い出てくる。


 ごつごつとした厳つい鱗に長い尻尾、その口は平たく前に長く……予想していたよりも大きく、そんな口の横脇からは何本もの鋭い牙が見えている。


「……おい、あれ蜥蜴か? 本当に蜥蜴か?

 なんか……なんか違わねぇか? 蜥蜴に牙はねぇんじゃねぇか……?」


 横に広がるエルダードワーフとエルダーエルフの合間から視線を通した俺がそんな声を上げると……同じようにして大蜥蜴の姿を観察していたポチ達も、俺と同じことを考えているのだろう「ですよねー」と言わんばかりの視線をこちらに向けてくる。


 そんな中シャロンだけが何か思い当たることがあるようで、顎に手をあて首を傾げての考え事をして……数秒後、ハッとした顔になって大きな声を張り上げる。


「あ! あれワニですよ、ワニ!

 大陸の川に棲んでいるっていう、人食い大蜥蜴!!

 大きなワニになると象さえも食べてしまうとかで……とっても危険な生物らしいと本で読みました!」


 その声を受けてエルダードワーフ達がわずかに怯み、エルダーエルフ達が大いに怯み……そして俺達はエルダー任せにもしてられねぇ、ここが温存した体力の使い所かと、エルダー達の隙間をすり抜けて前へと進み出るのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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