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まさかの……


「弾力の符術を集約し、それによって礫を弾き飛ばす……ようは鉄砲を符術で再現したというのが、この弾力礫の符術よ。

 一度外してしまったが威力は見ての通り……鉄砲どころか下手な大砲にも負けん程になっておるぞ」


 伊勢海老が倒れ伏し、光になって消えて伊勢海老と……それと恐らく伊勢海老にやられた小鬼の分を含めたドロップアイテムが、どさどさと落ちてきている中、大きく胸を張って、張りすぎて胸を反り返させたクロコマがそんなことを言ってくる。


「確かに威力はすげぇな……ある程度の連射も出来るみてぇだし、命中精度が多少問題あっても、そんなのは気にならなねぇくらいのものではあるなぁ。

 こいつがあれば今後の伊勢海老はすべて一撃だろうし……このダンジョンはかなり楽に攻略できそうだな」


「う、うむ、そうだな……楽にはなるだろうな」


 そんなクロコマに俺がそう返すとクロコマは、鼻筋にしわを寄せての微妙そうな顔をし……そんなクロコマを見て俺は、半目をクロコマへと送る。


 するとクロコマは俺から視線をそらして……そんなクロコマに俺は、淡々とした声で問いかける。


「欠点があるんだな? 具体的にどんな欠点なんだ?」


 するとクロコマは胸を張るのをやめて……両手をもじもじとさせながら言葉を返す。


「銭がな……かかるというか、触媒が高価でなぁ……。

 具体的に言うとだなぁ……うむ、狼月にも分かりやすく言うと、大体一発が業物の刀が一振りという所かな」


 そうクロコマが言った瞬間、ポチとシャロンが全身の毛を逆立たせて、尻尾をぴんと立てる。


 そして俺はクロコマから視線を外し、今しがた落ちてきたドロップアイテムへと視線をやり……そこにある鉄くずと石ころの群れを見やる。


 鉄くずは恐らく小鬼の分だからどうでも良いとして……石、恐らく石、なんらかの鉱石なのか、ただの石なのかは分からねぇが……あれはどれくらいの価値があるんだろうか?


 一発外して二発目で当てて……業物の刀が二振り分の価値があるんだろうか……?


 もしかしたらまたあの石が世にも珍しい品で高値がつくということもあるかもしれねぇが……そろそろダンジョン産の品々も国内に行き渡りつつある。


 そんな状況でどれ程の値が付くやら……なんとも恐ろしい気分になっちまうな。


「……とりあえずだ、今回の符術にかかった銭は経費ってことで、俺達全員で負担するぞ。

 それだけ高価だと流石にクロコマだけに負担させる訳にはいかねぇからな。

 ……で、クロコマ、その符術は強力かつ便利なのは確かだから使うなとは言わねぇが、俺達を破産させる勢いでは使ってはくれるなよ?」


 考えをまとめた俺がそう声を上げると、クロコマは笑みを浮かべながらこくこくと頷き、ポチとシャロンも毛を逆立たせたままではあるが頷いてくれて……そうして俺達は目の前のドロップアイテムの側へと近寄り、一体どんな石なのかと持ち上げたり、匂いを嗅いだりして、自分達なりに鑑定を試みてみる。


「やっぱ……海産物のドロップアイテムだからには海関係、だよな?

 今までがその魔物やダンジョンに関係するような品々だったし……海の中の石、か?

 他にもここに挑んだ連中はいたんだろう? そいつらがどんなドロップアイテムを持ち帰ったのかとか、そこらの情報はねぇのか?」


 俺がそう声を上げると、鼻をすんすんと鳴らしていたコボルト達は首を左右に振って……ポチが代表する形で言葉を返してくる。


「いえ、ドロップアイテムの詳細はそのままその人の所有資産とかの話に繋がるので、犯罪抑止の観点から秘匿されているんですよ。

 知っているのは江戸城の一部の方々だけ……たとえば深森さんとかなら知っているはずですけど、聞いても教えてはくれないでしょうね」


「……まぁ、江戸城に戻った時点で価値は分かるんだから、聞く必要もねぇけどなぁ……」


「そうですね、僕達の鼻でも正直、よく分からない感じですし、価値に関しては江戸城に戻ってからということになるでしょう。

 とりあえず全部拾ってしまって……この辺りを調べ終えたなら先に進むとしましょう」


 そんなポチの言葉に俺達は頷いて行動を開始し……全部のドロップアイテムを拾い、背負鞄にしまったなら、改めてダンジョン内部をよく調べることにする。


 見えない壁や床に触れて、どこに道があるのか、先がどうなっているのかを軽く確認し……そして伊勢海老の足を持って小鬼達が駆けていった先ともう一つ、別の通路があることを確認した俺達は、どうしたもんかなぁと頭を悩ませる。


 ……あの小鬼たちを追うべきか否か。


 そもそもあの足はどうなったんだろうか? 小鬼が持ち去り食べたとして……本体が消えたら、胃袋の中の足も消えるのだろうか?


 それとも小鬼と融合でもして、新たな存在というか新たな魔物となった扱いなのか……そうして際限なく強くなっていくのか、俺達がダンジョンから出た時点で無かったことにでもされるのか……。


 あれこれ話し合った末に結論としては確かめてみるしかねぇだろうとなって、俺達は小鬼達が駆けていった先へと足を進めて……それからしばらくは何事もなく海のダンジョンの道が続くことになる。


 またぞろダンジョンが変化するというか、他のダンジョンになるというか、そんなことが起きるかと思ったがそんなことはなく、魔物が出ることもなく平穏無事に進むことが出来……そして次の部屋が俺達の目の前に現れる。


 そこではまた小鬼と伊勢海老がやりあっていて……以前と違ぇのは小鬼が圧倒的に優勢……伊勢海老が一方的にやられているってことだろうか。


 足を一本食べて強くなって、それで力関係が変わったってぇことなのかねと、通路からその様子を見守っていると……足を奪って強くなったらしい三匹の小鬼が伊勢海老を倒し……今度は持ち逃げするのではなく、その場でばりばりと甲殻ごと伊勢海老を食べ始める。


 それを食べれば恐らく小鬼は強化される訳だが……俺達は目線でもって会話し、あえてそれを見逃すことにし……小鬼がどうなるのか、どういう結果をもたらすのかを確かめることにする。


 伊勢海老を食べて食べて……どう考えてもその小さな体にゃぁ入れねぇだろうというくらいに食べて、すると驚いたことにどんどんと小鬼の体が膨れ上がり……鬼によく似た、中鬼とでも呼びたくなる存在へと化けてしまう。


(お、おいおいおい、魔物ってのはあんな風にして成長するのかよ!?

 そ、それともダンジョンの魔物だけがああなのか!?)


 そんな光景を見た俺は、心中でそんな声を上げてから……黒刀を構えて、中鬼との戦いに備えるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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