ブタは、精力剤を作る。
此処は、ロー専用の研究室であった。
薬学を勉強し始めて、採取した生薬が溜まってきたので、土魔法『硬化』で砂を固めた物を積み上げて作ったのだ。もちろん、繋ぎ目も土魔法と水魔法により泥を作り出し埋めて強度を高めている。
初めは、魔力コントロールが難しく、大きな土の塊を作ってしまった。少しずつコントロールをし、圧縮して硬化していったのだ。建物の中には、生薬を保管するための棚や机と椅子も作り上げて、全て自作であった。
両親は、これを見て驚いていたが、クロノスが同じ事をすれば、もっと見栄えもいいであろう。
私は、そこは気にしなかった。
なにより、自分の隠れ基地を作った事に満足していた。
そして、研究室の外にも作業台と、窯を用意してあるので、いつでも解剖や煎じ薬を作ることが出来るのだ。そして、空間魔法『収納箱』からムスクディアーを取り出し、作業台に乗せていく。
解体用のナイフに水魔法『水刃』を纏わせるのであった。
こうする事で、切れ味が増し、切ったところから洗浄されるので、切り口も見えやすいのであった。そして、早々と血抜きをするのであった。そこから、例の睾丸に取り掛かるのであった。
しかし、注意点があるので、そこは気を付けないといけないのであった。
生薬図鑑にも載っていた匂いである。
そのため、風邪魔法『つむじ風』を起こし、匂いを空へ促した。もちろん、無属性魔法『無嗅』により、嗅覚の遮断を忘れないのであった。
そのおかげか、難なく取り出す事ができた。それをゆっくりと乾燥させるのであった。それから、十分に自然乾燥を終えた頃であった。
『ふふふ、ようやく完成したぞ。これを、補腎薬に加えてと、良し。量も少なめじゃないとな。』
ムスクディアーの睾丸を少なめにしないと、興奮作用や精力増強の効果が逆に鎮静効果が、出てくるためである。一番の注意点である。
補腎薬とは、簡単にいえば、老化防止の薬である。性欲減退も、加齢や疲れからくる事があるので、付け加えたのだ。
私は、達成感に満ちていた。これで、お父さんを賢者から卒業させてあげられると。
彼は、クロノスが健全な精力の持ち主とは、まだ知らない。
なぜなら、ローがいない時や魔法により、情事の最中は、きちんと隠していたからだ。それにより、彼は余計に不能と勘違いを続けていたのだ。
そして、出来た精力剤を持ち、クロノスに渡すのであった。
『お父さん。これを飲んでください。最近、疲れてそうなので。夕食後に服用してくださいね。』
『私のために作ってくれたのかい?ありがとう。それじゃあ、夜に頂くよ。』
私のミッションは、達成したのだ。
しかし、これだけでは不安が残るので、より成功率いや性交率を上げるために、森へ出かけるのであった。
許可が下りたおかげで、兼ねてから目を付けていたポイントへ向かっていた。
それは、森に流れている川であった。今までは、川と言っても小川くらいで、大きな川へは来たことがなかったのだ。水辺は、他の動物や魔物も多く来るので、禁止されていたからだ。
森を抜け、ようやく川にたどり着く。
まずは無属性魔法『探知』をかけ、当たりの安全や近くの水中に、例の物がいるか確認するのだった。水中には、多くの生物がいるようなので、事前に作っておいた釣り竿を空間魔法『収納箱』から取り出すのであった。
念のため、無属性魔法『隠密』・『探知』をかけて、釣りを始めるのであった。
『しかし、綺麗な水だな。これなら、素潜りの方が早いかもしれないな。』
釣り竿を入れて、数分すぐに糸が引かれるのが分かり、釣り上げると、そこにはヤマメに似た魚が付いているのであった。
一応、無属性魔法『鑑定』をかけると、ヤマメでなくヤマナという魚らしい。それから、イワナに似たイワメやアユ似たハマサキといった魚を釣るが、一向に目的の物は現れないのであった。
『くそぉー。お父さんのために、何とか取って帰りたいのだが・・・・。』
そして、日が暮れ始めたので、ラスト一回で今回は諦めようとした時であった。
今までとは、引きの違いを感じるのであった。
『グググ。強いな。』
そして、釣り上げると其処には求めていたものが釣れていた。
スッポソ。
それは、前世のスッポンであった。
無属性魔法『鑑定』でも、間違いないのであった。また、鑑定により判明したのが夜行性らしく、日が暮れたおかげで釣れたようであった。すぐに空間魔法『収納箱』に入れ、研究室に帰ったのだ。そこから、血を取り、料理を一品作るのであった。
『これで、完璧だ。これなら、お父さんも治るであろう。』
私は、大満足であった。作ったのは、スッポン鍋であった。いや、スッポソ鍋である。
血については、生臭いので、乾燥させて丸剤にしておいた。
その後、両親は喜んで鍋をつつき、クロノスは精力剤とも知らず服用するのであった。
私は、少し遠出したので疲れた事とし、早く就寝に着くふりをした。
その夜、こっそりと両親の寝室を覗いてみて、安心するのであった。
どうやら、不能は治ったようだ。しかし、薬やスッポソのせいであろうか。クロノスが、性獣のようだ。このまま、観察も悪くないが、クロノスの復帰祝いでもある。
野暮と感じ就寝するのであった。
彼は、自分の行為!?好意で、アイリーンが身籠るのをまだ知らない。
それから、数週間が過ぎた時に、アイリーンが体調を崩したのであった。
クロノスと私は、心配し動揺したが、アイリーンから話を聞くと、安心をした。
彼女は、無事に懐妊したようだった。
そのため、安静が第一なので、家事はクロノスと私が行うが増えていく。そのため、薬学で得た知識を、アイリーンの代わりに行う事も増えていき、村人からも感謝される事が増えていくのであった。
彼は、五歳で魔物を討伐したため、一部の村人から恐れられている事を知らない。
そこから、またまた時は流れてゆき、彼は9歳になった。ついに、妹が生まれるのであった。
妹の名は、ジュリアという名が付けられた。前世では、一人っ子だったので、下の子が出来るのは、感慨深いものであったのだ。
私は、兄としてジュリアを守らなければと、心に誓うのであった。
彼は、自分のせいで、ジュリアに不幸が近づく事は、まだ知らない。