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ブタは、試験を受ける。

 いつものように、クロノスと森へ向おうと準備を整えるのであった。


あれから、空間魔法を練習したのだが、空間魔法は『収納箱』しか会得出来なかった。クロノスが言うには、空間魔法は他の魔法よりも魔力の属性イメージが付きにくいためだと言っていた。


私が得意としたのは、無属性魔法の中でも身体能力を向上させる魔法であった。


前世の記憶のせいか、武術に関する魔法と相性がいいようだ。他にも、火・水・土魔法など多様の種類も使えたのだが、火力が高くなり過ぎると、被害が出てきてしまうので、魔力コントロールが上手く行くまでは使用の禁止が出ていた。


一度、ボヤ騒ぎを起こしたので、しょうがなかった。


『ロー、8歳にもなったし、そろそろ森も1人で行っても良いか試験を行おうかと思う。ローは、武術が人より長けているから、問題はないと思うんだ。』


『えっ、いいんですか?』


ローは、不敵な笑顔を浮かべているのであった。


彼は、この3年間、色々と学んだのだが行く場所に制限がかかっていた。

そのため、薬学で得た知識も、素材がないので生かせなかった。彼には、目的があったのだ。


『ヤル気があるんだね。そしたら、付いておいで。』


クロノスは、空間魔法『転移』を使用し、ローをある場所へ連れて行くのであった。そこは、森では今まで入ってはいけないと言われていた領域であった。


『無属性魔法『探知』。この辺に魔物はいないみたいだな。』


『ここで、何をするのですか?』


『それは、いつも通り、狩りだよ。ここら辺に来れば見つかると思うから。


実は、アイリーンからお願いを出されているんだ。それは、ムスクディアーの捕獲なんだ。この魔物は、非常に見つけるのが難しいからね。ローも、外に出たがってたみたいだし、これを機に試験も兼ねてしまおうと思って。』


『ムスクディアー!!!』


(お父さんも、隅に置けないな。母さんのお願いって言っているが、やっぱり不能で悩んでおられたか。

私が必ず、見つけてあげますからね。)


私のヤル気は充分であった。


彼は、本当に試験だとは、気が付いていない。


ムスクディアーとは、生薬の一種であった。その睾丸は、精力剤として重宝されるものなのだ。他に強心作用や興奮作用も含まれている。その匂いは、独特で香水としても人気があるのだ。


『試験は、ムスクディアーの捕獲し、村へ持ち帰ったら、合格って事で。


私は、手を出さないが監視はしているからね。もしもの場合は、手を貸すから。それじゃあ、頑張るんだよ。無属性魔法『隠密』・光魔法『屈折』。』


クロノスは、無属性魔法『隠密』・光魔法『屈折』により、完全に姿と気配を消すのであった。


無属性魔法『隠密』は、名前の通りで気配を限りなく薄くするための魔法だ。


光魔法『屈折』は、光の反射を屈折させる魔法であり、クロノスは光学迷彩のように使用をしている。

本当は、研究の時の顕微鏡やメガネを作る時に使用する魔法らしい。この魔法で、角度や歪曲率を調べて作るためであった。


『お父さんは、やっぱり凄いな。多彩な魔法が使えて。取り合えず、私も行動しないとな。』


そうして、私は空間魔法『収納箱』から生薬図鑑を取り出し、ムスクディアーについて調べるのであった。


ムスクディアー

オスの睾丸に特殊な精油を溜め込んでいる。それを分泌する事でメスをおびき寄せ繁栄していく習性。

独特の匂いを発するため、分泌している場合は、見つけるは容易い。しかし、感知能力が極めて優れているので、滅多な事じゃ出会う事も出来ない。

睾丸から抽出した精油は、強心作用・男性ホルモン作用・興奮作用といった効能があり、古くから精力剤としても使用されている。

また、別の使い道として、甘い匂いを発するので、香水としても使用される。

注意点あり。取り出す際に強烈な匂いを発するので、頭も痛くなり、死にそうなくらいである。


(甘い匂いか。それに、気配を消さないといけないな。)


『無属性魔法『鋭嗅』・『隠密』・『鋭聴』。それと、最後に音魔法『音波』。』


私は、気配を薄くし、嗅覚と聴覚を魔力により高めるのであった。

そうして、音波により気配を辿るのであった。音魔法の『音波』は、無属性魔法の『探知』より広範囲に伝播していくので、何か不自然な物があれば、分かるのであった。ただ、精度は、『探知』よりも落ちてしまうが難点である。


それを、補填するために無属性魔法を先に使用したのであった。


(少し反応があるのが、2つ、いや3つか、匂いも入れると、1つ怪しいのがいるな。よし。まずは、そこへ、向かおう。)


『無属性魔法『強靭』。』


無属性魔法『強靭』は、肉体を屈強にし、魔力依存で通常の何倍もの力を得る事が出来る魔法なのだ。それにより、物凄いスピードで移動をするのであった。それでも、無属性魔法の『隠密』により、気配は薄く移動ができるのである。


そして、目的の場所に辿り着くと、強烈な匂いを発しているのだった。そのため、急いで無属性魔法の『鋭嗅』を切るのであった。念のため無属性魔法『鑑定』をし確かめるのであった。どうやら、当たりらしい。


しかし、今はメスと取り込み中であった。


私は、紳士たるもの行為が終わるまで待つのであった。そして、まじまじと眺めていた。


(素晴らしい。激しくも、丁寧な手技。動物であるも、奴も紳士であるな。私も大人になったら、いつかはな。)


彼は、性に関しては、特に真面目であった。そこだけは、紳士であるのだ。


ムスクディアーは、ようやく行為が終わるのであった。行為が終わると、オスのムスクディアーは、メスに目もくれず立ち去るのであった。


その素振りは、まるでヤリ〇ンのようである。


彼は、激しく激怒した。これまで、待ったな事では怒りを露わにしていない彼がキレたのだ。


『なんたる態度だ。ピロートークやアフターフォローが、まるでなっていない。あぁー、あんなにもメスが悲しい目をしてるではないか。奴は、本当の紳士ではない。私が裁きを与えようではないか。』


彼の目的は、ムスクディアーの捕獲から抹殺へ変わっていた。

どちらにせよ。変わらないのであるが、気持ちの問題であった。

しかし、その一瞬の殺気に、ムスクディアーは敏感に気が付き、脱兎のごとく走り出すのであった。


『早いな。それなら、無属性魔法『瞬歩』。』


無属性魔法『瞬歩』は、高速移動魔法である。

元々、使用している『強靭』よりも移動に特化している魔法だ。それにより、追いつくのは容易かった。そうして、持っている弓で、ムスクディアーの足を射る。その後、それでも高速移動をするので、何本か矢で射ると諦めたのか逃げるのを止めたようだ。


ムスクディアーに近づくと、強烈な匂いを発すのであった。彼は、咄嗟に無属性魔法『無嗅』を使用し、嗅覚の機能を一時的に停止するのであった。そのため、最後の攻撃?は、効かずトドメを刺すのであった。

『ふぅー、後は帰るだけか。とりあえず、高い所へ移動して場所を確認するか。』

彼は、空間魔法『収納箱』にムスクディアーをしまうのであった。


その時、異変に素早く気が付くのだった。


彼は、直ぐに無属性魔法の『探知』を使用した。それにより、魔物がここに近づいているのが分かるのであった。どうやら、最後の強烈な匂いは、魔物をおびき寄せるものだったらしい。


(1.2.3.....9匹か。この速さと統率力は、なんだ??)


彼は、考えながらも迎撃に備えるのであった。そうこうしていると、敵が姿を現した。


そこには、8匹の大型犬ぐらいの狼とその一回りも二回りも大きい狼が現れるのであった。それは、森の掃除屋と言われるブラックウルフとグレイトウルフであった。


『おぉーーー、大きいシバサブロウだ。でも、あんまり好意的ではないみたいだ。モフモフさせてはくれないかな。』


彼が、そう考えているとブラックウルフが、襲い掛かるのであった。8匹のブラックウルフは、連携をとり、次々と攻撃を仕掛ける。


しかし、彼の戦闘経験は、前世を入れれば数えきれない。そのため、その猛攻も見切り避けるのであった。そして、冷静に一体・一体に手刃を入れて、気絶させていくのであった。グレイトウルフは、その様子を伺い口に魔力を溜めていた。ローが最後のブラックウルフを仕留めると、魔力を解き放つのであった。


それは、無属性魔法『魔力弾』であった。これは自身の魔力を圧縮したエネルギー弾なのだ。



凄まじい勢いで、ローへ目掛けて襲い掛かるのである。そして、直撃し発光するのであった。視界が晴れると、木々はなぎ倒され、森の奥まで破壊が続いているのであった。


しかし、ローは、そこに立ち耐えていた。咄嗟に自身にかけていた無力性魔法『強靭』の魔力を高め、攻撃を防いでいた。


その様子に、グレイトウルフは実力差を感じ、遠吠えをあげるのだった。ブラックウルフを引きつれ足早と逃げていくのであった。


『あぁー、久しぶりにビックリしたな。魔物だったんだな。まさか、魔法を放つなんて。私も油断しないように気を付けないとな。』


そうして、気を締め直し、帰路に着くのであった。村の門に近づくと、クロノスが迎えてくれていた。


『ロー、頑張ったね。グレイトウルフの攻撃が当たった時は、少しヒヤッとしたよ。でも、やっぱり心配はいらなかったね。試験は合格だよ。ローは、自由に行動しても問題ないと証明してくれたね。これで、アイリーンも納得してくれると思うよ。』


『ありがとうございます。それでしたら、このムスクディアーを母さんに届けてきますね。』


ムスクディアーを届けにアイリーンの所へ向かうと、彼女は作業中だった。


彼女は、治癒魔法に特化しているので、たまに診察も行っているのだった。そこで、一段落終えるまで待ち、ムスクディアーを取り出し渡すのであった。


『これを、ローが1人で??』


『はい。これが、試験という事で。』


『クロノスが言ってた事は、本当だったのね。8歳で、捕まえる事は出来ないと思ってたのに。


それじゃあ、仕方ないわね。行動は自由にしてもいいけど。決して無理はしないように。それだけは、約束よ。


あっ。後、ムスクディアーは貴重な生薬なのは、もう分かってるわね。折角だから、処理も自分でやるといいわ。それは、ローが仕留めたのだから。』


『いいんですか?そしたら、私の研究室へ持って行きますね。お肉は、後で持って帰りますから。』


(あれ??本当に試験だったの・・・・?お父さんの不能ためでなかったのか?まー、いっか。)

私は、少し疑問を残しつつ、早々に自分の研究室へ持って行くのであった。


彼は、ムスクディアーの効果を、まだ知らない。

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