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ブタは、ヴェマを狩る。

またまた、時は流れたのだ。彼は、5歳となっていた。



この歳になると、念願の魔法を教えてもらえる事となっていた。彼は、今も魔法に心が躍った事を忘れていない。


『ロー、今日はいつもより元気だな。』


『はい。お父さん。待ちに待った魔法を教えてもらえるのですから。』


彼は、はしゃいでいた。


この姿に、両親はとても喜んでいた。何事も、動じず淡々とこなし、何事にも興味がないかと思っていた子が、初めて興味を示した気がしたからだ。


そうして、2人は、魔法の特訓も兼ねて、森に狩りに来ていた。


『最初は、どんな魔法が良いんだい?』


『あれです。ムサギを捕まえる時の。音魔法『サウンドボム』がいいです。』


『あぁー、音魔法か。最初からアレは、難しいかなぁ。魔力コントロールがね・・・。そしたら、初級から教えよう。口元を見てて。』


私は、素直に従う。何事も基礎が重要だと知っているからだ。彼は、こういう時だけ役立つ知識をもっている。


(ロー。ロー。聞こえたら、右手をあげてごらん。)

私は、その声に従い右手を上げた。


『どうだい?口が動いていないのに、声が聞こえただろう?』


『お父さん。それは、腹話術でしょ?さすがに、そんな事では、騙されませんよ。』


『腹話術??なんだろ。とりあえず、騙してはいないよ。ちょっと、ここで待ってなさい。』

クロノスは、ローから10mほど離れ、もう一度繰り返すのであった。


(ロー。ロー。聞こえたら、右手をあげてごらん。)

私は、それにより驚いたのであった。そして、今一度右手を上げた。


『お父さん。凄いです。これも、魔法だったんですね。それで、これは、どうやれば良いのですか?』


『まずは、喉や口に自分の中にあるエネルギーが集まるようにイメージしてごらん。』


私は、神経を集中させた。武道の時も丹田に気を集中させたように。


『お、凄い凄い。それが、魔力だよ。ロー、そのまま。目の前の木へ語り掛けてごらん。もちろん、口を使うのではなく頭で考えた事を、そこの木へ語り掛けるように。』


私は、木に語る??色々考えたが、特に思いつかなかったので、挨拶をしてみるのであった。


(こんにちは。元気ですか?いつも、お世話になっています。)


(おぉー、礼儀正しいな。こんにちわ。それで、クロノスの所の倅のローだろ。どうしたんだ?)


(へ??なんで、私の名を・・・・。)


(そりゃあ、ローみたいな小さい子が、この森をウロチョロしたら、目につくよ。森の皆と、よく話してるもんさ。それにしても、もう魔法を覚えたのかい?)


(今日が初めてなんです。これが、魔法なんですね。)


(はっはっは。これから、色んな物へ話しかけてみなさい。また、自分の世界が広がるぞ。)


(そうですか。試してみます。ありがとうございました。)


私は、話を終えると、驚いてクロノスの方を見るのであった。クロノスは、そんな息子をみて、微笑ましく思うのであった。


『フフフ、驚いたかい。これが、音魔法『テレパス』さ。今日は、これを使って、色んなものに話しかけてごらん。この世界のたいていの物は、魔力を持っているから誰とでも会話できるんだよ。でも、魔力が欠乏してたり、無いものには、聞こえないからね。』


(はい。頑張ります。)


私は、すぐに音魔法『テレパス』を使い話しかけるのであった。そして、すでに試したくてウズウズし、気が付けば駆け出していた。


『はははっ。ロー。そこは普通でいいのに、、、、、。そのうち疲れて帰って来るだろう。初めての魔法は、消費が悪いからね。』


私は、初めて魔法が使えた事に、心が弾んだ。そこから、その辺の石ころ・木々・ムサギやツチカラと色々と話かけるのであった。


いつもの森が、新鮮なものに見えていた。そして、夢中になり過ぎたためか、いつしか森の奥まで来ていたのだ。


『はぁー、武道とエロ以外も、こんなにも楽しい事があるなんて知らなかったな。前世の時も、もっと違う事にも目を向ければよかった。これから、見つければいいだけか。あははは。それにしても随分、遠くまで来ちゃったな。そろそろ、戻ろうかな。』


彼は、まだ疲れてはいなかったが、両親から森の奥へ1人で行くことは禁止されていた。そのため、早々に戻る事にしたのであった。


『そうだ、折角、森の奥に来たなら、狩りをしながら帰ろう。帰りにムサギでもみたら、夕飯に取っておこう。』


彼は、先ほど楽しく会話したムサビの事は忘れ、なかなか残酷な事言うのであった。生活のため、しょうがない事ではあるが。

私は、初めての魔法に浮かれていた。


そのため、背後から近づくものに、気が付かなかったのだ。


グオォォオオオーーー。カァカァッ。バサバサッバサッ。


振り返ると、カラスが飛び上がり、大きな熊いやヴェマが、けたたましい声を上げていた。そして、彼を獲物として見定め、鋭い牙を見せながら向かってくるのであった。


『うわぁーーーー。なんて、大きなシバサブロウなんだ。』


この世界では、犬の事はシバサブロウであった。そして彼は、まだヴェマだと気が付いていなかった。


大きなヴェマは、ローの前に立ちあがり、爪を立て襲いかかるのであった。その殺気に、ローは気が付き、咄嗟に振り落とす爪を捌き、見切るのであった。


『どぅどぅ。怖くないから。落ち着いて。』


私は、シバサブロウが怯えて襲ってきたと勘違いをしていた。


そして、早く手なずけ、その毛皮にモフモフされてみたいと思うのであった。


あぁーどんだけの気持ちの良さがあるのであろう。

彼は、まだシバサブロウ・・・犬だと思っていた。そして、モフモフプレイを想像し、うっとりしていた。


その様子に、ヴェマの怒りが増すのであった。冬眠前もあり、栄養を多く取らないといけないので、普段より殺気立っているのだ。先ほどは、爪を避けられたので、今度は体当たりをしてくるのであった。


しかし、それも、ローには届かなかった。魔法を習えなかった間に、彼は前世の修行を繰り返し、身体能力は普通の子供とは違っていた。いや、実際は大人も顔負けするのであった。


彼は、木の上から声を掛けるのであった。

『危ないよ。いかに、私とモフモフしたいからって、その勢いはね。そうだ。音魔法『テレパス』で話せばいいんだ。』


(よしよし。シバサブロウちゃん落ち着いて。さぁ。怖がらなくていい。一緒にモフモフしよう。)


(うるせぇーーーー。黙れ、小僧。俺は、シバサブロウじゃねぇー。ちゃん付けもするんじゃねー。俺の食糧が舐めた口を聞いてんじゃねーぞ。)


(・・・・・・・・・・・・・・・・・。)


(怖くなったか。黙って、声もでねーか。)


(くそぉ。騙したな。仲良くなりたいフリをして。私は、許さないぞ。君を今日の夕飯にしてやる。)


(なんだとぉー。この糞餓鬼がぁー。)


ヴェマは、怒りに任せ、鋭い爪と太い腕で、ローのいる木をなぎ倒すのであった。なかなか太い木であったが、いとも簡単に倒すのであった。人が真面に受けていれば、即死であったであろう。



しかし、そんな猛攻も気にせず、ローはふわりと、地面へ着地をするのであった。ヴェマは、そこを見逃さない。すぐに、先ほどと同じように腕を振りぬくのであった。


ローに取っては、まったくの隙ではなかった。簡単に見切り、素早く懐に入り込むのであった。そして、腕を掴み、綺麗な放物線を描きながら、一本背負いが決まった。そして、追撃に狩り用の短刀を、心臓へ鋭く突き立てるのであった。


勝負は、一瞬で終わってしまった。


その頃には、ヴェマも一瞬の出来事で、何が起こったかも分からなかった。気が付いた頃には、苦しまずに息を引き取っていた。


『はぁー、なんて短気な奴だったんだ。まったく、友となれば無駄な殺生を起こさなくても良かったのに。それでは、失礼して。』


私は、その後モフモフをしてみるのであった。

しかし、思いのほか毛が固く、匂いもきつかったので早々に止めるのであった。


彼は、野生のヴェマは可愛くないと、初めて知った。


その後、クロノスがローの帰りが遅いのが気になり、すぐに広範囲に無属性魔法『探知』を使用し、ローの場所を見つけたのであった。


そして、驚愕してしまう。たった5歳の子が、1人でヴェマと戦い、無傷で勝利してしまう事に。それも、心臓への一突きで狩っているを。


『これをローが。ハハハ・・・・。ロー、まずは、逃げなさい。魔物は、危険だからね。死ななかったから、良かったものの決して、無茶はしないでくれ。』


クロノスは、顔を引きつらせながらも、注意は忘れないのであった。


『分かりました。でも、無茶はしていません。このヴェマも、動きが鈍かったですし。』


『それでもだ。ほら、身体中が擦りむいているじゃないか。』


『あっ、本当だ。気が付きませんでした。』


クロノスは、ヴェマを空間魔法『収納箱』で放り込むと、家路を急ぐため、空間魔法『テレポート』を使用するのであった。ローは、一瞬で移動できることに感動していたが、クロノスはローの事に驚いていたので、それ所ではなかった。

その後、アイリーンの待つ家に着くと、異変に気が付くのであった。


ローのスリ傷が既に消えていたのだ。


クロノスは、ローの事を、まだ知らない。

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