84話 お風呂2
「あー。疲れた!結構頑張ったし」
大神殿で狩りを終え、コロネの別荘に戻ったところで、私は背伸びをした。
うん、さすがに朝から夜まで大神殿に篭っていたのである。
疲れも半端ない。
「そ、そうっすね。さすが猫さん廃人ですよね。
よくあんな超時間篭れますね」
sionが呆れたように言う。
うん。なかなか瞬間移動の書がでないのでムキになっていたところはあるのでそこは反省しないといけないかもしれない。
てか、結局一個もでなかったけどNE!
守護天使達もこころなしかげっそりしている。
「ネコ!今日頑張った!リリ ご褒美に カンナのお菓子食べたい!」
リリちゃんが鍵爪をぶんぶん振り回しながら嬉しげに言う。
「あー。そうだな。今日頑張ったもんな。じゃあご褒美にカンナちゃんのお菓子だそうか」
「やったー」
ぴょんぴょん喜ぶリリ。
「それでは、私は少し休んできます」
と、いそいそ自室に戻っていこうとするコロネ。
帰ってきたらsionに質問責めにするのかと思ったら、どうやら疲れているらしい。
に、してはなぜか顔がややにやけているのだが……。
「sion、コロネに何か渡したりしたか?」
「あー、神話考察スレのログ渡しましたね。ゲーム機ごと」
……それでか。
てか、コロネが某掲示板のノリになっちゃったらどうしよう。
ごばくwwwとか言い出したら泣くよ私。
「コロネ、明後日には天界行くから、徹夜禁止だからな」
私がジト目で言うと、コロネはギクリとして、
「は、はい!!23時には寝ます!」
と、背筋を伸ばす。
うん。こいつ絶対徹夜で読みふけるつもりだ。
「アルファー、もしコロネが寝なかったら連絡くれ。私が寝せにいくから」
と、アルファーに言うと、アルファーは力強く頷いた。
コロネが若干しょんぼりした顔をしているが気づかないふりをする。
ついでにアルファーにもカンナちゃんの手作りお菓子を渡しておいた。
コロネと自室で食べるといい。
「じゃあ自分も神殿に戻りますね」
と、sion。
「こっちに泊まればいいのに」
「やだなー猫さん。こっち女性が多いでしょ?
昨日はコロネさんに無理やり引き止められたけど。
今日は一人でゲーム機見るみたいだし。
彼女持ちとしては誤解をうけるような事は避けたいっす」
「あー。それもそうか。
じゃあまた明後日迎えにいくから」
「はい。じゃあまた明後日」
軽く会釈するとsionはリュート達のいる神殿に戻っていく。
さて、私たちはどうしよう。
お菓子もそうだけど、やっぱり汗を流したいかな。
今日はリリちゃんと久しぶりにお風呂はいろうか。
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「猫様、本当に女性でいらしたんですね……」
1時間女に戻れる腕輪で女の姿に戻ると、レイスリーネが呆然とした表情でつぶやいた。
私たちはカンナちゃんのご飯を食べ終わると、リリと一緒にお風呂にきたのだが、護衛でレイスリーネもファルティナもついてきたのだ。
「うん?まぁ、これは結構美化されてる姿だけどね。
にしても、やっぱり守護天使としては男がマスターの方が嬉しかったりするの?」
やや、がっかりしたような雰囲気を感じたので聞いてみる。
「そんなことはありません。猫様。
男女どちらでも絶対の忠誠を誓うのが守護天使ですから」
と、ファルティナ。
「そ、そうです!女性でも男性でも、猫様はマスターです!」
レイスリーネも慌てて身を乗り出して言う。
「うん?ならよかったけど……。
そうだ、二人もお風呂はいる?
ここの風呂結構広いから四人くらい余裕だけど」
「い、いえっ!!猫様とお風呂なんて滅相もありません!!」
レイスリーネが顔を真っ赤にして全力否定してくる。
「私も護衛ですから。遠慮しておきます」
ファルティナにも断られた。
うん。まぁ護衛が鎧脱ぐわけにもいかないよね。
でも、ちょっと寂しいけど。
いや、まぁ、よくある男性向け小説の女同士が胸見せあってキャキャウフフとかそんな事をする気はこれっぽっちもないけれどさ。
やっぱ女同士って一緒に風呂って嫌うよね。恥ずかしいって。
私は結構好きなんだけどなぁ。一緒にお風呂。
「ネコー!はやくー!」
リリはというと、躊躇なく服を脱いでお風呂へダッシュする。
もちろん、石鹸の泡で遊びまくるのはお約束だった。
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「あー。いい湯だった。
レイスリーネもファルティナも、私が男に戻ったら入ったら?」
お風呂からでて、普段着に着替えた状態で言う。
ファルティナは、眉を潜めると
「……風呂はあまりいい思い出がありませんので」
と、俯いた。
その言葉に私は察する。
マナフェアスがきっと風呂で女性に酷い事をしたのだろう。
いくら守護天使二人には何もできなかったとしても、他の子がされてる所をみるのも辛いものがある。
なんだかんだで、彼女達もまだ傷を引きずっているのだなと、反省した。
最近マナフェアスやレオンを倒したせいで、自分の中で片付いた気になってはいたが……ファルティナをはじめ、心に傷を負った人たちは回復はしてないのだろう。
ちょっと浮かれてたのは反省しなきゃな。
などと思っていると
「そういえばファルティナは以前、お風呂でのぼせた事がありましたね。あの時は大変でした」
と、レイスリーネ。
……うん?そんな理由?
「レ、レイスリーネ!?何も猫様の前でそのような醜態を言うこともないでしょう!?」
「ああ、すみません。口がすべりました」
と、真っ赤になるファルティナと、今にも舌をぺろりとだしそうなレイスリーネ。
どうやら、レイスリーネの話が図星だったらしい。
やっべー。私深読みしすぎてただけだったわ。
ってか、ファルティナも天然系かよ!
うちのメンバー天然しかいないな!?
そんな中
「ねーねーネコ!トランプしよう!トランプ!
リリ ババ抜き やりたい!サラちゃんにトランプもらった!」
と、相変わらず空気はまったく読まないリリちゃんが提案する。
いや、逆に空気を変えようとしてるのかもしれないけど。
こういうのはやっぱり子供の特権だよね。
「よーっし、じゃあトランプやろうか」
リリの頭をがしがし撫でてやればリリは嬉しそうに頷くのだった。




