80話 裏設定集
「しかし武器装備堀をするにしても……どこに行けばいいのか皆目検討がつかないのですが」
私の提案にコロネが困った表情で地図とにらめっこをしいた。
結局あのあと、レイスリーネ達も合流し、私たちは今後の予定を立てていたのだ。
「レベル1100の武器がドロップする可能性があるとすればやはりエルフの結界で守られている魔界くらいしか……
しかしどこにそのようなダンジョンがあるかはまったく情報がありません。
一つ一つしらみつぶしに調べていく他ありませんね」
コロネがぶつぶつと顎に手をあて考えていると
「では天界に行ってみるというのはどうでしょうか?」
コロネと一緒に地図を見ていたファルティナが提案する。
「て、天界ですか!?行けるのでしょうか神々の住まう天界に!?」
やや興奮した様子で言うコロネにファルティナが頷いた。
「天界ってゲームでは未実装だったけど……そもそも魔物なんているのか天界に?
まさか天使を倒して武器防具を奪えと?」
私の問いにファルティナが思いっきり首をよこにぶんぶん振る。
「流石に天使を倒すなどということはありえません。
天界へと続く道にいる守り人が確かレベル1000〜1200だったはずです。
彼らは元々天界へ行くものを試す使命があります。
それに倒しても10分後には復活するはずなので、倒しても問題ありません」
「うーーん。それは凄いけど……。
ってことは神様に会えるのかな?」
わりと私のやっていたネトゲでは神様に普通に会えちゃうネトゲは結構あったけど。
このゲームもフレンドリーに「やぁ✩よくきたね冒険者諸君✩僕のお願いきいてよ✩」からのクエスト依頼とか神様がやっちゃうタイプのゲームなのだろうか。
ちょっとそれは、威厳がたりないというか神秘性がたりないというか……。
「試練の間を抜けると神々に会えるとされています」
私はファルティナの言葉に眉根をよせた。
……何故ファルティナはその存在を知っているのだろうか?
存在事態はまぁ守護天使というくらいだから知っていてもおかしくないかもしれないがレベルに関してはどう考えても後付設定のはずなのでファルティナが知る機会はないはずだ。
「でもファルティナはなんで天界のレベルを知っているんだ?
ゲーム時は未実装。こちらの世界ではマナフェアスの守護天使をやっていただけだ。
知る機会があるとは思えないんだが」
「はい、sion殿が持っていたゲームの裏設定集で知りました」
「裏設定集!?」
ファルティナの言葉にコロネの目がキラキラ輝く。
うん、これはもう変態の方のコロネだわ。
私以外に発動したところをみると、元々コロネはこういう変態の素養があったのかもしれない。
「ぜ、是非読みたいです!!それはどこへ行けば読めるのでしょうか!?」
ファルティナの首根っこをつかみぶんぶんする。
これはどう見ても変態です。ありがとうございます。
「sion殿に返しましたから……エルフ領に行かないといけないかと」
「はい!では行ってきます!!」
と、一人瞬間移動で行こうとするコロネの首根っこをつかむ。
「ちょっとまてぇぇ。一人行動ダメだっていってるだろう!?」
「し、しかし猫様!裏設定ですよ!裏設定!!見たいですっ!!」
「気持ちはわかるがおちつけ!!リリを置いていくつもりか!!」
「はっ!?そうでした申し訳ありません」
と、シュンと項垂れる。
まったく、コロネは探究心が強くてこまる。
「で、では!リリ様が寝ている間に帝国領の引継ぎを済ませてまいります!
急ぎますのでこれにて!」
と、ばたばた部屋から出ていくコロネのあとを慌てて護衛のアルファーが追っていく。
にしても裏設定集かぁ。
そういえばあったねそんなもの。
確かその月の一万円以上課金した応募者全員にプレゼントの本だったはず。
でも、あれって私も運営に応募してたけど……本が届く前に異世界に召喚されちゃったんだよね。
11月に発送予定だったけど私は9月にこの世界に召喚された。
ってことはあれか?sionと私の召喚された時期にずれがあるのだろうか。
なのにこの世界にきた時期は一緒……ってことになるなぁ。
うん。だから何なんだって言われると、自分でもなんだろうってことになるけど。
でもまぁ私もそれ読みたいな。
久しぶりにコロネの別荘に戻ってゆっくりするのもいいかもしれない。
お風呂も入りたいし。
にしても……
「ファルティナ、その裏設定の本ってコロネの事は何か書いてあったか?」
私の問いにファルティナは
「いえ、今後実装されるであろう地域の簡単な説明とレベルくらいしか……コロネ様に過剰な期待を持たせてしまったようで……」
と、困惑の表情を浮かべる。
「いや、たぶんそれだけでもコロネなら大喜びだろ。
気にしなくていい。」
「それならばよいのですが……」
「それより、神様に会えるってほうが重要だな。
もしかしたら元の世界に戻る方法も教えてもらえるかもしれないし」
「マスターはやはり元の世界に帰りたいのでしょうか?」
ファルティナに聞かれて私は口ごもる。
「うーん。正直微妙。
神様になんで現実の世界になったか聞いて、もしプレイヤーの命を犠牲にしたとかじゃなければ、元の世界に帰るのは考えるかもしれない」
そう、もし元の世界に帰ったら、守護天使三人がどうなちゃうのか不明だし。
最悪マスターがいなくて消滅とかなったら嫌すぎる。
もし帰るにしても誰かに譲渡してからじゃないといけない。
それにやっぱり、魔王と女神がいる以上、みんなを置いていけないしなぁ。
神様が魔王と女神をなんとかしてくれないだろうか?
頼んでみるだけ頼んでみようかな。
ゲームのストーリー見ると悪い神様じゃないし。
うん。でも神様に会えるとかちょっと心踊るよね。
ほら、あれじゃん。
大体神様の部屋行く前にすっごいボスいてすごい装備落とすじゃん?
ロマンだよねロマン。
最強装備の妄想に一人にへへと笑っていると、レイスリーネとフェルティナに、引かれた目で見られるのは言うまでもない。
▲△▲△▲△▲
「もう人間領を平定したのですか!?」
私たちがエルフ領に戻り、リュートが滞在している神殿に行くと驚いた表情で聞いてくる。
……うん。まだです。ごめんなさい。
ちなみに帝都にはいい装備を渡したレヴィンを置いてきた。
レベル295のレヴィンがいればそれなりの対応はできるだろう。
しかもファルティナが召喚したレベル300の天使付きなのでちょっとやそっとじゃプレイヤーにやられる事もない。
旧死霊都市にも同じくファルティナが召喚した天使達がいるので私たちが離れた所で問題はないと思う。
私たちはある程度、準備を整えてからエルフ領のリュートの所まできたのだが……
「いえ、それはまだです。それよりsion殿はどこですか?」
物凄く真面目な顔でコロネが聞く。
「あ、はい彼ならあちらの部屋でポーションを作っているはずですが」
リュートが説明すると、そのままコロネはダッシュでかけていく。
その後を慌てて追うアルファー。
うん。待ちきれない子供か、お前は。
「あの……何かあったのでしょうか?」
リュートがひきつりながら私に聞くのだった。




