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6話 システムからの解放

「まさか、プレイヤーが去り、ゲームの世界から開放されて300年。

 もう二度とそのお姿を拝見出来る事など叶わないと思っておりましたが

 再び猫様と出会えるとは、この『即死のコロネ』感激です!!」


 ウルウルとまるで恋する乙女のような瞳で、コロネが私を見つめてくる。

 その表情は恍惚として……正直気持ち悪い。

 これが可愛い女の子とかならまだいいけど、美形とはいえ、おっさんだよ、おっさん。


 それに今、すっごいメタ的発言してたよね?

 ゲームの世界から開放されて300年とか。

 即死のコロネというプレイヤーから付けられてた仇名まで理解してるんかい。


 コロネはゲームの中『グラニクルオンライン』では、一方的にセリフをべらべら喋るだけで、問い掛けなどにまったく応じかなった。

 ただのNPCだったはずなのだが……。


「お久しぶりです。コロネ殿。

 ……まさか、貴方とこうやって会話できる事になるとは思いもよりませんでしたが……」


「それはこの私とて同じ事。

 プレイヤーの方々には信じがたい事かと思いますが、300年前、世界は突然システムから開放されたのです。


 だからこそこうやって、猫様とお話できる機会ができたのではありますがっ!!」


 むっふー。とでもいいそうな興奮した表情で顔を近づけてくる。

 うぉう。美形なはずなのに、アップが何故かキモイ。


 私がどん引きしていると、その感じがコロネに伝わったのか


「こ、これは失礼。つい、興奮してしまいました。

 NPCだった時は話す事すら叶わなかったのが、こうやってお話する機会ができて感無量でありまして」


 アタフタと言い訳を始める。


 ……うん、いまこいつNPCとか言っちゃってるわ。


「コロネ殿、一つ確認しておきたいのだが

 つまり、この世界は『グラニクルオンライン』の世界の中という解釈でいいのだろうか?」


「私の記憶が夢か幻の類でなければ

 おそらく、そのゲームの中『グラニクルオンライン』の世界です」


 コロネはさらりと、言ってのけた。


 やっぱりそうか。

 リリの記憶もなんとなくそんな感じだったしなぁ。

 って、システムから開放されたって、どうして開放されたんだろ?

 まさか、地球でプレイしていたプレイヤーの命を取り込んで、現実世界にしてみました! とかいう恐ろしいオチだったりしないよね?

 やだよ。怖いよ。ホラーだよ。

 もしそうなら、早いところ現実世界に帰って、知り合いみんなゲーム止めさせないとやばい。

 はやく帰る方法を探そう。


「解りました。コロネ殿。

 聞きたい事は沢山ありますが、とりあえず負傷者の治療をしましょう」


 私はそう言って辺を見渡す。


 コロネと一緒に同行していた騎士の格好のエルフ達は、すでに満身創痍の状態でぐったりと動かなくなったものやら、足が地面に転がってる者までいる。


 こんな怪我人を放置した状態で、話し込めるほど図太い神経は持ち合わせていない。


「さすが猫様!!

 私、感激のあまりすっかり忘れておりました!」


 ……忘れんなよ。おい。

 あんたの仲間でしょ。

 ってか、なんでコロネはこんなに私を崇拝してるんだろう?

 正直、護衛ミッションの時に埋めたり、投げたり、石にしてみたりとひどい扱いをした記憶しかない。

 聞いてみようかと思ったが、私のカンが告げている。

 ――聞くべきではないと。

 きっとキモイ理由なんだろう。



 とりあえず、私は一人一人、病状にあわせて、回復薬を渡していく。

 私は攻撃重視型でスキルや魔法を取得しているため、自分を回復する術はあるが他人を回復する手段は薬に頼るしかない。


 エルフ一人一人にお礼を言われるが、時間が惜しいので軽く流し、次は死んでしまっているエルフに視線を落とす。


「……惜しいもの達を亡くしました」

 

 コロネのセリフに


復活の呪文(リザレクション)を使えるものはいないのですか?」


 ゲームの世界そのままなら、神殿の神官たちは復活の呪文を使えたはずだ。

 私の問いにコロネは首を横に振る


「なぜか、NPC時代の記憶は私以外は皆忘れておりまして。

 復活の呪文(リザレクション)も失われております。

 もしかしたら、プレイヤーなら使える者がいるかもしれませんが

 この世界の人間では誰も使えません」


「……なるほど」


 なかなか興味深い話である。

 てか、リリにもまだ聞きたい話あるし、一度ゆっくり二人から話を聞きたい。

 二人の話を総合すれば、かなり世界の全容が見えそうだし。

 はやく、この場を納めてゆっくり話を聞こう。


 私は死んでいった者達一人、一人石化していく。


「……何を?」


「ゲーム時代の話ですが、石化している間はその人物の時間が止まります。

 死んだばかりならまだ復活の呪文(リザレクション)が効きますから、石化して、時を止めておきましょう。

 転移してきたプレイヤーに復活の呪文(リザレクション)が使えるものがいるかもしれない

 もしかしたら生き返らせられるかもしれませんし」


「……おぉっ」

「ありがとうございます!」


 などと私の言葉に周りのエルフ達から歓喜の声が漏れた。


「さすが猫様っ!!我らエルフのためにそこまでしていただけるとは!!

 なんという思慮深いお人なのでしょうか!!」


 だーっと涙を流して感動しているコロネ。


 ……うん、やばいくらいキモイ。


 若干、コロネのお仲間であるはずの他のエルフも引き気味だし。


 泣いてるおっさんの顔など眺めててもしかたないので私は、プレイヤー君と一緒にいたエルフ娘サリーに視線を向ける。

 彼女は、石化しているプレイヤー君の石を物凄い形相で睨んでいた。

 うおぅ。なんか怖い。


 そして


 がっ!!

 全力で蹴飛ばす。


 がこんっと、倒れる、プレイヤー君の石像に、少女はまだ足りないと言った感じで手近にあった棒切れを掴むとがしっがしっと叩き出した。


「お前のせいでっ!!

 お父様やお母様、兄様が死んだっ!!村の皆もだっ!!

 返せっ!!お父様やお母様や叔父様やお兄様達をっ!!村の皆をっ!!

 死んでっ死んで死んでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 なにやら絶叫に近い罵声を叫びながら全力で、石像をボッコボッコにしだした。

 ……どうやら、このプレイヤー君、かなり悪どい事をしていたらしい。


「ソウ

 ソノ プレイヤー

 オンナ イガイ ミナごろシ シタ

 りゆうは ジブンニ したがわナカッタ」


 唐突に、リリが目の前に現れる。


 うどぁ!??


「リリっ!?いつの間にっ!?」


 つい、素っキョントンな声をあげてしまう。


「モウ、あんぜん ダッタから キタ」


 ああ、そうでした。リリ相手にはプライバシー皆無だったんだ。

 私の見てるもの聴いてるものがわかるらしい。

 忘れてた。


『それにしてもリリ、なんでそんなこと知ってるの?』

 

 私は心の中で問いかける。


『ココロの中 覗いた。

 自分より レベルがとても下の相手なら、ココロ覗ける

 カエデにも 同じことしたから 会話できる』


 実際喋るより、流暢な言葉で返事が返ってくる。


 ほほぅ。それは、なんと便利な機能だろう。うちのリリちゃん優秀じゃね?


 私がリリちゃんの優秀さに感動していると


『カエデ にも あの子の心の中 見せてあげる』


 と、手を掲げるのだった。

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