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74話 みつけた

「お二人とも余裕ですね?」


 結局死霊都市からかけつけた守護天使レイスリーネとファルティナと護衛のアルファーを連れてコロネは死霊都市の近況を聞くと会議室へ。

 何故か私とリリは締め出され、二人であてがわれた部屋でお菓子をほおばっている。


 その姿を呆れた顔で見つつ、レヴィンが呻いた。


「うん ネコ 慌てていない だからきっと なんとかなる」


 と、ポリポリとおせんべいを食べながらリリ。


「んー。一応頭の中でいろいろシミュレーションしてるぞ?

 魔獣セファロウスはゲームのとき、嫌というほど戦ったから。


 ……にしても、やっぱり火力が足りないよなぁ。

 こっちの武器がレベル900の武器だってのが痛い。

 確かにレベルが上がったおかげでレベル補正無視できる技とか覚えたけど、レベル1000相手には火力不足すぎる。

 守護天使達も、武器的にいえばレベル900のAクラスの武器しかもってないから。

 SSクラスの武器を装備している私たちより火力が低いくらいだし。



 さて、どうしたものかな。

 やっぱりトラップの糸にかけるしかないか」


 ただ、セファロウスは自滅牛のような馬鹿ではない。

 というか、あまりその場から動き回るタイプのボスではなかった。


 うん。動きまわってたら、NPC時代のコロネなんかまっ先に踏み潰されていただろうし。

 残り10%のHPのダメージを与えるほどの糸に誘い出すというのは正直厳しい。

 痛けりゃ動くのをストップするくらいの知能は持ち合わせているはずだし。


 ……となると、あれか。


 巨大な落とし穴を作成して糸を張り巡らせて、落下させてダメージを与えるか?


 ………いや。あいつ羽もってたなそういうえば。飛べるんだっけ?


 と、私が考えを巡らせていると。


「猫様、方法を思いつきました」


 言いながら部屋にコロネが入ってきた。

 その後ろには守護天使3人も付き従っている。


「方法?」


「……はい。猫様とリリ様はあまり賛成してくださるとは思えぬ作戦ではありますが……」


 と、コロネが苦笑いを浮かべるのだった。



 △▲△▲△▲△▲△▲


「じゃあ、何か、コロネが自爆呪文使いながら、そのセファロウスの心臓核を破壊するっていうのか?」


 コロネの説明を聞いたあと、私は改めて問う。


 以前コロネに渡した、ゲームの攻略本にはセフィロウスの超回復の秘密♪などという隠し設定もちゃっかり記載されていたらしい。

 その記載によると、セフィロウスが超回復するのはセフィロウスがもつ心臓核のせい。

 心臓核はダメージをうけると、すぐさま新しい細胞をつくりだしセフィロウスを修復するのだ。


 コロネが超回復を止めることができたのはその心臓核の動きを聖杯が封じる力があったかららしいのだ。


「はい。手引書にはこう記載されていました。

 新たな細胞は、セフィロウスの古い細胞と合致した時、レベル1なのが同レベルになると。

 つまり、細胞が誕生した時点ではレベル1です。

 なんとか私の自爆攻撃で、セフィロウスから一瞬だけでも、心臓核だけの状態にすれば壊す事が可能ということになります」


「それを壊せれば……回復できなくなるということか?」


「はい。うまく行けばそのまま消滅させられると」


「……でも、コロネ いっぱい死ぬ?」


 と、不満そうにリリ。


 以前女神の嫌がらせで手に入れた魔法書の中に、自らの命と引き換えに、レベル補正関係なしに大ダメージを与える書がはいっていたらしい。

 その技を連ちゃんで使えば、コロネの計算では心臓核の場所にまでたどり着けるらしいのだ。


「はい。ですがアルファーとファルティナが復活の魔法を使えます。

 同じパーティーに入っていれば遠距離でも復活させる事も可能です。

 二人が魔法が再度使えるまでのクールタイムの時間を計算すると、復活の指輪もニ個ほど使うことになりますが。

 私の計算では、それで心臓核まで壊せるはずです」


 後ろで物凄い嫌そうな顔でレヴィンも聞いているが……やはりこれからの事を考えると対魔王用に闇の女神の涙はとっておきたい。

 もし使ってしまったら、下手をしたらセフィロウスを倒した後に「魔王が現れた!」などと魔王と連チャンで闘う羽目になるかもしれないのだ。

 魔王まで現れてしまったらそれこそ勝ち目はない。

 コロネが痛い思いをして死にまくるというのは正直賛同しかねるが……他にいい案も思いつかない。


「……わかった。何か他の作戦をいまから考えるけど、どうしてもダメなようなら、それでいこう」


 私が言ったその時。


「……セフィロウス復活した!!」


 リリががばっと立ち上がり叫んだ。


「え!?」


 その場に居合わせた者の視線がみなリリに集中する。


「大きな大きな気がいま生まれた!! 帝都の近く!!

 たぶんあれセフィロウス!!帝都に物凄い速さで向かってきてる!!!」


「リリ様!竜化して皆をその場所まで!

 レヴィンはこのことをマルクに伝えてください!」


 私も慌てて魔力察知してみるが……確かにレベル1000の何かがこちらに向かってきている。

 このままだと帝都やばい。マジでやばい。


「仕方ない!!さっきの作戦で!!

 皆コロネのフォローを!!

 行くぞ!!」


 言って、私はひと足はやく、瞬間移動でセフィロウスの場所に向かうのだった。


 △▲△▲△▲△▲△▲


 異様な光景だった。

 魔獣セフィロウスはもともと、魔獣セギュウムと、よく似ている。

 カエルが異形に変形したような姿で、身体の部分の他に無数の取り込まれた人々の顔があるのだが……。


 そこに見慣れた顔があったのだ。

 セフィロウスの頭のてっぺんに……コロネに残忍な拷問をしたプレイヤーレオンの顔が。


 ゲームでは本来そこは宝石だったその場所に。


 他にもプレイヤーらしき顔は見られたが、他の顔は瞳に色がなく、ただ、あああああと声にならない悲鳴をあげているだけなのだが……。

 レオンの目にははっきりと色があり、愉快そうな笑いを浮かべている。


 レオンの顔をもつ魔獣セフィロウスが、物凄い速度で王都に向かっているのである。

 魔獣の通ったその道は、どす黒い紫色に変色し、死の香りを振りまいている。


『コロネっリリっ!!姿を隠して!!

 まず私が様子をみるっ!!』


 今向かっているであろう、リリとコロネに念話を送る。

 ――なんとなくだが、この魔獣にリリとコロネを見せてはいけない気がしたのだ。


 もしかしたら、レオンの意思が残っているかもしれない。

 そして、私は精神防御を解除し、リリとコロネにも私の見たものが伝わる状態にしておく。


「レオンっ!?」


 私が空中で叫べば、魔獣セフィロウスの上部のレオンの顔がこちらを向き――にたりと笑った。

 

 刹那。


 私がいた空間を、何かが通り抜けた。

 咄嗟にカンで瞬間移動で躱したが、その攻撃は早くてみえない。

 魔獣セフィロウスの舌が私の横を通り過ぎ、そして再び口の中に戻る。

 そして、私を見ていたレオンの顔がにんまりと微笑み。


「みーーつーーーけーーーた」


 狂気じみた笑を浮かべるのだった。


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