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73話 魔獣セファロウスの復活

「ネコ! コロネ! 大丈夫!?」


 別部屋でお菓子を食べていたリリが、クッキー片手に私達のいる部屋に駆けつける。

 おそらくギルドチャットを聞いて慌ててきたのだろう。


 そしてそのままぴったりと、コロネの背中にくっついた。


「あ、あの……リリ様?」


 困った顔になるコロネに


「相手、ワープ使える!ちょっとでも離れたら連れて行かれるからリリくっつく!」


 むっふーと抱っこされるリリ。

 うん。本人は至極真面目なのだろうが、子供がじゃれついているようにしか見えない。


「……どこにでもワープできるのではないと思います」


 アルファーがおずおずと意見した。


「……何か心当たりがあるのか?」


 私の問いにアルファーが顔を青くしながら


「女神に召喚されたプレイヤーは、全員耳の後ろになにか刺青のようなものをされていました。

 私はあまり詳しくないのですが、ファルティナが強制転移の刺青だと言っていた記憶があります。

 コロネ様にお伝えしておくべきでした。失念していました、申し訳ありません」


 答える。


「……すでに連れ去られたものを責めても仕方ありません。

 貴方の記憶を見ていたはずなのに見落としていた私にも落ち度があります。

 問題はこれからどうするかです。


 犯人はおそらく女神でしょうが……なぜ彼らを連れ去ったのかが問題でしょう」


 と、ため息をついた。


 ――そう、あのプレイヤーを連れ去るメリットがさっぱりわからない。

 戦力なら、プレイヤーより強い魔物などわんさかいるのだ。

 

 今更王位を追放されたプレイヤーなど何の役にたつのだろう?


「それなのですが、一つ心当たりが」


 と、会話に混ざったのは……何故かレヴィンだった。


「レヴィン!?何でここにっ!?」

 

 私が驚いて身をのけぞる。ってか君、いつからいたし!?


「はい。コロネ様に呼ばれましたので」


 と、今だタキシード姿のレヴィンがにっこにこ顔で言うが


「……呼ぶ予定でしたが、まだ呼んでいなかったと思うのですが……」


 と、コロネの言葉に


「レヴィン、リリと一緒だった 一緒に来た」


 と、リリが説明する。

 ああ、なるほど。どさくさに紛れてついてきたのか。


「それで、心当たりとは?」


 レヴィンにアルファーが、問う。


「はい。『魔獣セファロウス』が関係しているのかと思われます」


 レヴィンの言葉に、私とコロネが固まった。

 『魔獣セファロウス』

 ゲーム時代レベル100のレイドイベントのボスだった魔獣の名前だ。


 昔、あまりにも凶暴だった魔獣が神々の力で封じられたのだが、現代になって蘇ってしまい、それをプレイヤー皆が一丸になって倒すというイベント。

 テオドールがエルフの力を犠牲にして手に入れた聖杯『ファントリウム』でNPCだったコロネが『神々の紋章』と聖杯を使いその魔獣の超回復を防ぐという役割をになっていた。


 イベントでは、コロネに刻まれた腕の神々の紋章を通じて次元の奥深くに最後は封印されたはず――ああ、そうか!?

 なんで、こんな大事な事を忘れていたのだろう。

 コロネの腕に刻まれた紋章には『魔獣セファロウス』を復活させる事ができる可能性があったのか!?


「まさか、コロネの腕の紋章を使って魔獣セファロウスを復活させる気か!?」


 私の問いにレヴィンは、首をふり


「流石に自分ではそこまではわかりません。

 ですが、デュークが魔獣セファロウスを復活させることができると言っていた事があると、彼に妾にされていた女性が言っていました」


「何故、そのような大事な事をいままで報告しなかったのですか?」


 と、コロネが鋭い目で聞けば


「はい、今しがたリリ様の部屋でメイドになって働いていた女性を口説いて聞いた所でしたので」


 何故かコロネに睨まれて嬉しそうに報告するレヴィン。

 ――うん。この人もちょっとMっ気趣味があるのかもしれない。

 なにこの似たもの主従。

 私の周りの男性ってどうしてマトモなのがいないのだろう。


 コロネは頭を抱えて、


「魔素溜の方に気を取られすぎていて、プレイヤーから女神側の情報を集めるのをおろそかにしていました……本来ならまっ先にするべきことだったはずなのに」


 と、項垂れる。

 ってか、またこいつは……。


「てか、コロネお前はそれどころじゃなかったろ。

 そうやってすぐ自分を責める癖はやめろ」


 言って、頭をぐしぐし撫でればば、なぜか物凄く驚いた顔をされる。

 うん。最近リリの頭を撫でる癖がついてしまったせいで、コロネの頭もちょうどいい位置にあるからつい撫でてしまう。

 不可抗力だ。怒らないでほしい。


「でも、今更レベル100のボスが復活したところで痛くも痒くもないはずだけど……女神の狙いはなんだろう?」


 ごまかすように私が言えば、


「猫様、お忘れですか?元々魔獣セファロウスはレベル1000の魔獣です。

 それをテオドールと私が聖杯『ファントリウム』でレベルを100まで下げたと、以前見せていただいた本にはのっていました。

 つまり、魔獣セファロウスが復活すれば、レベル1000となります。

 しかも――回復を防ぐファントリウムも今では行方知れずですし、私も刺青がないので使用することができません」


 と、かなり絶望的なセリフをコロネが吐く。


 ………うん。それものすごくやばくない?


「あれ、それもう闇の女神の涙使うしか手立てはないよな?

 闇の女神の涙なら一定時間回復不能にできるし」


 私の言葉にコロネははぁーっとため息をついて


「……そうなりますね。出来ることなら対魔王用にとっておきたかった所ですが。

 

 とにかく、本来なら復活を阻止するのが急務ではありますが、復活の方法も分からなければ、彼らがいまどこに連れ去られたかもわかりません。

 現実的ではないでしょう。

 今出来ることはレベル補正無効にできる技や魔法を誰がどれだけもっているか把握することかと……」


 うつむきながら言うコロネの言葉は……結局、わりとやばい状況だと改めて認識させるだけだった。

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