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60話 従属の指輪(猫崇拝)

「何故――殺さなかった?」


 アルファーが歯ぎしりしながら、私たちを睨む。

 その体には金色の鎖がまかれ、動けないようになっていた。


 他の二人の守護天使も私達の事を鋭い眼差しで睨んでいる。


「まず――あなたたちは嘘をつくことは許されません。

 嘘をつけばその時点で、貴方のマスターを殺すことにします。


 天使の貴方達ならわかるでしょう?

 そこにいる少女の正体が」


 コロネのセリフに、アルファー達の視線がリリに注がれた。

 心を読める神の使いのドラゴン。白竜。


 彼らは本能的に理解した。リリは自分よりレベルが遥かに上であるということを。

 嘘は瞬時に見抜かれる。


 ――こうやって彼らの心が私にも伝わるように、念話を操れるようになってるし。

 リリ。まじ優秀。まじ天使。


 私の心のつぶやきなど他所に


「……了解した。

 何を聞きたい?」

 

 青い綺麗な髪をした女性の守護天使が聞いてくる。

 鑑定によると名はファルティナ。

 回復魔法を得意とする聖なる属性の守護天使だ。


「……まず。貴方たちにはマナフェアスとともに朽ちるか。

 それとも我主猫様に仕えるか。どちらかを選んでいただきます」


「それはつまり――我が主は」


「はい。人間の法で裁かれ死刑になるでしょう。

 助かる見込みはありません」


 コロネの言葉に、守護天使達の喜ぶ感情がリリを通じて伝わってくる。

 うん。部下に死ぬのを喜ばれるってマジ嫌われてるなマナフェアス。


「では――もし、猫様に仕えたとして、私たちは何を命じられるのでしょうか?」

 

 今度は凛とした表情で赤い髪の守護天使が尋ねてきた。

 名はレイスリーネ。火を司る守護天使。


「貴方たちが支配していた地域の安定に務めていただきます。

 マナフェアス亡きあと誰も指導者がないまま放置しておけば暴動などがおき、国が乱れるでしょう」


「つまり――私たちに統治しろと?」


「はい。一時の間ではありますが。

 マナフェアスに追い出された以前の国の重鎮などは私が保護しています。

 彼らに交代するまで、その間は貴方たちに治めていただきます」


「……それは、我らに償いの場を与えてくださる――ということでしょうか?」


 ファルティナに問われ、コロネは私の方に振り返った。

 つまり、ここは重要な部分だから私に言えと話を振ってきたのだろう。


 く、しゃべらないですむとか思ったのに考えが甘かった。


「……まぁ、そうなるかな。

 こちらにも都合があって、人手がたりないというのもあるけれど」


「都合…ですか?」


「旧マケドニア帝国をプレイヤーから解放したい。

 だから奴らが自分たちを恐れて国民を人質にとるなんて事をする前に潰さないといけない。

 あすの朝には出発する予定なんだ。

 死霊都市の方にまで私達だけだと手がまわらない

 出来るなら貴方たちには手伝ってもらえると助かる」


 私の言葉に三人は顔を見合わせ頷くと――そのまま頭を垂れるのであった。




 ▲△▲△▲△▲


「……で、どうやってマナフェアスから3人を譲渡させるんだ?

 ……まさか拷問とか?」


 一応三人の意思を確認したあと、私はコロネに聞いた。

 ちなみに守護天使3人は申し訳ないがまだ鎖でつながれた状態だ。

 まだマスターはマナフェアスだし。

 リリには念のためだが三人の見張りをしてもらっている。


「いえ、あのような残酷な事はしませんよ。 

 元々そういった事をする習慣がないのもありますが、私たちの世界には魔道具がありますからね」


 言って、ポケットからひとつの指輪をだし、一瞬目を泳がせたあと、何故かまた仕舞い込む。


 うん。今なぜ隠したし。


「コロネ、今のは?」


「い、いえ、これは別の用途の指輪でした。従属させる指輪はこち……」


 別の指輪を取り出すコロネだが


「いいから、今の指輪をまた見せてくれ」


 私が凄むとコロネは、えーーと目を泳がせる。うん。これはあれだ。

 変態の方のコロネが何かよからぬことを企んでる目だ。


「いーいーかーらーだーせー!」


 私がコロネを組み敷いてポケットに手をいれると


「きゃー猫様のエッチー!!」


 と、悲鳴をあげた。


「ええぃ!!お前そういうキャラじゃないだろ!!」


 と、強引にポケットから指輪を取り出した。

 うん。もうエルフの知り合いがいないせいかキャラ崩壊が激しい気がする。

 これは真剣にリュートかグラッドを連れてくることを検討したほうがいいかもしれない。


 強引にその指輪をポケットから取り出して、鑑定する。

 鑑定した結果……


□□□□□


 従属の指輪


 この指輪を装備するとプレイヤー猫まっしぐらを崇拝するようになってしまう呪いのこめられた指輪。


□□□□□


 と、でる。

 はい。どう見てもコロネ作です。


 なんつーもん作ってんだこいつ。


「コーローネー君?この指輪についてちょっと説明してもらおうかなー?

 もちろん君が作ったんだよね?」


 逃げようとするコロネの首根っこ捕まえて、顔を近づける。


「ね、猫様!!わ、私にも弁明のチャンスをください!!」


「ほほぉう何か言い分があるのかね?」


「は、はい!あります!

 以前私が精神世界に連れて行かれた時の事ご記憶でらっしゃいますでしょうか?」


「あーあったな。それが?」


「何故あの時は、システムが作動せす、猫様を崇め奉らなかったのか私なりに考えてみたのですが……

 恐らく魔族に思考誘導されていたのだと」


「あー。確かに。なんだかコロネ感じ悪かったし」


「はい。その節は申し訳ございませんでした」


「うん。まぁ、それはいいけど、それでどうして、それがこの指輪につながるんだ?」

 

「はい、私は、考えたのです……っ!!

 もしかしたら、システムの力よりも思惑誘導の力の方が強いのではないかと。

 自分で魔道具で猫様に過剰に崇拝しないように思惑誘導をかけ、その指輪を装備すれば変態にならないのではと!?」


 ぐっと拳を握りしめる。


「うん、話だけ聞くと物凄く効果のありそうな話だけど……

 今のコロネを見るとまったく効果がないんだが……」


 どう見ても今のコロネは変態モードです。ありがとうございます。


「はい……思惑誘導の魔道具の指輪に、さぁ思惑誘導の魔法を注ぎ込むぞ!!という所で……」


 ぐったり頭を垂れるコロネ。

 ……うん。大体オチは読めた。


「変態モードが発動して、私を崇拝する魔道具を作ってしまったと?」


「……はい。……こう、作ろうとすると意識が飛んでしまいまして、猫様を崇拝する指輪が100個ほど完成しました!」


 何故か最後は嬉しそうに報告する。

 うん。ダメだはやくこいつ何とかしないと。


「グラッドとかリュートとかと一緒にいるとき作ればよかったのに。

 あの二人と居る時はあまり変態モードにならないだろう?」


「ええ、私もそう思いまして……

 グラッドと一緒に作業していたはずなのですが……

 黙々と無表情で作っていたそうです……」


 く。変態モードはそんな応用までできるのか!?


「で、いまその指輪は?」


「はい!私の魔道具のアイテムボックスで大事に保管してあります!」


「はい。全部没収な」


 私が手をだすと、何故かコロネは傷ついた表情になって


「ええっ!?猫様酷い!?」


「何でだよ!?使うつもりなのかそれ!?」


「いえ、でもいつか日の目を見る日があるかもしれないと!」


「そんな日永久にないわっ!!全部よーこーせっ!!」


 こうして本日二度目のコロネと私のバトルが始まるのだった。



 ▲△▲△▲△▲


「……さて、大分話が逸れてしまいましたが……」


 コロネが乱れたマントをなおしながら話を戻す。

 もちろんコロネから私を崇拝するなどという魔道具は全部取り上げた。


「誰のせいだ。誰の」


 私がコロネから取り上げた指輪をアイテムボックスを仕舞いながらいう。


「申し訳ありません。

 それでマナフェアスの件なのですが、私が呼ぶまでは猫様は外で待機していただいてもよろしいでしょうか?」


「うん?なんでだ?」


 私の問いにコロネは少し困った表情になり


「その、猫様は感情移入しやすいところがありますので……

 魔道具の力とはいえ素直に言うことを聞くマナフェアスに情がわいてしまう可能性が」


「……ああ。なるほど」


 否定できないところが悲しい所だけど。

 確かにちょっと可哀想になってしまうかもしれない。


 結局、コロネの指示通り、私は守護天使譲渡されるときだけマナフェアスにあう事になったのである。



 ※コロネ作のアイテムボックスはスーツケース3個分くらい。リリも持ってます。

 ポシェットくらいの大きさです。


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