50話 魔獣セギュウム
エルフの大神殿
エルフの総本山というべきサウスヘルブの中央に位置する大きな神殿だ。
大きさでいうと……敷地面積だけならかなりの大きさがあるのではないのだろうか。
よくニュースで例えになる東京ドーム何個分で例えると……うん。わからん。
とにかく、大きい、装飾がえらく豪勢、神秘的といかにもファンタジーの神殿!といった感じだ。
私たちはあれから何日かの修行を終え、リュートに連れられてエルフの大神殿へとやってきていた。
「お待ちしておりました。猫まっしぐら様、リリ様、コロネ様」
と、神殿につくなり、私たちを出迎えたのは神殿長と思われる年配のエルフだった。
やたら仰々しい格好をしている神官達がずらりと立ち並び私達を取り囲む格好になる。
さらにその周りには各神々を型どった石像がずらりと立ち並んでいた。
そう設計されているのだろうか、ステンドグラスの光が石像に降り注ぎ、神々の石像は神秘的な輝きを放っている。
『な、なんだか包囲されてる気分なんだけど』
念話でコロネに言うと
『ここでは最大限のもてなしですので、気になさらないでください。
しかし、久しぶりに来ましたが、やはり神々の慈愛が満ちたこの神殿は素晴らしいですね』
と、神々を型どった石像を眺めながらコロネがややウットリした表情になる。
……うん。この世界の人間って神様大好きだもんね。
私たちが過ごした集落のエルフもそりゃもう何かちょっといい事があった程度で神殿に礼にお参りするほどの神様大好きっぷりだった。
コロネもこっそりと神々を拝んでいるのも知っている。
いや、別に堂々と拝めばいいのだが、何故か私に遠慮してるらしい。
『リリも神様の気好きだよ!とっても優しい』
リリもコロネの言葉にウンウン頷いていた。
私も全神様の信仰値は全て100%だが、魔法の威力があがったりと、それなりの恩恵があったので必死こいて神殿に通っただけなので、リリやコロネほどの信仰心はさっぱりもっていない。
『うん、そうだね』
と、適当に話をあわせておいた。うん、ごめんよ信仰心なくて。
に、してもこれだけ異界の女神が好き勝手してるのに、この世界の神様は一体なにをしているのだろうか?
これだけみんなに信仰されてるんだからちょっとくらい助けてくれてもいいと思うのは、私の我侭なのだろうか。
私がそんな事を考えていると
「それでは案内いたします。こちらへどうぞ」
と、リュートと神官達が私たちを案内するのだった。
△▲△▲△▲△▲△▲
「とうとう大神殿のチャレンジミッションですか」
扉の前でコロネがつぶやく。
私達の前にはいかにもラスボス部屋です!と自己主張している扉が鎮座しているのだ。
「こちらが、秘宝に示されていた扉です。中に入った者はいままで誰一人戻ってきませんでした。
どうかお気を付けて――」
と、神殿長らしき神官が私達に言う。
「ありがとう。だがその前に三人で作戦会議するから、三人だけにしてもらってもいいか?」
「はい。かしこまりました」
私の言葉に神官とリュートが部屋から退出していく。
『さーって、じゃあこれからチャレンジミッションに挑むわけだけど。二人とも昨日あげた指輪はきちんと装備している?』
『はい。【完全復活の指輪】ですね。装備しております』
『リリも装備してるよー!これで死んでも大丈夫なんだよね?』
『いや、大丈夫じゃない。確かにデスペナなしで100%生き返るが一回しか使えないから。
生き返ってから一定時間無敵時間はあるけど、ほんの数十秒だし。
死んだ場所が悪いと復活してすぐ死んでしまう可能性もある』
と、私。コロネに指輪の話を聞くまですっかり忘れていたのだが、そういえば生き返れるアイテムはあった。
だがこれも結構な激レアアイテムで、指輪は5個しかない。
課金のランダム宝箱からも滅多にでないレアアイテムなのだ。
大体課金のランダム宝箱の狙いはレアアクセサリーやレア魔法石だったりするので、ゲームでは出たらラッキー程度の物なのだが。
私も例に漏れず、重課金者だったので、これでも持ってる方である。
それだけこのアイテムは宝箱からはでないのだ。
とりあえず、リリにニ個。コロネに二個装備させておいた。自分は一個だ。
『気持ち的にはそれはないものと考えて。
それから、このチャレンジは私もはじめてだから、どんなギミックがあるかはわからない。
なので、チャレンジ中は念話で思考はブロックせずだだ漏れにする予定……だけどリリとコロネは大丈夫?
逆に集中できないとかになるかな?』
『リリは大丈夫だよー。ネコみたいに並立思念つかえるから』
『え?そうなの!?』
『うん。レベルの低い人の思考が勝手に頭入ってくるから、いつも他の子に処理してもらってる』
『なるほどホワイトドラゴンは生まれつきお持ちというわけですか……』
『く、リリちゃん相変わらずチートすぎるでしょ。じゃあコロネはどう?』
『私もスキルは持ち合わせていませんが大丈夫です。
それなりに何人かの話を聞き分ける事はできますので』
『OK。じゃあ二人も思考ブロック解除で』
『はーい!』『はい』
私の言葉に二人が同時に返事をする。
『じゃあ、行こうか!!』
そう言うと、私はゆっくりと扉を開くのだった。
△▲△▲△▲△▲△▲
『よく来た。冒険者達よ――』
扉に入り――うねうねしたような異空間のような場所で、私たちを出迎えたのは――
「テオドール……」
コロネが思わず呻く。
そう、チャレンジミッションにはまずイベントムービーのようなものが用意されている。
NPC達が、そのイベントを行なったあと、チャレンジが開始されるのだが……
目の前に居たのは、エルフ耳姿のアケドラル帝国皇帝テオドールだった。
私の知っているテオドールは人間だったはずだが……。
恐らく魔獣の力を封じる聖杯『ファントリウム』を召喚する時に、代償として捧げたエルフの方の魂――それが今目の前にいる彼という設定なのだろう。
彼の瞳に光はなく、私がよく知るゲーム上のNPCだ。
『ここは異界へと通じる道。
数多くのハーフエルフの命を神々に捧げ、封じていた魔獣セギュウムの復活が近づいている――。
魔獣セファロウスの復活により、また魔獣セギュウムも目覚めようとしているのだ。
すでに復活の時は近い。
全ての攻撃を無効化するセギュウムが世に放たれれば、世界は滅亡するだろう。
冒険者達よ――。
私の力がまだ通じる今のうちに、魔獣セギュウムを討ってほしい』
言って彼の手には宝珠のようなオーブが現れた。
『このオーブを破壊すれば、一定時間、魔獣セギュウムにダメージを与える事ができる。
これが魂の欠片でしかない私にできる限界だ。
――あとは君たち次第だ』
言う、テオドールの姿が歪む。
コロネの心が物凄く動揺しているのが伝わってくるが、そんな事などお構いなしにイベントは進んでいく。
急にテオドールの姿は消え、私たちは神殿のような場所に降り立った。
広い円上の広場があり、その広場を取り囲むように、7箇所、階段を登る道がある。
その階段の先には、先ほどテオドールが言っていたオーブが鎮座していた。
そして、
ズゴゴゴゴゴゴゴ
物凄い爆音とともに――それは上空から現れた。
黒い禍々しい塊。
醜い巨大なカエルにしか見えないそれこそが――魔獣セギュウム。
このチャレンジミッションのボスモンスターだった。
――――――チャレンジミッションのステージ(イラスト注意)――――――




