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47話 進展?


「ぶふぅっ!!」


 私の二人ともすでにレベル800になりましたというセリフに、リュートが盛大に紅茶を吐き出した。

 うおぅ!?汚っ!!


 とっさに避けたので紅茶は直撃しなかったが机は紅茶まみれである。

 何事もなかったかのようにメイドさんたちが駆けつけ、掃除していくさまはある意味すごい。


「ごほっごほっ、す、す、すみません……

 で、ですがもう800になったのですか!?

 一週間くらいしかたってませんよね!?」


 食い気味に聞く王子に


「ええ、いろいろありまして。

 レベルはとっくに800になってはいたのですが、コロネの義手が故障したのでいま修理しています。

 大神殿に行くのはコロネの義手の調整が終わってからですね」


 私がそう答える。


「……とっくにって……レベル500からレベル800ですよね……

 猫様のレベル上げの速度は恐ろしいです」


 リュートが目頭を抑えながらうめく。

 そう言われても、駄目女神が嫌がらせしてきたらボーナスチャンスとなったのだから仕方ない。


「……所でつかぬことをお聞きしますが、猫様は何故師匠が義手なのかはご存知ですか?」


 と、やや様子を伺う瞳で王子が尋ねる。

 コロネがどこまで私に話したのか確認しているのだろう。


「ええ、だいたいの話は聞きました。

 痛ましい話です」


 私も王子がどこまで知っているのかわからないので、ややぼかして返事をした。

 だが、王子はどこまで話したのかは察したのだろう。


「なるほど。師匠はお話になったのですね」


 と、紅茶を一口すする。


「ええ、一応」


 私もつられて紅茶を口にもっていき――


「……師匠がそこまでお話になったということは お二人の仲は進展していると解釈してよろしいのでしょうか?」


 私の答えにリュートがにっこにこの笑顔で聞いてくる。


 ……ん?進展?


「進展って何がですか?」


「はい。恋仲的意味での進展です」


「ぶふっっ!!!」


 ニコニコ笑顔のリュートに今度は私が盛大に紅茶を吐き出してしまう。


 リュートはあらかじめ予想してたのか、あっさり紅茶を避け、何事もなかったかのようにニコニコ笑顔でこちらをみやる。

 そして何事もなかったかのように片付けをはじめるメイドさんたち。

 よく訓練されているらしい。ってそれよりも!


「ちょ!?何いってるんですか!?

 そもそもそういう仲じゃないでしょう!?

 大体、見ての通り自分男ですよ!?男同士で恋仲もなにもないでしょう!?」


 そうだよ!?私とコロネがそんな関係だったら肉体は男なのだからホモになってしまうわ!


「え、でも魂が女性なら問題ないかと」


「あーるーわー!!BLになってしまうじゃないか!!」


「ビーエルですか?よく意味がわかりませんが……」


「例え魂が女でも肉体が男なんだから男同士じゃおかしいでしょうって話です!」


 私の抗議に王子は「はて?」と小首をかしげて


「プレイヤーの方なら性転換の薬をお持ちなのではないのですか?

 国王陛下もそれで女性になられましたし」


「え、国王陛下ってもうマジ女性だったんですか?」


「はい。プレイヤーの売っていた性転換の薬を使いましたから。

 身体は正真正銘の女性です」


 ああ、そういえば課金アイテムでそんなアイテムがあった。

 声まで女でおかしいなと思ったら、もうマジもんの女性になってたのか。

 しかしあいにく、私はまったく興味がなかったのでそのアイテムをもっていない。

 というか問題はそこじゃなくて


「って、そんな事自分に話していいんですか?

 極秘事項とかだったりしないのですか?」


「はい。国王陛下自ら自慢話として、言いふらしています。

 私が話さなくてもそのうち猫様のお耳にはいるでしょう」


「前から思ってたんですけど大丈夫なんですか?あの国王……」


「はい。仕事に関しては恐ろしく優秀なので……」


 しばし流れる沈黙。


 リュートは私の反応にふむと、顎に手をあてると


「ああ……なるほど、猫様は陛下のように男性の身体が気に入ってしまったのでしょうか?

 では師匠の方を女にすれば問題ないかと」


「ちーがーうーわっっ!!

 無理やりな理論で話戻すなっ!!

 大体、その前に付き合ってないという前提があるだろうがっ!?」


「え?あのように命懸けで助けに行くほどの仲でまだお付き合いしてなかったのですか!?」


 何故か物凄くリュートに驚かれる。

 くそう。こいつ演技うまいわ。


「お・う・じ。絶対昼間の仕返しですよね?

 空を飛びまくった事根にもってるんですよね?」


 青筋をたてて聞く私に


「はい。それも半分あります」


 悪びれる事なくにっこり返す。

 くそう。仕返しに仕返ししてくるとはこの野郎。


「ですが残り半分はそうだったら嬉しいという希望もあったのですが……」


「ないです。

 大体、コロネが私を変に崇拝してるのはシステムのせいで、本心じゃないですから」


「システムのせい……ですか?」


 私の言葉にリュートが不思議そうに聞き返すのだった。


 △▲△▲△▲△▲△▲△▲


「……なるほど。

 恋慕の情を抱いているせいかと思いましたが……。

 確かに師匠の変わりようはおかしかった。

 あれはNPC時代が関係していたのですね」


 私の説明を聞いてリュート王子がふむっと頷いた。


「そうです。大体おかしいでしょう?

 いくらNPC時代に戦闘風景が見れたとはいえ、それだけであそこまで盲信的になるなんて」


 私ははぁーっとため息を付きながら、椅子に深く座り込んだ。

 うん。本当に心臓に悪い。

 確かに顔は観賞用としては好みだが、コロネをそういう感情でいままで見たことがなかったから正直驚いた。

 周りから見ればそういう風に見えていたのだろうか?

 っていっても、私は男なので中身が女と知っているリュートくらいしか、そんな感想は抱かないだろうけど。


 しかし、コロネと恋愛とかないよね。だって変態だよ変態。



 ………いや、それはまぁ、私のせいなんだけど。

 はじめて出会った時の印象が変態すぎて、恋愛対象ということなど頭にもなかった。

 ってか、そもそも……この世界の人間を恋愛対象としては私は一切見てなかった。


 ……リアルはリアル。ゲームはゲーム。


 ゲームでは恋愛感情を抱かない。

 これはネットゲーム時代から一線引いた考えだった。


 ………やっぱり私はまだこの世界をゲームとしてみてるんだな……。


 改めて痛感させられる。

 なんだか慕ってくれてるリリやコロネに少し申し訳なくなってくる。


「でも、そのお話だとカンナ様という女性も対象なのですよね?」


 と、リュートが髪をかきあげながら尋ねる。


「ええ、そうなりますけど」


「幼少期に師匠に聞いたお話はいつも猫様の事ばかりでした。

 私は一度もカンナ様のお話は聞いたことはありません。

 一概にシステムだけのせいとは思えません」


 く。こいつまだ粘るか。


「カンナはコロネの背後で魔法を使ってる事が多かったから視界に入らなかったからだと思いますよ。


 ……リュート王子。それ以上粘るつもりなら、また自分と空中散歩します?

 なかなか夜空も気持ちいいものですよ?」


 と、にっこり凄むと、


「はい。今日はそろそろ解散しましょうか」


 と、やはりにっこり微笑み返してくるのだった。




 △▲△▲△▲△▲△▲△▲


『迎えに来なくてもだいじょーぶ! リリ 今日 ここ泊まるー!』


 リュート王子と会話を終え、つないだままの念話でリリにそろそろ迎えに行こうか聞いた所、帰ってきた返事がこれだった。


『猫様、リリ様なら大丈夫ですよ。グラッドの子供達と仲良く遊んでいますし。

 今からこちらに来られるのも大変でしょうから、猫様はそちらでゆっくりお過ごしください』


 と、コロネ。


『うん?ならそうしようかな。二人もあまり無理しないようにね』


『はーい!ネコおやすみなさい!』


『はい。明日には終わらせるようにします。猫様もゆっくりお休みになってください』


 言って二人との念話を終了する。


 ……うん。ちょっとなんだか寂しい。

 リリちゃん全然寂しがってないとか!

 うおーこれが子離れされるときの親の心境かぁぁぁ!?

 いや、マジ寂しい。


 や、ちょっとリュートとの会話の件もあってちょっとセンチになってるのもあるけどさ。


 でもまぁ、久しぶりに一人でゆっくり寝られるってのはありがたいかな。

 腕枕ってなにげに長時間してると辛いし。

 リリ腕枕好きだから寝付くまで腕枕してあげてたけど、地味にきつかったから、今日は一人でゆっくりできる。


 ……べ、別に寂しくなんかないんだから。……うん。


 私はトボトボと一人でいつものコロネの家にもどるのだった。


 △▲△▲△▲△▲△▲△▲


『猫様、少しよろしいですか?』


 お風呂からあがって、自分の部屋でベットに寝っ転がり、久しぶりに私物の漫画本を読み漁っていた所で、急に念話でコロネに話しかけられた。


『うん?どうしたの?』


『それがその……』


『コロネっ言うのだめっ!!』


 コロネが何か言いかけて、リリが止めに入る。


『何かあったの?リリ?』


『ううん。なんでもないよ!楽しいよ!』


 と、リリがあたふたと私に答える。

 ……これはあれか。もしかして


『リリ、ひょっとして一人で寝れないとか?』


『ち、ちがうのっ!!リリおとな!一人で寝れるっ!!』


 やたら慌てて答える。うん、どうやら図星だったらしい。

 おう、やばい、ちょっと……というかかなり嬉しい。


『猫様お騒がせして申し訳ありませんでした』


『そうだよ!コロネ大袈裟!リリ一人で寝れる!!』


 と、強がりを言った二時間後――やっぱり一人で寝るのは嫌だと、リリは一人で家に戻ってきた。

 うん。親離れはもう少し先でいいのよリリちゃん。

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