表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/117

25話 国王陛下?

「猫まっしぐら様。リリ様お二人にお会いできて光栄です」


 華やかな髪飾りに煌びやかなドレスを着た女性が上品な笑顔で微笑んだ。

 さすがエルフの国の君主とかいうだけあって想像どおりの超美形。

 頭にはでかでかと物凄い宝石がついた王冠が輝いている。


 私達は結局コロネの予想通り、エルフの王様とやらに会う事になった。


 案内されるがまま、エルフの集落の神殿に招かれ、やたら豪勢な広場で謁見したのだが……。


 玉座のように座っていたのは、先ほど紹介された女性なのだ。

 私とリリもテーブルを挟んで女性の前に置かれた同じような玉座っぽい椅子を勧められる。

 私とリリ、女性を取り囲むようにエルフのお偉いさんと、リュートとコロネが並んでいる形だ。


 これはあれだ。椅子が同格ということは、あちらは私をそのような目で見ているという意思表示なのだろうか。

 正直こちらの世界の貴族とかのマナーなんてまったくわからない。


「こ、こちらこそ光栄です」


 とりあえず椅子に座ると、私は引きつった笑顔を返す。

 いや、だって目の前にいるの女だよ!?国王っていうから男だと思っていたんですけど!?


『えーと、コロネ。

 こちらの世界では女性でも王様呼びなの?王女様とか女王とか呼ばないの?』


 私は隣に立っているコロネに念話で訪ねた。

 正直女性なら先に教えておいてほしかったというか、心の準備が違うというか。

 しかしコロネは表情をかえることなく視線は一定方向を維持したまま


『いえ、女性なら女王呼びが正しいです』


 答える。


『え、だってこれ……』


『間違いなく国王です。

 以前から女装趣味はありましたが、まさか公の場でも女装してくるとは私も予想外でした。

 リサーチ不足で申し訳ありません』


 ええええ!?これ王様なの!?

 この世界の重要機関を治める長が、女装趣味とかそれを止めない周りとか、大丈夫なのかこの世界!?


 私が一抹の不安を感じている間に、女王…じゃなくて国王から今までの礼をのべられる。


 うん。やばい。全然頭に入ってこないんですけど。

 扇で口元を隠して微笑む様はどこからどう見ても女王様だ。


 私が冷や汗だらだらな所、リリの方が堂々としたもので、テーブルに置かれたお菓子をパクパク食べていた。


『お菓子美味しい でも ネコのお菓子のほうが おいしかった』


 などと、呑気に感想を漏らすほど余裕である。


「さて、形式的な挨拶はここまでに致しましょう。

 猫まっしぐら様は堅苦しい事は好まないとお聞きしましたので、これから先は無礼講でもよろしいでしょうか?」


 先ほどまでよりずっと砕けた口調で女王もとい国王が言い、にっこり微笑む。


「ええ、そちらの方が助かります。

 それと呼び方も猫で結構です」


 私の答えに、女王 (もうこっちでいいや)は微笑んだ後、目配せで部下達に合図を送る。

 エルフの高官達は皆一礼してぞろぞろと部屋から退出しだした。


 残ったのは私とリリ、女王にリュート、コロネの五人。


「警備は構わないのですか?」

 

 私が聞くと


「ふふ。ご冗談を。猫様達に手に負えない相手が来としたら、私の部下ではそれこそ手も足もでません

 私は今こここそが世界で一番安全な場所だと思っておりますわ」


 答える女王。てか声まで女なんですけど、どういうことなの。

 聞きたいけど、聞くべきではない。うん。私のカンが告げているので間違いない。

 私は曖昧に愛想笑いで返した。

 言葉の中には私たちが何か変な気を起こすことなど微塵も心配してませんよアピールも含まれているのだろうか?

 これが噂の上流貴族のやり取り(キリッ)かもしれない。

 何か気の利いた言葉を返すべきなのかもしれないが

 日本に生まれた平々凡々の私には貴族のやり取りとか無理です。勘弁してください。


 


「それにしても猫様、私が来た事自体にはあまり驚かないのですね。


 ……行動が読まれていたかしら」


 チラリと女王が意味ありげにコロネを見やる。

 が、コロネは女王に軽く会釈しただけだった。


 まさかの無言返し。

 こういう場所、私苦手なんだからなんか言って話を進めてくれないだろうか。


 そんな私の心を読み取ったのかはわからないが


「それでは猫様、昨日お話していた魔道具です。

 それらしいものを選んで参りました」


 リュートがずらりと並べられた魔道具の前に私を案内するのだった。

 


△▲△▲△▲△▲△▲


 鑑定した結果。


 監視を防ぐという点ではどれも全部外れだった。


 ここにあるものは全てゲーム化前の時代に作られたものが多いらしく、精神系の魔道具が多かった。

 相手を絶望に落とし込んで自殺に追い込む魔道具やら、相手に恋心を抱かせる魔道具やら、媚薬系やら

 黒魔術師か!?とツッコミを入れたくなるようなものから

 妊娠中に胎児の性別を見分ける魔道具など現代日本にあっても役に立ちそうなものから色とりどり揃えられていた。


 うん。何故このラインナップだし。


 私が鑑定すると、リュートが一つ一つメモをとっていたので

 こいつら本当は使い道のわからなかった魔道具を私に鑑定させただけじゃないだろうなとさえ思う。


 ただ数個、役立ちそうなものもあった。


 精神攻撃を防ぐ指輪とネックレスだ。


『コロネ、これなんてどう思う?』


『貰っておいてもいいかと思いますが、あまり効果は期待できないと思います』


『どうして?』


『エルフの宝物庫にあるのもはゲーム化する前のエルフ達が作ったものが多いのですが、エルフが作ったものでは魔族の攻撃は防げないでしょう。

逆にエルフが作った程度の魔道具で防げるような精神攻撃なら、猫様や私達では精神防御が高すぎてダメージをうけません』


『え、それっていままでの行為全否定じゃない!?』


『最初に説明しようかとも思いましたが、どのみち猫様の性格ではこの会議は断れないと判断しました。

 やる気がないまま会議にでるのも……猫様は顔にでやすいので。

 それに何か面白いものがあるかもと多少期待はしていましたから』


 く、ブルータスお前もか!?

 私に単に鑑定させたかっただけなのか!?


『うーん、それじゃあエルフの会議の時に使う魔道具っていうのはもらえないの?

 あれ、いかにも盗聴を防ぐっぽい魔道具だし』


『持ち運びするには大きすぎて実用的ではありません。

 こちらの世界の平民の家一軒分の大きさの水晶を四つ配置して初めて効果を発揮します』


『確かにいらないわ……』


「ご期待にそえそうな物はありませんでしたね……」


 こちらの心を読んだのかと思うようなタイミングで女王が落胆の声を漏らす。


「申し訳ございません猫様。

 こちらの魔道具は、私達エルフの中でも精鋭の魔導士達が材料や材質から使い方を研究したものだったのですが……

 まさかこうも実際の用途と、研究結果と違うとは思いもよりませんでした」


 どうやら残念だったのは女王の方らしい、見るからに落胆している。

 これも演技だったら貴族怖い。マジで怖い。


「出来ればゲーム化される前の記憶がある者が研究に参加してくださると嬉しかったのですけど」


 言って再び意味ありげな視線をコロネに送るが、コロネは再び一礼するだけで無言でかわす。

 てかお前喋れ。


「ふふ。相変わらず私は大賢者様に嫌われたままですのね。

 我父が貴方にしたことを思えば仕方ないのかもしれませんが」


 言って女王がセンス越しにため息をつく。

 何故かずっと無言だったのは何か訳ありだったわけか。

 私がチラリとコロネを見るが、相変わらず無表情で私の横で控えている。

 普段は気持ちが高ぶったりすると、何となく相手の気持ちがほんのりと伝わったりするのだが、今日はまったくコロネの気配が伝わってこない。

 念話の防御をバッチリにしているということは、私とリリには話したくはない話なのだろう。


「さて、困りましたわ。

 猫様に渡すお礼がありません」


 と、こちらを真剣な瞳で見やる。


「いえ、お気になさらず、お心遣いだけで結構です」


「そういうわけにも参りません。

 ……そうですね。物で無理なら情報でお礼というのはいかがでしょうか?」


「情報…ですか?」


「はい。猫様にも有益な情報だと思いますわ」


 私の問いに女王がいたずらっ子的な笑で答えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ