表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/117

24話 優先順位

『優先順位?』


『はい。

 猫様はこちらが想像していた以上に人が良すぎて、行動に予測がつかないといいますか。

 私の予想と猫様のやりたい事に差がある気がします。

 私としては猫様はすぐにでも元の世界に帰りたいのかと思っておりましたが、こちらの世界の事もきちんと考えて行動してくださっていますし。

 

 それに……まさか命懸けで私を精神世界まで追ってきてくださるとは思いませんでした。


 まず、魔族の件でお礼を言うのが遅くなりました。

 助けていただき、ありがとうございました』


『そこは、前にも言ったけど仲間なんだから当然でしょう?

 リリとコロネに何かあったら全力で助けるよ。

 それにコロネが連れ込まれたのだって半分以上私のせいだし』


 私の言葉にリリは「ありがとう!リリも!」と私に抱きつくがコロネは何故か顔を背ける。

 

 えーと、私もしかして何かまずいことを言ったのだろうか?


 気になってよく見れば、肩を震わせうつむいているが耳が赤い。

 どうやら照れているらしい。

 

 うん。普段あれだけ感情露にこっちに感動したなどと言ってるくせに、何故こういう時は隠そうとするのか。

 マジで誰かこの子の取り扱い説明書をつくってくれないだろうか。意味わからん。

 あれか、これがデレツンというやつなのだろうか。

 うん?違うか?

 とにかくこれが可愛い女の子なら萌となるかもしれないけどなぁ。相手残念イケメンだからなぁ。



『コロネ?』


 心配そうに尋ねるリリに


『……あ、いや、あのすみません。

 正直に申し上げれば、まさか猫様が私を仲間と認識してくださっているとは夢にも思いませんでした。

 その、とても嬉しいです、本当に……ありがとうございます。


 ですが、同時にとても危ういとも思っています』


『危うい?』


『私もリリ様も猫様とお会いしてまだ実質一週間もたっていません。

 それなのに仲間として認めてしまっています。

 悪い言い方になってしまうかもしれませんが、たった一週間で命をかけていい対象として見てしまっているのです。

 猫様は情にお厚い。好意を寄せる者を仲間認定してしまわれているなら、これからも猫様にとっての仲間は増えていくでしょう。

 その者達が危機に陥るたびに命を投げ出してしまうような行為をしてしまうのではないかと。

 猫様の命を狙ってくる輩も、猫様のその部分を利用してくるでしょう』


『うーん』


 私は考え込む。や、言われてみれば確かにリリとコロネに会ってから一週間もたってない。

 コロネから見れば、『人類みな兄弟!』みたいな考えをしてるノー天気女に見えてしまってるかもしれない。


『そう言われても、リリは念話でリリの感情も送ってもらったりしたから、他人の気はしないし

 コロネだって、NPC時代からの知り合いだし。

 コロネのレイド戦って一番やった回数多いし、初めてのレイド戦だったから思い入れもあるんだよね。

 だから親しみがあるわけで。


 私だってそんな誰彼構わず仲間認定はしないよ?』


 私の言葉にリリとコロネがジト目になる。

 え!?なんで!?


『ネコ 自覚ない』

『無自覚の天然というやつですね』

『リリ、わかる 一年後 仲間 100人になってる』

『流石にそこまでは……いえ、あるかもしれませんね』


 と、リリとコロネ。


 ちょ!?待って!?何その友達100人できるかなみたいなノリ!?

 流石に私も100人も命かける対象とか無理だわ!!


『二人ともどういう目で私の事みてるの?』


 なぜか二人揃ってジト目で無言で見つめてくる。

 くっそーこういう時だけ息ぴったりだなこの二人。


『わかった。なるべく親しくなりすぎないように気をつける。

 ……これでいい?』


 自分でもぶすーっとした顔になる自覚はあったが、しぶしぶ答えると


『無理にとはいいませんが、意識していただけるとありがたいですね。

 それと、命が狙われているとわかった以上、これからは常に人や物には【鑑定】のスキルを使ってください。

 もちろん、私にもリリ様にもです。

 鑑定は誘惑状態や呪い状態も判別できると聞きましたので』


『了解。確かに鑑定は使う癖つけておいたほうがいいね。

 今回もあのレシピ本を鑑定しておけばこんな事にならなかったし』


『それについては頼まなかった私に落ち度がありますので……。

 私の記憶では、魔道具に呪いをかけられるのは魔道具を作った本人のみのはずでした。


 相手が女神や魔族といった規格外だったため、呪いをかける事が可能だったのか

 私もどこかで記憶が改ざんされてるのか……

 どちらかはわかりませんが、注意がおろそかになっていたのは確かです』


『記憶が改ざんといえば、コロネが精神世界に引き込まれる前に神官長が何たらって言ってたけど覚えてる?』


 私の問いにコロネは首を振って


『その時の様子はリリ様に記憶と映像を直接送っていただき、確認したのですが……

 どうしても思い出せません。

 リュートに頼み、神殿の記録も調べてもらいましたが私が神官長だった記録もありませんでした。

 精神に攻撃を受けて錯乱していたか。

 私もこの世界がゲーム化する前の数年の記憶が抜けていますので、その時の事を思い出したのかもしれませんが……

 私にもわかりません』


『ってことはそこらへんにゲーム化した理由が隠れてるって事になりそうだけど』


 私が顎に手をあてて考え込むポーズととると


『では、まず、その件について調べるのが最優先ということでよろしいでしょうか?』


 コロネが尋ねる。


『うーん。その件についてはとりあえず後回しにしようと思う』


『後回し……ですか?』


『そりゃ、はやく元の世界に帰れたら嬉しいけど、こんな危ない状態の世界にリリとコロネを置いていけないよ。

 私の世界にリリとコロネを連れていければ一番だけど、それはそれで戸籍がないとか寿命が違うとか問題山積みだし。

 まずは、この世界をある程度安全な状態にするのを目標にしようと思う。

 とりあえず、人間の領土で暴れまわってるプレイヤー連中をなんとかしないと』


「「………」」


 私の言葉にまた無言になる二人。


『えー。またこれお人好しって怒られるパターン……?』


 私の言葉にリリはぶんぶん頭を横にふり


『そういう所ふくめて ネコだーいすきっ』


 と、満面の笑顔で抱きつかれるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ