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19話 光の神と異界の神

「キッシャァァァァァァ!!」


 もう、何度目になるかわからない絶叫をあげて、蜘蛛型フロアボスモンスターが滅んでいく。

 私の鎌の一撃にあっけなく滅んだのだ。


 蜘蛛型のボスモンスターはしゅぅぅぅぅぅと煙をたてて、宝箱を落としていった。


『うーん ちょっと 可哀想に なってきた』


 神殿で待機しているリリがぽそりと感想を漏らす。

 そう、私はレア装備をゲットすべく、ボスモンスターに挑んでいた。

 これでもうボスモンスターを18回ほど殺している。


 ボス瞬殺→10分後復活する→ボス瞬殺


 これをひたすら繰り返しているのだ。以前ボスモンスターだったリリからすると他人事じゃないのだろう。

 私はメンバーの装備をゲットすべく、ひたすらボス部屋篭っていたのだ。

 ここらへん、ゲームと変わらない。

 まぁ、ゲームだと他のプレイヤーもいるので、このようにボス部屋占領!なんてウハウハな事はできないのだが。


『ふふふ。甘いねリリちゃん。

 レア装備を狙うからには、情けは無用。

 目的の物がでるまでは、撲殺しまくり

 ひたすらレアドロップするまで繰り返すべし!!』


 興奮気味に私が言うと


『レア装備 話するときのネコ 

 ネコ話すときの コロネに似てる』


 ポツリと言い返してくる。


 ……。



『いぃぃぃやぁぁぁぁぁ!!

 流石にその感想はないわ。

 あの変態とは一緒にしないでくれ!!

 私のは純粋たるプレイヤーとしての探究心と向上心であって、断じてあの変態とは違うっ!!』


 私の必死の抗議に


『リリ、こういう時 最適の 難しい言葉知ってる

 どんぐりの背比べ!』


 どどんっと効果音をつけてもおかしくないような(たぶん)ドヤ顔でリリが答えた。


『いや、だから違うから!!

 それにその言葉ドヤ顔するほど難しい言葉じゃないし!』


『えーと、じゃあ変態という名の紳士?』


『いや、なんていうか微妙に最適な言葉なような、そうでないような……。

 どこで覚えたのそんな言葉?

 と、とにかく、コロネのは単なる変態で、私のレア装備愛は純然たる向上心!

 わかった?』


『うん! わかった コロネ変態 ネコ向上心!』


 リリが元気よく答える。うん、さすがリリちゃん物わかりがいい。いい子だわ。


『……お二方、私も念話に参加している事を忘れていませんか……?』


 私とリリのやり取りに、おずおずとコロネが参加してくる。

 

 うん。同じ部屋にいないし、しゃべらないからすっかり忘れてた。


『あー、ごめん邪魔しちゃった?念話やめておいたほうがいい?』


 私がわざと論点をずらして、聞く。


『いえ、大体解読は終わりましたから。

 猫様の方はお目当ての物はでたのでしょうか?

 私のレベルが上がっているところをみると、大分倒したようですが』


『え、レベル上がってるの?』


『はい。経験値が入っているみたいです』


『うーん。ゲームだと階層が違うと経験値届かなかったけど、こっちだと同じダンジョンだと経験値届くのかな?』


『どうでしょう?あとで検証してみる必要あるかもしれませんね』


『コロネ、本 なにかいてあったの?』


 私とコロネの会話にリリが入り込んでくる。

 そうだよね。リリちゃんはそっち知りたいよね。


『ああ、そうでした。

 ですが、話すと長くなりそうなので一度合流したほうがいいかと』


『OK。

 一応、欲しいセット装備はでたし、一度戻るね』


 言って、私はもう一度湧いたボスモンスターを無慈悲に瞬殺したあと、リリ達の部屋にもどるのだった。



 △▲△▲△▲△▲△▲


『結論から先に言わせていただきますが、この遺体の女性は悪意をもって殺されたと言っていいでしょう。

 リリ様のせいではありません』


 コロネの言葉にリリがほっとした顔になる。

 まぁ、私をこっちの世界に召喚して気にするような優しい子なのだから、自分がきっかけで死んだというのは心が痛むのだろう。


『で、どういう経緯なの?』


 私の問いにコロネは説明しはじめる。


 この遺体の女性はマリア。アケドラル帝国の元お姫様だ。

 元――とつくのは、帝国はプレイヤーによって乗っ取られ、国を追われる身だったらしい。

 マリアは復讐を誓うが、レベル200のプレイヤー達に敵うはずもなく、部下も侍女も皆殺され、逃げていた所を、プレイヤー「ハルト」に助けられた。

 ハルトはマリアの境遇を聞くと、力を貸すと誓い、ハルトとマリアの旅が始まった。

 戦力を揃えるためハルトとマリアは、仲間を集め、レベル上げに勤しんでいたのだ。


 その日もハルト達は普段通り明鏡ダンジョンでレベル上げをしていた。

 ちなみに明鏡のダンジョンはレベル200前後の敵がでてくる内陸にあるダンジョンで、このカルネル山脈からはかなり遠い位置にあるダンジョンだ。


 普段と変わらないレベル上げのはずだった。


 だが、その日は違った。

 ハルト達の前に女神の使いと名乗る、プレイヤーが現れたのだ。

 女神に属さないプレイヤーは殺すと告げられたらしい。

 プレイヤーのレベルは200。

 すでにレベル200を超えているハルト達5人なら余裕で倒せる――そう思った。

 が、戦うと同時にトラップが発動したのだ。

 

 そして、そのトラップにより、遠い地のダンジョンのボス部屋に飛ばされた。


 それが、いま私達のいるリリのいたボス部屋である。

 ハルト達のメンバーは一番レベルが高いハルトでも280しかなく、リリに勝てる可能性は皆無だった。

 そこで、ハルトは考えたのだ。全員を救う方法を。


 それが、リリを外に追い出す事だった。

 

 転移の呪文書は一人にしか使えない。5人全員は無理なのだ。

 だったら発想を逆転させればいい。5人無理なら敵の方を追い出せ、それがハルトの判断だった。


 転移の呪文書でボスモンスターを追い出し、ハルト達は難を逃れたのだ……が。


『ですが、問題はそのあとでした』


『最高レベル280じゃ、このダンジョン出るの無理だよね……』


 私の言葉にコロネは頷く。入口付近でレベル320くらいの敵でボス部屋の前は380レベルのモンスターがうようよしてるのだ。

 

『この後の日記は、外を調査してくると、この少女を置いて、他のメンバーがこの部屋から出ていった所で終わっています』


 あとは想像つくよなぁ……。

 調査団は全滅したんだろう。ハルト含め。

 この少女を置いて逃げるようなプレイヤーならそもそも転移の呪文書で自分一人で逃げるだろうし。


『に、してもまたでてきたね。女神の使い

 神威も同じような事言ってなかった?』


 私がぽつりと感想を漏らす。確か女神に逆らうなんちゃら?と神威が言っていた気がする。


『そうなんですか?初耳です』


 と、コロネ。

 ああ、そういえばコロネは気絶してたわ。


『女神ってだれの事だろう? 女神様 いっぱいいる』


 確かにこの世界 火の神 水の神 命の神 闇の神と女神様はいっぱいいる。

 名前的に一番怪しそうなのは闇の女神アルテナ様だが、このゲームの闇とは全てを包隠して癒してくれる慈愛の力扱いなので、闇だからって悪ではない。


『うーん。女神側のプレイヤーって人間的にどうよ?って奴しかいないよね』


『同感です』


『と、考えると光の神セシウスを倒そうとした異界の神々の中の一人っぽいけど。

 結局光の神セシウスと戦った異界の神々ってどうなったの?』


『光の神セシウス様に異世界に追放されたと、伝承ではなっています』


『じゃあ、結界内に実はまだ残ってたとか?

 この前、50年前に結界が一度壊れたって言ってたよね?

 その時外に抜け出した可能性も』


 私の問いにコロネは顎に手をあてて


『そうですね。可能性は0ではありませんね』


 と、考え込む。


『そもそもその光の神セシウスと異界の神の闘いって、いつごろの話なの?』


『2000年以上前と伝えられています』


『うーん。それ確かなの?』


『……はい?』


 私の問いにコロネがぽかんとした顔になった。

 や、そんな「ナニ言ってるのこいつ?」みたいな顔されると困るんだけど。


『いや、だって、コロネ前言ってたよね。ゲーム化する前と後ではいろいろ変わったって。

 その神々の闘いってのもゲーム化する前と後で違うのかなぁって思って。


 エルフが結界で守ってる地域ってゲームのとき実装されてなかった地域がそのまま封印されている感じだし、

 なんだかゲーム化のために作られた結界っぽいんだよね』


 言いかけた、私の裾を物凄い力でリリが引っ張る。


『リリ?』


『コロネが おかしい』


そう言ったリリの手は――ひどく震えていた。


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