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15話 エルフ強化計画

「ああ、取り乱してしまいました。申し訳ございません……」


 よろめきながらコロネがすまなそうにベットから起き上がった。


「コロネ大丈夫?」


 リリが心配そうにコロネの顔をのぞき込む。

 その後ろではコロネの侍女達も心配そうに様子を見守っている。


 結局あのあと、コロネをベットに運びこんだところで、本人はすぐ目を覚ましたのだが


「ええ、申し訳ございません。

 こう――神話級の呪文書があれほどの数でてくるとは……」


 てか、人がレベル700でも驚かなったくせに、呪文書くらいで驚くっておかしいよね?

 意味不明だよ。驚くならそっちだ。

 基準がさっぱりわからんからこっちも対応困るよ。

 コロネって自分が貰える立場になると急に常識人になるとこある。

 私がいない所ではもしかしたら、物凄くマトモな人なのかもしれない。




 うん……ないな。




 私の結論を余所にコロネは目頭を抑えて、深いため息をつくと


「こう、何といっていいのか

 私達が、プレイヤーに手も足もでない現実をまざまざと見せつけられて驚いたといいますか。

 

 これだけ次元が違いますと、人間の領土がプレイヤーにいいようにされてるのも仕方ない事なのかもしれません」


「いいようにされている?」


「――はい。

 こんな話を猫様にお聞かせするのはどうかと思いましたが――。

 いつかは人間の領土にも向かう事になると思いますし、話しておいた方がいいかもしれません。


 エルフの領土はまだ無事ですが、すでに人間の治める国の中にはプレイヤーに乗っ取られた国も多々あります。

 その理由は真っ当なものもあるのですが、中には納得できないような理由で王を追放した国などもありまして」


 コロネがため息をつきながら


「こんな言い方をしてしまうと、不愉快に感じられてしまうかもしれませんが


 圧倒的な力で弄ばれているとでもいいましょうか……」


 つまり神威みたいなプレイヤーが王になって好き勝手してるということか。


「ですから、先程の猫様のエルフ達を鍛えていただける話は本当に助かります。

 今はまだ人間の領土でプレイヤー同士で勝手に小競り合いをしてくれているので、エルフの領土まで被害はありません。

 ですがプレイヤーがエルフの領土に手を出してこようものなら、我々は手も足もでませんから。

 

 神威というプレイヤーのように結界の重要性も理解せず、国を運営されては、高レベルの魔物が世に放たれる事になってしまいます」


「なるほど……それは困るな」


 元の世界に戻る方法を見つける前に、魔物が暴れまくって世の中世紀末状態とか正直避けたい。


 それに……最悪、元の世界に帰れる方法がない、なんて可能性がないわけでもないのだ。

 世の中平和状態でいてくれた方がいい。


 ちょっと前の私なら ちゃんと教育を受けた日本人ならそれくらいちゃんと理解しますって と考えたのだろうけれど。

 神威とかいう馬鹿を見たせいで、その考えは吹き飛んだ。

 

 とにかく、常に最悪を想定しておくことは悪いことじゃないだろう。

 これは思っていた以上に本格的に「エルフ強化計画」をちゃんと実行したほうがいいのかもしれない。



 △▲△▲△▲△▲△▲



「よろしくお願い致します」


 あれから次の日。

 カルネル山脈の麓で、私達と、コロネの連れてきた騎士達が合流した。


 そして騎士達を紹介すると

 各地の結界を守る神殿に務める 銀狼騎士団の団長 ブラウと 副団長 セシル と シャミル

 国王を直々に守る為の騎士達の集団 聖盾騎士団の団長 クランベール

 そしてエルフの国サウスヘルブの第三王子 リュート


 この五人だ。

 五人はとても嬉しそうに目を輝かせてこちらをみていた。


 てかやばい。偉そうな役職の人ばかりじゃん。


『そうそうたるメンバーすぎてドン引きなんだが』


 コロネとパーティーチャットで会話する。まだ残りの5人とはパーティーは組んでいないので聞こえてはいないはず。


『申し訳ありません。カルネル山脈の結界調査という名目で、5人が来ていまして……。

 恐らく、ですが国王陛下が猫様と顔を繋げておきたくて、こちらに派遣したのかもしれません』


 ああ、メンバー募集しようとしたら、ちょうどいたのねこの人達。

 そりゃこれだけ偉そうな肩書きの人がいたら、さすがのコロネも断れないか。


『ただ、この五人でしたら、首都にある転移の魔方陣を使え、どのエルフの集落にも一瞬で行く事ができますから

 ある意味鍛えるのに最適といえば、最適かもしれません』


『へぇ。そんな魔方陣あるのか』


『はい。ただ、王族の血筋しか使えませんので、誰でも使えるわけではありませんが』


 く。使おうと思ったのに。王族しか使えないとか。使えない。


 釈然としないものを感じつつ私も仕方なく挨拶すると


「私 リリ 宜しく」


 私たちと会話をしているせいか、大分流暢になった言葉でリリも挨拶するのだった。

 


 △▲△▲△▲△▲△▲


『ネコ、リリ居たダンジョンここだよ』


 カルネル山中腹あたり。その神殿はそこにあった。



 結局あの後。

 エルフのお偉いさん方のレベルを250まで上げた所で、あとはコロネに任せてリリと私はリリの昔のいたダンジョンに来ていた。

 レベル上げ隊とダンジョン探索隊の二手に別れたのだ。


 コロネもレベル500行ったし。

 敵のレベルも大分下がってきて300あたりの敵しかでなくなった。

 いままで、レベルがじゃんじゃん上がってたのは高レベルの敵を倒せたからで、レベル300くらいの敵ではレベルのあがりも悪く、面倒になってきたというのもある。

 


 まぁ、本当は別に一日中、エルフのお偉いさん一行に付き合ってもよかったのだが……。


 耐え切れなかったのだ。

 

 ほめ殺しに。


 モンスターを倒すたびにあがる、賞賛と絶賛の嵐に私が耐えられなかったのである。

 もう照れ恥ずかしいというか、なんというか。

 褒められ慣れてないんだよ!!

 褒め言葉の嵐に悶絶しまくって耐え切れなかったんだよ!


 あんな、イケメン連中に素晴らしいだの、神がかってるだの、言われて耐え切れるほど精神図太くない。


 大体、考えてもみて欲しい。

 たかがゲームで戦闘経験積んだだけの女と、長年本当の命のやり取りをしながら鍛えた騎士達。

 同じレベルと同じ装備、そしてスキルをとったとしたら、圧倒的に勝つのは後者の方なのだ。


 私が強そうに見えるのは、レベルとスキルと装備がいいからにすぎない。


 これを自覚してるから、プロに褒められても、それは違うだろっと思ってしまう。


 コロネだって褒めまくってるじゃんと思われるかもしれないが、あれは変態枠だからいいのだ。

 あー、また言ってるよと、聞き流せるが、マトモな人に褒められすぎるとか、神経持たない。


 結局、逃げるようにリリと、こちらのダンジョンに来たのである。


『でも、コロネ 置いてきてよかったの?』


 念話でリリが不思議そうに尋ねる。

 ちなみにパーティーはまだ他のエルフとも組んだままなので、パーティーチャットで話すと他の人にも会話が全て筒抜けになってしまう。

 正直、それは避けたい。念話なら、声が女声にはなってしまうが、リリと二人だけで会話できるからこっちの方が便利なんだよね。 


『いいのいいの。

 そもそもコロネが連れてきた連中なんだし。

 

 に、してもダンジョンのわりに小さい神殿だね?』


『リリ いたの この神殿の奥。

 リリのいた部屋の奥、さらに階段があって地下いける』


『ただ、リリがいた頃は、プレイヤーが

 「この先はまだレベル開放されてなくていけない」言ってた

 見えない壁があって、 中入れなかったはず』


 あーつまり、その先の地下は未実装地域(レベル上限が開放されないといけない地域)だったって事か。


 ゲームでは実装されなかった地域か。やばいちょっとワクワクする。

 まだどのプレイヤーも行ったことのない地区ってことだよね。


 レベルいくつまでのボスモンスターがいるんだろう?

 楽しみすぎる。


 ふふふ。まだ誰も手に入れた事のないレア装備が眠ってるかと思うと燃える。


 やっぱゲーマーたるもの、そのレベル帯の最高装備を装備したいという欲求は抑えられない。


 自分の装備を最強装備にしたいのもあるけど、リリもコロネもレベル500超えたし、装備を一新してあげたいしね。


『よーし、それじゃあいっちょ行きましょうか!』


 私の気合の言葉にリリがこくりと頷くのだった。


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