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14話 呪文書

「これはまた……このような装備をいただいてもいいのでしょうか?」


 私が差し出した装備にコロネは困惑の声を漏らした。


 あれから、三人で山を降り、今はコロネの別荘で休憩をとっている。

 明日はリリとコロネの二人に頑張ってもらおうということで、リリとコロネに丁度よさそうな装備をアイテムボックスから取り出したのだ。


 コロネに渡したのは、 グラシクルの杖。

 あの神威が使ってたものと同じ杖だ。自分と同レベルの精霊が(レベル300まで)一定時間20体まで呼び出せる。

 それに攻撃力もなかなかいい。精霊魔法ダメージ10アップというおまけ効果もついている。



 防具は一覧にすると


 精霊師の帽子:魔法詠唱時間を5%カットできる

 精霊師のローブ:状態異常完全無効・魔力アップ・4大属性ダメージ10%カット

 精霊師の手袋:魔力アップ・MP10%アップ

 飛躍のブーツ:素早さアップ


 と、いった感じ

 


 ちなみにこの精霊師シリーズは装備を3つ以上装備すると、ネトゲで同じみ『セット効果』を発動する。

 セット効果は精霊魔法の魔法のダメージ10%アップ。

 パーティー恩恵効果20%アップ。

 消費MP20%カット

 パラメータ5%アップとなかなかいいものである。


 レベル200で装備できるアイテムで、ゲーム内でも魔導士にかなり人気のあった装備だ。

 かなりのレア装備ともいえる。

 運よくゲームで入手して、後で商店で売ろうと思っていたのだが、売る前にこの世界に召喚されてしまったのだ。


「かまわない。

 どうせ、自分は魔導士ではないから装備できないし」


「しかし、これはもう国宝級……いえ、エルフの国とてこんな魔法付与された装備は用意できません。

 神話級の装備といっても差支えないかと」


 まだ渋るコロネを余所に


「ミテ! ネコー にあう?」


 私に貰った装備を着込んでぴょんぴょん飛び跳ねてるリリの姿。


 身体に似合わないほど腕に大きな鍵爪を装備し、忍者のような制服を着込んでいる。


 リリの装備はドラゴンの装備は正直よくわからなかったので竜人専用の装備だ。

 ちなみにゲーム内では人種は好きな人種を選べ、竜人もそのひとつ。

 ドラゴンが人化してそのまま進化した種族となっている。


 黄金龍の鍵爪:物理ダメージ20%アップ

 不思議なピアス:状態異常完全無効 SP消費 10%カット

 黄金龍の鎧:物理ダメージ30%カット 魔法ダメージ10%カット

 黄金龍の腕輪:ステータス10%アップ

 飛躍のブーツ:素早さアップ


 黄金龍シリーズの3セット効果 攻撃速度+30%



 コロネの装備に比べると魔法効果が少なく感じるが、ゲーム内においては攻撃速度+30%はなかなかの壊れ性能。

 『アテネ』サーバーにおいては竜人ばかりずるいと苦情がでるほどの激レア装備なのだ。


 まぁ、ターン制の『ガイア』サーバーにおいては攻撃速度が必要なかったのでゴミ装備だったけれど……。

 人数の多いガイアサーバーでは不人気だったおかげで、売れずにずっとアイテムボックスで眠っていたわけで、今回リリにあげることが出来たのだからある意味感謝しないといけない。


 ちなみに黄金龍の鎧なのだが、なかなかセクシーというか、ほぼ下着に近い鎧だ。

 露出が多いのに、何故か露出部分も防御出来ちゃうのはゲーム上の仕様ですとしか言いようがない。

 しかし、いくら防御できるからといって、幼女にこの格好はまずいだろうと、その上から女性用の忍者っぽいアバターを着させた。


 もうちょっと露出が少ないアバターが欲しかったけど、あいにく自分が男キャラのせいで女キャラのアバターはこれしかもってない。

 それでも忍者姿のリリちゃんまじ可愛い。


「そうだな。リリ。可愛いぞ」


 頭を撫でてやるとえへへーと言わんばかりに、嬉しそうにくるくる廻るリリとは対照的にコロネはまだ装備をみて唸っている。

 なにやら葛藤があるらしい。


 コロネの事だから「猫様にアイテムを頂けるなんて!」と速攻受け取るのかと思ったが、意外にこういうところは律儀らしい。

 しかし、パーティーメンバーである以上、装備はきちんとしてもらわないとこちらが困る。

 あ、そうだ。


「あ、コロネ。

 因みにそのブーツ 自分が昔使っていたお古だから」


 と、言うと


「ありがたく頂きますっ!!」


 私の言葉に食い気味にコロネが答える。

 うん、それでこそコロネだよ。

 謙虚なコロネなんて誰も望んでないよ。





 ……いや、変態の方こそ嫌だけど。

 やばい。最近私まで感覚麻痺してきてる。


 しかしなー装備効果はそこそこいいものだけど、私のもそうだけど結局はレベル200時点での最高装備なんだよなー。

 レベル700でこの攻撃力は低い。

 これがゲームの世界ならレベル700のもっといい装備が手に入るはずなんだけど……


「所でこちらの世界ではレア装備とかどうなっているんだ?

 モンスターは何も落とさないし」


 そう、あのレベル1200の古代龍ですら、アイテムを何も落とさなかった。

 これがゲームならレアアイテムとか何か落ちただろうに。

 とりあえず死体は回収しているが、この死体だってどうしたらいいかわからない。

 解体とかしないとやっぱり売れないのだろうか?


「アイテムは主にダンジョンです。

 ダンジョンで倒したモンスターは死体ではなく宝箱がドロップします。

 ゲーム化する前はダンジョンなど存在しませんでした。

 ですから、ダンジョンはゲーム時代の名残がそのまま残ったものと私は考えています」


 ダンジョンなんて昔は存在しなかったんだから、ゲーム時代のそのまま残しちゃえばいいよね!と残したという所だろうか。

 この世界を元に戻した神様がいるのだとしたら、意外にやる事が雑だと思う。

 


「ダンジョン? リリ 昔そこにいたよ」


 ああ、そういえばリリって昔神殿っぽいダンジョンでボス役やってたんだっけ。


「カルネル山脈にもダンジョンが存在するのですか?」


 コロネの問いにリリは頷き。


「うん ある!

 ……あれ?リリ、どうしてダンジョンから 出た?

 覚えてない」


「もしかして外に出たのが最近でシステムから開放されたのも最近なんじゃないか?」


 私がリリに問う。

 前からリリは300年も生きてきたはずなのに幼いと思っていたが、それだったら納得できる。


「うん そうかも?」


「まだシステムが残ってるダンジョンか――面白そうだけど……入って大丈夫か?」


 私がちらりとコロネを見やれば、私の考えていた事をなんとなく察したらしく


「もし、また私たちがNPC化してしまう事を心配していらしゃるなら、恐らく大丈夫かと。

 私も、いろいろ試した事がありますので」


「いろいろ?」


「ええ、その頃はNPC化したのを覚えてる人間や獣人の協力者がいましたからね。


 犯罪者を使って、実験を行いました。

 少なくともモンスターを倒したり、ダンジョンに50年以上暮らしてみたりといったことくらいでは戻りません。


 しかし、ある一定条件を満たすとまたシステムに組み込まれてしまうという可能性もありますから

 100%大丈夫という事は断言できませんが」


「ええ!? リリ もう NPC ヤダ!」


 ぷぅっと頬を膨らませて首を横にぶんぶん振る。


「でも、この世界の真相がわかる何かが中にあるかもしれないし、そのダンジョンはまたあとで調査してみよう。

 自分が中に入る分にはたぶん問題ないしな。

 とりあえず、明日はもう少しカルネル山の魔素を薄めておこう。

 コロネ、明日、信頼できそうなエルフの戦士を5人集められるか?」


「はい。可能ですが、何かするのでしょうか?」


「8人でパーティーを組んで、明日はそのエルフ達のレベル上げもしよう。

 自分たちがこの土地に居なくても、結界が壊れた時対処できる人間がいないと困るだろ?」


「なんと慈悲深い!!

 私たちエルフのためにそこまでしてくださるとはっ!!」


 大げさに祈りのポーズをはじめだす変態。

 あ、やばい。このままだとコロネが変態モードに突入してしまう。

 これ面倒なんだよね。


「そんなことより、コロネ。この世界の人間はどうやってスキルを獲得するんだ?

 ステータス画面はでないのだろう?」


 私の問いに感激モードに突入しかけたコロネが、


「はい。そうですね。

 剣や魔法などは練習しているうちに、才能があれば獲得できる感じです」


 あっさり普通モードに戻る。


「ですが、何分プレイヤーの方と違い、システムの声も聞こえませんし、ステータスも見れません。

 ですから一般にはそもそもスキルという概念がありません。

 レベルは【鑑定の石】があれば鑑定できるのですが、スキルまで読み取れる魔道具は存在してませんからね」


「じゃあ、 リリは ネコみたいに スキル振りできない?」


 しゅんとするリリにコロネが苦笑いを浮かべて


「残念ながら。私もリリ様もスキルを振ることはできません」


 ええー。なにそれ不便だな。

 スキルが獲得できるかできないかってかなりデカイのに。

 明日は二人のスキル上げも兼ねる予定だったのになぁ……。

 スキル上がらないのかぁ。

 いや、スキル自体はあるのか?そこらへんはどうなんだろう?

 ん、まてよ?


「だとすると、魔法はどうやって覚えるんだ?」


「古代遺跡や現在ではダンジョンの宝箱で見つかる呪文書ですね。

 かなり高価なものなので、魔導士になれるのは金銭的に恵まれていて、なおかつ才能のある人物のみとなっています。

 ですので、この世界では魔導士はかなり貴重な存在とされています」


 あー。呪文書か。

 そういえばプレイヤーも高位の魔法はスキルじゃなくて呪文書で覚えるんだった。

 自分魔導士じゃないから忘れていた。

 

 昔はモンスターから出るレアな呪文書を売って儲けたけど、いまは呪文がプレイヤーに行き渡ったのかあまり売れなくなってたしなぁ。


 そういえば、売れなくてタンスの肥やしになった高位の呪文書ならかなり持っていた気がする。


「じゃあ、この呪文書があれば、コロネも呪文が覚えられるのか?」


 と、持っていた呪文書をアイテムボックスから全種類だしてみる。


「拝見させていただきます」


 言ってコロネは呪文書を手にり、何個か中身に目を通した後



「……」

 無言で天を仰ぎ




 ――そのまま卒倒した。

 うん。何故だ。

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