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12話 勇者召喚

「国に伝えに行くと言っていたので、もっと時間がかかるものだと思っていました」


 リリ、私、コロネの三人がでコロネの召使いが用意した食事を食べつつ、私は素直な感想を口にした。

 コロネは何事もなかったかのように、フォークにパスタを巻き


「はい。国には遠方でも通信のできる水晶を使って報告しました。

 ここから普通に向かっていれば1ヶ月はかかる位置にありますので」


「ああ、なるほど」


「所で、猫様、一つお伺いしたいのですが、もし国王陛下や神官達が貴方にお会いしたいという場合。

 会う事は可能でしょうか?」


 コロネの問いに、私は眉を潜める。


 ヤダ。

 メンドクサイ。


 や、元の世界に帰るために会う必要があるとかだったら、喜んでいくけど、結界がどうのこうのとかいう、わけわからん理由なら行きたくない。

 私に聞かれてもわからん。


 それに、普通の日本人が異国の国王に謁見とか、無理。作法とか覚えるのめんどいよ。


「はい。かしこまりました。

 断っておきます」


 私の意図をよんだのか、コロネはあっさり引き下がる。


「陛下より猫様には、今回プレイヤーを捕縛してくれた事に

 感謝の意を伝えて欲しいと伝言を預かりました

 謝礼の品を後日送ってくるようです」


「それはどうも。

 ――というか、随分あっさりと引き下がりますね?」


 国王陛下に会ってみて欲しいとか、粘られるかと思っていたが見逃してくれるらしい。


「当然です。

 高レベルの猫様相手に、エルフの王国といえども、手出しはできませんから。

 くれぐれも粗相のないようにと、念を押されました」


 ――そう言われてしまうと、人間扱いされてなくて、それはそれで複雑なものがある。


「ああ、もちろんレベルの具体的な数値は伝えてはいませんのでご安心を。

 それに、例え国王陛下に来いと言われようが、私が猫様の意見を尊重しないわけないじゃないですか!

 私の心は猫様に捧げておりますっ!!」


 ぐっと拳を突き上げて、変態が宣言するが


「それで、結界の方はどうなるんですか?」


 私はあえてスルーする。

 いや、だって国王陛下より尊重されるとか、宗教っぽくて怖いわ。


 スルーされた事をさして気にせずコロネは、首を横にふると


「あとは神官達の仕事ですね。

 猫様もご存知かと思いますが、私は一度人間の国で宮廷魔術師をしていた事があるので

 こういったエルフの国の極秘事項には関わらせてもらえないのです。

 何かわかったとしても、私に連絡は基本きません。


 今回は緊急事態だったため、エルフでも一番レベルの高い私に応援要請がきたにすぎません。

 それより前は、世界各地を旅していました」


「旅ですか?」


「はい。猫様には確かお話した事があったかと思いますが……。

 『この世界が一度ゲームの世界になってしまった』と、いうことを覚えてる人物が私を含め数名しかいません。

 それも、300年経つうちに、覚えていた人間や獣人は寿命で居なくなってしまいました。

 NPCだった記憶があるものが今では私とリリ様しかいないのです。


 私は知りたいのですよ。

 何故一度、世界がゲームと呼ばれる世界になってしまったのか

 そして、何故システムから開放されたのか」


 言ってコロネはぷすっと料理の一つである『じゃがいも』をフォークで串刺した。


「例えばこの『じゃがいも』です。

 私の記憶ではゲーム化する前は、こんな穀物は存在しませんでした」


「――え?そうなんですか?」


 と、いうことはあれか?

 ゲームにするために植物や言語まで日本に合わせたのが、そのまま世界に適用されたって事?


「はい。

 ゲーム化する前とした後では、植物や、言語、魔法など大幅に仕組みが変わってしまったのです。

 レベルもゲーム化する前は存在しませんでした。

 食事や水分をとってもトイレに行く必要のない身体になったり、以前なら考えられない事です。


 それなのに、誰もがこんな大きな変化を何事もなかったかのように受け入れている。

 ゲーム化する前とは違うという認識すらないのです。


 知りたいと思いませんか?自分の記憶が間違っているのか。

 それとも世界が本当に変わったのか。

そして、もし自分の記憶が正しいなら、何故自分だけ覚えているのか」


 ああ、確かにその気持ちはわかる。


「だから、その真実を調べていると?」


「はいっ!ですから猫様に出会えた感動はどれほどのものだったか!

 私の記憶は間違いではなかった!

 NPC時代の記憶を覚えていると思い込んでいたわけではなく

 私は確かに一度NPCをしていたという確信がもてたのですっ!


 猫様の存在こそが私の記憶を裏付けてくださっているのですっ!!」


 涙を流しながら感極まった表情で叫ぶ。

 

 いつもなら、気持ち悪っ!

 と思うところだが、今回はなんとなく気持ちわかる。

 本人はそこまでは言及していないが、リアルで「この世界、実は一回ゲームになったんですよ」なんて言えば日本だったら下手すりゃ病院送りである。

 こちらの世界でもそりゃ馬鹿にされまくっただろう。

 それでも、コロネは自分の記憶を信じて調べていたのだ。

 感慨深いものがあるのだろう。


「でも、私以外にも前からプレイヤーは居たんですよね?」


 ここで私は首をかしげる。

 私が居なくても、プレイヤーがいたのならコロネの記憶は正しいと証明されたはずだ。


「はい。しかしプレイヤーが現れたのがここ最近。

 30年前からの話なのです。

 それに、プレイヤーという認識ではなく、『勇者召喚された勇者』という事になっていましたから」


「勇者召喚?」


「はい、ある王国が、他国を占拠するために、勇者召喚という名の召喚術でプレイヤーを呼び出したのですが……。


 ミイラ取りがミイラになるとでも言いましょうか……

 レベルが高いプレイヤーが王国の命令を聞くはずもなく、逆にその国はプレイヤーによって支配されています」


 わぉ。カオス。


「その勇者召喚の召喚術が皮切りに、召喚術でプレイヤーが間違って召喚されてしまう事案が増えていまして。

 私はその調査をしていました。


 もちろんその知識は猫様のお役にたてると思います。

 と、いうわけでして、是非このコロネも猫様の旅に加えてください」


 最後に満面の笑を浮かべてとんでもない提案する。

 さりげなく自分の有用性をアピールする方向に話をもってきやがって。


 リリの顔を見れば、「お話終わったの?」と言わんばかりに小首をかしげる。

 その口の周りと利き手にミートソースをたっぷりとつけていた。

 どうやら、大人二人の会話中、手づかみでパスタを食べていたらしい。

 どおりで静かだと思った。


 うう、話に夢中でリリにフォークの使い方教えてやらなかった。

 そんな私の後悔をよそに


『リリ、コロネ一緒いいと思う。

 コロネ本当に 猫好き。

 嘘ない。信用できる』


 リリが念話で話しかけてくる。


 うん。まぁ、そこらへんは心配ないと私も思う。

 てか、こんな知識豊富で、私が知りたい事調べてた人物なんて、本来なら土下座してでも仲間になってもらうべきだ。


 ただ、一緒にいると、とんでもなく精神面で疲れる。


 問題点はそこだけなのだ。


 私は、はーっと心のなかでため息をつくと


「――わかりました。よろしくお願いします」


 渋々ながらも了承するのだった。


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