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9話 魔界とエルフ


「――なるほど。

 そういう経緯でしたか――」


 私の説明を聴いたコロネは、深刻そうに頷いた。


 結局、私は昨日あったことをコロネに全て話した。

 リリが龍であることも、古代龍を倒した事も。

 隠すべきか迷ったが、コロネは変態なだけで、悪い人間――もといエルフではないと思う。

 何より、自分の命を捨ててまで、部下を逃がそうとしたのは確かなのだから悪人ではない。


「……それで、深刻な事態とはどういう事ですか?」


「カルネル山脈は我らエルフが神々の結界を維持する事によって、凶悪なモンスターが山から降りられない。

 それはプレイヤーの方々もご存知ですよね?」


「ええ、ゲームでもそういう設定でしたから」


「あの山には本来、山の山頂、山の中腹、山の麓の三箇所に結界が張ってあるはずなのです」


 ……あ。

 

 その言葉に、私はリリのセリフを思い出した。


「今まではこんな強い魔物と出会ったことはなかった」と。


 いままでは結界が張ってあったから、リリのいるエリアまでは古代龍が降りてこれなかったのだ。


「――つまり、結界が破られていると?」


 私の問いにコロネが頷く。


「はい。リリ様が三層のうちのどのエリアに居たかは不明ですが

 レベルが400もあったこと、そしてドラゴン族という事を考慮すると、恐らく中腹あたりのはず。


 そして、リリ様が結界で通れなかったのは 山の麓 だけ」


「つまり、既にカルネル山の結界は二箇所失われている――と、言うことでしょうか?」


「ええ、恐らく。

 もし仮にリリ様が山の麓にいたとしても、古代龍が山の麓まで降りてきてしまっている事になりますので」


「と、言うことは、もし最後の結界が破れたら古代龍クラスの魔物が、エルフや人間の世界に出てきてしまう……?」


「はい。流石に猫様が相手にしたような古代龍クラスはもういないでしょう。

 ですがエルフや人間、そして猫様以外のプレイヤーのレベルではどうしようもできないクラスの魔物が山から降りてくる事になります」


 えええええ、マジやばいじゃないですかー。

 やだよ、そんな世紀末。



「あの山はもともと、異界の神々と結託し、光の神を倒そうとした古代龍カエサルを封じるために張られた結界です。

 カエサルを倒した今、本来の役目は終えたともいえますが……。

 ただ、結界を張った事により、古代龍カエサルから溢れ出す魔素が凝縮される形となったため、強い魔物が発生してしまって……。

 レベル800くらいの魔物はいるかもしれません」


 あ、レベル800くらいなんだ。

 それならレアアイテム使わなくても何とかなるかも?




 いや、でもやっぱりレベル100差は相手をしたくない。

 一匹とは限らないし。群れて襲ってきた日には、無理ゲーすぎる。


「そうならないためにも。あと残りの結界を死守するしかありませんね」


 私の言葉に、コロネが頷く。


「しかし、問題があります。

 何故、結界が破れたのか、その理由がわからないのです」



 △▲△▲△▲△▲△▲


 この世界には神々が強力な魔物を封じた土地がある。

 人々はその地を『魔界』と呼んでいた。

『魔界』の近くには必ずエルフが住み、その神々が封じた結界を先祖代々守っているのだ。

 カルネル山脈もそのうちの一つである。

 エルディアの森の五箇所に集落をつくり、その中央には聖なる樹『ユグラシル』存在している。

 エルフ達はその五箇所の集落で神を祭って儀式を行なっていた。

 神器に魔力を注ぎ『ユグラシル』が魔力を結界に送る事で、結界を維持しているのだ。

 ちなみに神器に魔力を注げるのは神の使いであるエルフだけ。

 この世界ではどの種族も神々とエルフに敬意を払い、決して殺める事はしないという。


 エルフは他の種族からも守られてはいるのだが、

 何かのきっかけで、神器に魔力が注げない事があるかもしれないため、結界の魔方陣には幾重にも予防線を張っている。

 本来なら5ヶ所のうち、一箇所が魔力が注がれなくなった程度で、結界がなくなる事はないはずなのだ。

神威のせいでサリーの集落の神器に魔力が注がれなかったとしても、問題ない。


 

 何か異常があれば、エルフ達の総本山とも言うべき、サウスヘルブの国王や神官などがすぐに異常を察知して遠方から魔力補充してくれるらしい。


 だが今回サウスヘルブの神官達は「神器も傷一つついてないし、『ユグラシル』からカルネル山に流れる魔力にも魔方陣にも異常が感じられない」との事で結界は異常なしと判断したのである。

 だからコロネも、その報告を聞いて胸を撫でおろしていたのだが……


「猫様とリリ様の話によると、すでに破れてしまっている。

 それなのにサウスヘルブの神官達がその異常すら察知できていない。

 これは大問題です。

 本来なら王や神官達は結界がなくなった事を察知できるはずなのですが……」

 

「実は察知できる力がないのに、権力を振りかざすため、できる振りをしていた可能性は?」


 私の問いにコロネが首を横に振る


「50年前、他の場所で結界が一つ消えた事がありまして…。

 そこは5重に結界がある場所なので大事には至らなかったのですが

 その時はすぐに王や神官達が異変を察知し対処したはずです」


 うーん。じゃあ何でだろう?


 私が考えるポーズをとる……が、異世界人の私がわかるわけがねぇ。


 この世界びみょーにゲームと違ったりするし、魔力に詳しいわけじゃない。


「リリ、何か思い当たる事は……?」


 ひょっとしたら可愛いリリちゃんならわかるかもと、尋ねてみるが


「リリ、わかラない」


 と、申し訳なさそうに返事をしてくる。


 デスヨネー


「とにかく。

 結界が破れた時期的に神威とかいうプレイヤーが関連してるのは確かです。

 彼に話を聞いてみましょう」


 コロネの提案に、私は心の底から嫌悪感を覚えるのだった。


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