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8話 ステータス

 チュン、チュン


 心地よい、小鳥の鳴き声と朝特有の日の光で、私は目を覚ました。


 見上げれば、そこは見慣れない木製の天井。

 いかにもファンタジーの世界!!と言わんばかりのログハウスを思わせる部屋にいた。

 何故か私の隣ではスヤスヤとリリが寝息をたてて一緒に寝ている。


 ……うん、どうやら夢ではなかったようだ。


 もしかしたら、目を覚ませばいつもの私のPCとオタグッズの溢れる部屋に戻っているかもしれないと思ったのだが……。

 私がゲームの世界にきたのはどうやら夢ではないらしい。


 私はポリポリと頭をかき立ち上がると、部屋に置かれていた鏡を見る。

 そこには自分を男女逆転させて美形化させた自キャラ『猫まっしぐら』のイケメンの顔があった。

 だが、その表情は優れずに、目の下にはひどいクマができている。


 あのあと結局。

 【瞬間移動】を駆使してリリとコロネを抱えて、サリー達とは別の集落のエルフの村までついた。

 コロネの別荘で促されるまま食事をとり、食べ終わるとそうそうに寝てしまったのだ。

 とにかく、疲れが酷かった。肉体より精神的なもので。


サリーの記憶を見てからというもの、自分の中でどす黒い感情が渦巻いているのが自分でもわかる。

 あの神威とかいうクズプレイヤーを殺してしまってもいいんじゃないか、とすら思うのだ。


 ……でも、ダメだ。

 きっと一人殺せば、「殺してもいい人間」のハードルがどんどん下がっていってしまう気がする。

 極悪人を殺していくうちに、ちょっとした悪党も別にいいよね?から、最後には気に食わないから殺そう!と考えるようになってしまう。


 私にはそれを実現できてしまう力があるのだから。


 ――たぶん、神威も、盗賊とか殺しているうちに、殺していい人間のハードルが下がっていったんじゃないだろうか。


 まぁ、もともとクズだった。という可能性もあるけれど。

 あの神威とかいうクズとは一緒になりたくない。


 よくよく考えたら、ゲームの世界にきてからまだ二日目なのである。

 二日目から人を殺していたんじゃ、この先、もっと殺す事になってしまうだろう。

 私はどす黒い思いを断ち切るように、頬をぱんぱんと叩いた。


 うん、気持ちは切り替えないと。


 泥のように眠ったおかげか、昨日ほどの疲れはない。


 私ははーっとため息をつくと、


「ステータスオープン」


 ゲームの時と同じ要領でステータスを開く。

 これからゲームの世界で生きていかないといけないのだ。

 ステータスと持っているアイテムのおさらいくらいはしておいたほうがいいだろう。

 そういえば、私レベル上がったみたいだったし。

 ゲームじゃ200がカンストだったけど、こっちの世界じゃ関係ないっぽいから、いくつになったろう?

 るんるん気分でレベルを確認し


 そして、私は自分のレベルを見て、目を疑った。


 


 えーっと。


 目をごしごしして、もう一度見る。


 ……。

 ………。


 んーと目を凝らす。

 しかし、何度見てもその数値は変わらない。


 レベル753


 ありえない数値がそこにはあった。


「な、ななひゃくごじゅうさん……だと!?」

 

 私が驚きの声をあげると、


「さすが ネコ すごい!」

「ですね。私もこんなレベルを拝見したのは初めてです」


 何故か、当然のようにリリとコロネが私の隣でステータスを見ていた。


 ……。


 ………。


 待てぃ。

 リリはともかく何故この変態エルフまで一緒にいるんだ!?

 気配感じなかったぞマジで!!

 これでも気配感知にはすごい自信あるのに!!


「ああ、言い忘れました。おはようございます猫様。

 朝食は何時ごろにいたしましょうか?」


 と、何事もなかったかのように、話はじめるコロネ。


「いや、さらりと流されても困るのだが、何故この部屋に貴方が?」


「はいっ。私の家ですからここにいるのは当然の事かと」


「いや、問題点はそこじゃないんですが」


「それはともかく、猫様、一つお聞きしたいことが」


 いま露骨に話題空したよこいつ。


「……なんでしょう?」


「あのプレイヤーの石化はどういった条件で解けるのでしょうか?

 時間経過で解けてしまうとなると、石化が解けた時点で、また被害が出てしまうことになります」


「ああ、それなら大丈夫です。

 私が解除しないかぎり石化したままですよ」


 言ってから私は考える。

 

「……ああ、でも石化解除の魔法が使えるプレイヤーなら石化解除できてしまいますね……」


 うん。確かにこれはまずい。

 コロネの言うとおり、レベル200の魔術師なら、最高レベル100までしかいないエルフの集落から逃げ出すのは簡単だろう。


 コロネの話によれば、わりとけっこうな数のプレイヤーがこの世界にはいるらしいのだ。

 

 あのクズを助けにくるプレイヤーがいるのかは不明だが、可能性は0じゃない。


 ……ここは腸が煮えくり返る思いだが、私のアイテムボックスに入れて保管が一番いいかもしれない。

 あのクズを持ち歩くとかマジで嫌だけど。

 聞きたい事もあるにはあるが、いま石化を解いたら殺してしまう自信がある。

 それは避けたい。


「わかりました。あのプレイヤーの石像は私が預かりましょう」


 ため息まじりに言うと、


「さすが猫様!!エルフに危害が及ぶのを察知して自ら申し出ていただけるとは!!」


 またハイテンションに感動しはじめるコロネに、リリは不思議そうな表情をして


「コロネ ネコ ダイスキ どうして?」


 と、尋ねる。途端コロネががばぁっと立ち上がり、手を振りあげ演説するかのようなポーズをとると


「よくぞ聞いてくださいました!!

 話は私がレイドバトルにて護衛NPCだった頃にさかのぼりますっ!!」


 熱く語りだした。


 その後約1時間にわたり、何故私に惚れ込んだのか熱く語った。

 やれ、戦い方が美しかったなど、たった二人の護衛で自分を守ろうといろいろ試す探究心に惚れただの、言葉で飾ってはいたが……

 私からすると


 乱暴に扱われているうちに、Mに目覚めてしまった。


 ……という風にしか聞こえない。

 しかし、何故かリリは私を賞賛するコロネの言葉に真剣にうんうん頷いている。

 ダメよ。リリちゃん、こんな変態に毒されちゃ……。


 理由を聞いちゃいけないと感じた私のカンは間違っていなかったようだ。


 


「りりも ソウおもう!

 ネコのタタカイカタ カッコイイ!!

 リリ たすけたトキ も カッコヨカッタ!

 レベル200なのにコダイリュウ たおした ビックリシタ!」


 リリが目をキラキラさせながらコロネに語る……が


「古代龍?ですか」


 つい、興奮してしまい話してしまった言葉にコロネが反応した。

 その声は先ほどとまでと違い、鋭い。

 リリがしまった!?という表情でこちらを見やる。



「まさかカルネル山脈の古代龍カエサルを倒したというのですか?

 いや、いくら猫様でも……あれは神級の魔龍。あれを倒すなんて……

 しかし、カエサルを倒したのならその700超のレベルも説明つきますね」


 ふむ、という感じでコロネが、頷いた。

 いや、一人で答えをだして納得しないでほしんだけど。


「リリ様に、その時の闘いの話を詳しく……それはもう余すことなく詳細にお聞きしたい所ですが

 いまはその話は置いておきましょう」

 

 急にコロネの表情が真剣なものにかわる。

 こうすれば、普通のイケメン中年なんだけどな、こいつ……。


「猫様、差支えなければ、リリ様との出会いと、何故こちらの世界にこられたのかお話いただけませんか?

 事態は、私が思っていた以上に深刻かもしれません」


 その表情は、いつものふざけた表情と違い真剣そのものだった。

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