96話 神の力
「――さて、異界の神も、もう倒して襲撃してこないっぽいし、これからどうしたものかなぁ」
私が神々の封印されている神殿の中央で腕組みをして考えていると、sionが
「まさか異界の神様まで倒しちゃうとは猫さん半端ないっす」
とため息をつく。
「異界の神様を倒したのは魔王だろ?
しかも神様の力を手にれた!とか思ったら、なんか操られたあと速攻失うとか!!
せめて一度でもいいから正気の時に神様の力もってる俺TUEEE!!してみたかったんだけど」
私がむくれながらいうと
「猫さん、無自覚なんっすか?
いまでも十分俺TUEEEしてますよ安心してください」
とsionに突っ込まれる。
うん。そういえばそうかもしれない。
でもやっぱり神様の力は違うじゃん?こうVIP感っていうか何というか。
そういうのを使ってみたかった願望はあったわけだけど。
今回ばかりは仕方ない。
「に、しても、結局私の中にあった力じゃ、微妙にまだ足りなかったみたいだし、異界の女神か、魔獣どっちか倒してこなきゃだよな」
と、私はため息をついた。
神様達さえ、復活してしまえば、あとは神様達に丸なげして異世界ライフを満喫できるし。
……というか。私は魂はこちらの人間なので異世界ライフ✩というのも違うか。
神様の力を一時手に入れたおかげで、思い出したのだが、私の前世は……お姫さまか王子様!などということもなく、本当に普通の村娘Aだった。
神々の戦いから逃れるために逃げていたところ、運悪く巻き込まれて死んでしまったのだ。
その後、魂が死後の世界に向かう途中で、神の力を宿したらしい。
まぁ、魔王の記憶によると私はそのあとも何度か転生してるっぽいけど、そっちの記憶は蘇らなかった。
「でも魔獣か女神を倒せば神様が復活して日本に帰れるらしいし、もうひとふんばりですよね!
猫さんはどうするんですか?」
と、sionが嬉しそうに言ってくる。
「私は残るかな。
ゲームの世界が現実化したのも、人の命を犠牲にしたわけじゃないって魔王が言ってたし」
そう、魔王が言うには、神官長時代のコロネが、魂の消滅から逃れさせるため、神々と大神の力を宿す魂の何人かを日本に転生させてしまったらしい。
それを呼び戻すために、ゲーム化させたらしいのだ。
それ以外にもいろいろ理由はあるらしいのだが、ゲーム化を推奨し推し進めた知の神が、単に日本でネトゲにはまって、魔王コロネに嘘をついて説明していた部分もあるらしく、どこまで本当かわからないと省略された。
知の神はいまでも日本で楽しくゲームライフを満喫しているらしい。
ちなみに知の神もほとんどの力を再生時につかってしまい力は残ってないとのこと。
簡単に経緯を説明するとこうだ
異界の神が世界をのっとったせいで審判の御子が世界を滅ぼそうとする。
ちなみに審判の御子は原初の巨人が人型で現れたもの。
原初の巨人自らが作った神々でないと、存在するための力を貰えることができず、巨人が怒って別世界の神ごと世界を滅ぼそうとするらしい。
そこで異界の神々に力を取られることから唯一逃れた知の神レジーナの助言で、世界が消滅する前にコロネが知の神&消滅しかかった神々と、大神の力をもつ魂を異世界(日本)へ転移&転生させた。
その後。コロネがまさかの魔王の力と審判の御子の力を逆利用して、世界が崩壊する直前で二人の力を吸い取ってスーパーコロネになる。
これはいちかばちかでやってみたらたまたま出来た事で本当にまぐれだったらしい。
スーパーコロネになるさい、魔王と審判の御子に人格を完全に乗っ取られないように、神とエルフの魂を二分した。
神コロネが魔王。エルフコロネが私たちと一緒にいるコロネ。
ただ、世界がほとんど崩壊してしまったため、スーパーコロネの方が知の神に相談したところ、ゲーム化計画がもちあがったのである。
NPC化して滅びかけた魂を休息させて、レベル化を導入することで異界の神々に備え、ついでに日本でゲーム化して日本に転生させて行方しれずになった転生した大神の魂を探そうと。
いま、知の神は大神の魂を内包したまま転生した人物を全員知っているらしい。
ゲームプレイするときにこっそりプレイヤー全員の魂を調べ発見したとか。
魔王コロネの話では、近いうちに転移してくるだろうとのことだった。
レベル400でゲームが終了したのはそこで魂所持者を全員見つけたからとのこと。
知の神は続行したがったが、魔王コロネの方がそんな力の無駄使いできるかと強制終了した。
ちなみに鬼畜プレイヤーに殺されてしまったハルトやその他善良だったプレイヤーは、やはりこっちの人間で神の力を内包した魂だったらしい。
まぁ、魔王が言うには異界の女神クリファに古意に召喚された転移者以外のプレイヤーは、神の力を内包したこちらの魂なのだそうだ。
こちらの世界と結びつきがあったため、魂が引っ張られて召喚で転移してしまうのだとか。
つまるところ、sionも、もとはこっちの世界の人間なのだ。
「にしても、sionの方こそ大丈夫なのか?
日本で死ねば魂が消滅するって話だけど」
魔王の話によれば、本来生まれた世界以外で死ぬと、魂は冥府にいけず、その世界を浮遊してそのまま消滅してしまうらしい。
「ん――。それは確かに怖いけど。
でもやっぱり、両親と彼女がいるうちは日本にいたいっすね。
まぁ、彼女と別れて両親も死んだらこっちに戻ってきますよ」
と、sion。
くっ。本当に彼女好きなんだなこいつ。リア充うらやましい。
ちなみにsionの中の大神の力はコロネによって吸い取られてるので、魔王曰く、神の力がない以上死のうが生きようが好きにしろとのことだった。
でも魔王コロネの話だと、神々さえ復活すれば、私の時代の日本とこっちの世界への行き来が可能らしいから、私も一回日本に戻りたいな。
だって、私が日本でもっていたお金6億円だよ!6億円
せめて、当てたお金はぱーっと使ってから、この世界に戻りたい。
リリをお菓子屋さんつれていってあげたり、料理教室で習わせてあげたり……
遊園地とか水族館とかもいいなぁ。コロネも図書館あたりに連れてけば喜ぶかな?
守護天使達は……うん。まったくどこで喜ぶか想像つかない!ちょっとコミュニケーション不足かも。
他には、砂糖とか大量に仕入れたりとか……コロネやリリ、守護天使を連れてグラニクルオンラインプレイで他の友達に自慢するとか夢は膨らむ一方だ。
「猫さん、なんか顔がものすごく不気味です」
「僕の考えた日本に戻った時の最強プラン!」に夢を膨らませているとsionになぜか突っ込まれる。
……うん。私はいつもそんなにひどい顔をしているのだろうか。
ちょっと今度鏡を見てみようと思う。
……にしても、私はチラリと魔王に視線を向ける。
魔王はシャボン玉のような丸い球体のなかでふよふよ浮いた状態で眠っている。
なんでも、今の魔王の力ではこの世界を維持するので手一杯らしい。
ゲーム化したときのシステムを維持するために、かなり膨大な力が必要らしいのだ。
私からしたら魔王も神様を名乗って信仰を集めればよかったと思ったのだが、魔王の力ももっているため魔族以外に祈られると逆にパワーダウンしてしまうらしい。
信仰を集めないと力が蘇らないのに信仰を集めてしまうと逆に弱体化してしまうという何義な体質なのだ。
だから、悪役を演じて自らを私たちに殺させて、信仰されても問題ない私に原初の巨人の力を移そうと考えたらしいのだが……。
正直はた迷惑は話である。
神様として祀られるとか、そんな恥ずかしい事に私が耐えられるわけがない。
はやめに神々復活させないとやばいよな。
やはりエルフの大神殿の魔獣をシステムから開放して倒すのが一番てっとり早いだろう。
他の魔獣はどこにいるかわからんし。
今コロネがエルフの国王に承諾を貰いにいっている。
そんな事を考えていると
『ネコ!!大変!!』
かなり慌ててた感じで念話で、リリが話しかけてきる。
リリとコロネはリュートの視線をつかって一度エルフの集落に戻り、エルフの大神殿の魔獣を倒す許可を貰いにいっていたはず。
『どうしたの?』
『ネコの友達カンナ!!この世界に来てるかも!!女神に追われている!!』
『はぁ!?』
『レヴィンからの報告です。
旧セルレーン王国領でカンナ様が女神に追われているとの報告がっ!!
カンナ様の名の刻まれた彫刻をもった、男が、ミカエルに猫様に伝えるように伝言を預かったと尋ねてきたそうです。
それと、どうやら大神殿の魔獣が消えたとの報告も』
『はぁ!?なにそれ!?』
『女神の仕業かと思われます。
いま、リリ様と私でセルレーン領に向かっています。瞬間移動は私達の方が早いはず。
ネコ様は呼んだらいつでも瞬間移動で飛べる準備をしていてください』
そこで、リリとコロネは移動に集中しているのか会話が途切れる。
「どうかしました?」
sionが問う、異変を察知したのか、上空で見張りをしていた守護天使達も私の元に降りてきた。
しかし私は無視して魔王に詰め寄ると
「ちょ!?なんでカンナちゃんがこっちに召喚されてるんだ!?
いますぐ自分をカンナちゃんの場所にワープさせてくれ!!」
魔王に問えば、魔王は視線だけをこちらに動かして
「私にそれだけの力は残っていない。
カンナも確かに神の力を宿していた転生者だ。だがこのタイミングで転移してきたとなると、クリファが何かしたのかもしれぬ。
気をつけろ。もう、私はシステムの全てを維持できる力は残っていない。
どこまでシステムが維持できてるのかも……私自身わからぬ。
ギルドチャットや誰も利用していなかった機能などには大分前から力を注ぐのをやめていた
だからカンナと連絡がとれなかったのかもしれぬ。すまなかった」
「力を注ぐのをやめていた?」
「そうだ。私が神力を注いでいなければシステムは作動しない。既に私は世界を維持するだけで手一杯だ。
大分前からお前とお前のギルド員だけにシステム維持の力を注いでいる状態だったが……。
だが、もうそれも限界に近い」
「それは、つまり……」
「ああ、確認してはいないがパーティーを組んでいる味方同士でもダメージを与える事になるかもしれない。
魔法や、技、スキル、アイテムも正常に作動するかもわからぬ。
レベルももう、信用するな。あれを維持できるだけの力が私にあるかも怪しい。
クリファが神の力をつかってくれば、お前たちでも勝てるかわからない」
「レベルがないだけでそんなに違うのか?」
「違う。
そもそもレベルはシステムを無理やり適合することで神々の力を抑え込むのが一番の目的だった。
押さえ込まねば、下級の神のクリファですら、一瞬でこの世界など滅ぼしてしまうほど強大なのだ。
だからこそ、こちらの世界の神々は争う事をためらった。
戦いが生じた時点で、世界は滅亡したも同じなのだから」
言って苦しそうな表情になり眉をひそめる。
その顔は真っ青でいまにも死んでしまいそうだ。
どうやら本当に魔王はやばい状態らしい。
「どうやら……自分が思っていたより時間がないようだ……」
魔王の口から血が溢れ出る。呪文で完全回復させたはずなのにである。
「くっ!!待ってろ、すぐクリファを倒して、神々を復活させてやる!」
私の言葉に魔王は視線だけ向けて目を細め力なく笑うだけだった。
うん。コロネの顔でその表情はキツイ。
まるでコロネが死んでしまうのではないかと錯覚を覚える。
「sionは傷薬を!ファルティナは魔王に回復魔法をかけ続けてやってくれ!
レイスリーネとアルファーは硬質化して私のアイテムボックスの中に!
リリたちから連絡があり次第カンナちゃん救出に向かう」
私の指示に皆頷き、各々行動にうつる。
もうこうなったらリリとコロネがはやくセルレーン領についてくれることを祈るしかない。
どうか――無事で――。




