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89話  オリジナルとレプリカ

『に、しても誰かこの状況を説明してくれないだろうか』


 神界の神殿でぽつんと佇む私達3人に、誰一人応えてくれる者はいない。


『そうですね…。あの女神の自信は一体何だったのでしょうか?』


 と、コロネ。


『アルファー達苦しんだの何だったのかな?』


 リリが首を捻る。


『守護天使だけに効果があったということは恐らく神々の力で天使に何かしらダメージを与える術があったのかもしれません。

 それはレベル補正が無効だったのかもしれませんね』


 と、コロネが目頭を抑えながら答えた。


『大体さー、こういうのって漫画とかだと、戦いが終わったら、真実はこうだったんだ!って教えてくれるキャラがいるはずなんだけど……』


 私が辺りを見回しながら言うが


『リリ、気配探った。誰もいない』


 と、リリちゃんがわりと残酷な事実を告げる。


 えええええ!?何この投げっぱなし状態!!

 神様は水晶に閉じ込められてるし、異界の女神はあっけなく死んじゃうし!!

 私たちにこの状況をどうしろと!?


 私があわあわと頭を抱えていると


『あれ…コロネ、背中光ってる』


 リリがふと、気づいたようにコロネの背後に回る。


『はい?そうですか?』


 私もコロネの背中を見るが……確かにマントごしに光っている。


『あの背中の紋章かな?コロネ、マント脱げるか?』


 私の言葉にコロネは頷き、そのまま服を脱げば……確かに背中の紋章が光っているのだ。

 そして――背中の紋章の光が、何故か眩しく光り輝きだす。


「ちょ!??コロネ!!」


 私がコロネに手を伸ばし、そのままコロネの腕をつかんで、引き寄せ抱きしめる。

 またコロネがどこかへ連れて行かれると思ったからだ。


 

 背中の光は一気に光線のようにコロネの背から立ち上ると、そのまま神殿内に霧散した。

 そして幻想的な光を放ちながら、神々の閉じ込められていた水晶が一瞬光る。


『い、一体何が……』


 コロネを抱いた状態で私は呟いた。

 そのままコロネの背中を見れば――紋章はあるものの、もうすでに光は失われている。

 一瞬光った神々が眠っている水晶も、何事もなかったように先ほどと同じ光をたたえていたのだ。


『なんだったんだろう?』


『わ……わかりません』


 コロネも呆然とつぶやく。結局、謎は再び増えただけだった。



  △▲△▲△▲△▲△▲ 




――にしても、流石にこの状態は……あのコロネの過去イベントをちゃんと伝えておくべき状態だよなぁ……。

 私は神々の眠っている水晶やらを真剣に調べてるコロネの背を見ながら思う。


 一応守護天使やsionを戻すのはもう少し様子見をしてからという事になった。

 時間差で復活とかしてくるかもしれないし。


 それにしても……神々が殺されただの、イベントで見た過去のコロネが言っていた事と一致する。

 しかも見たその女性の水晶がここにあるのだ。

 だが、コロネはその女性の水晶を見ても特に反応することはない。


 過去のコロネは一体何が起きていたのか理解していたのに、いまのコロネにはその記憶がない。


 もしかして、あの映像をみればコロネが何か思い出すかもしれないのだ。

 それに、ここでちゃんと伝えておかないと――後になればなる程言いにくくなる。


『リリ、コロネとリリに見せたい記憶があるんだけど、私の考えてる事は抜きで、映像だけで見せることって可能か?』


『うん!できるけど、何を見せたいの?』

 

 私の隣にいたリリが質問する。


『うん。セファロウスを倒した時、見た過去イベント』


 私は憂鬱な気分で告げるのだった。



 △▲△▲△▲△▲△▲


 


『審判の御子……ですか』


 かつて見た、特別イベントの、コロネ・ファンバードの過去の映像を見終わったコロネが、呟いた。

 ……うん?最初の感想はそれなんだ。

 てっきり金髪美女に触れるかと思ったが……。

 コロネはさして興味がなさそうだった。


『えーっと、感想はそこ?』


 私が問うと、コロネが?マークのような物を浮かべ


『え、はい、確かに疑問点は他にもありますが……なにか重要な事を見落としていましたでしょうか?』


『いや、なんだかコロネ、あの水晶に閉じ込められてた金髪美女のこと好きそうだなーとか……』


 と、水晶に閉じ込められている金髪美女を指さした。

 コロネはそちらを見やると、目を細めて


『ああ、懸想していたのかもしれませんね』


 と、まるで他人事のように言う。

 いや、なんつーか過去であったとしても本人だよね?

 好きだったかもしれない人があんな状態なのに、そんな感じでいいのだろうか。

 コロネって意外に恋人には冷たいタイプなのだろうか?


 念話をつないだまま意識を見せていた後だったのを忘れて、私が少しイラつくと、どうやら気持ちがコロネに伝わってしまったらしい。

 コロネがこちらを見つめ


『猫様、その……。

 たとえ、その女性に懸想していたとしても、それは私ではないと思います』


 と、苦笑いを浮かべた。


『え、いや!あの!そのごめん。そんなつもりじゃ!?

 でも、私じゃないって……?』


『猫様が話を逸らしたので、もうご存知かと思っていましたが……。

 私は、この映像のコロネ・ファンバードではないと思います。


 私は猫様の世界で言う、レプリカという存在でしょう。

 ゲーム化する際に、護衛NPC用の身体をつくり、オリジナルのコロネ・ファンバードの100年間生きた記憶を埋め込んだ存在が私かと。

 恐らく、レプリカの私が生きたのはゲームから解放された300年です。

 そしてその間、私はオリジナルと別の道を歩みました。

 オリジナルの記憶の100年より長い月日を私は過ごしています。

 もうまったくの別人といっていいかと』


 言って、少し寂しげに微笑む。


 あああああ!?そうだ忘れてた。

 そっか、コロネは自分の事をレプリカだと思っていたんだった!

 しかも世界が一回滅んだだの、情報から総合すれば、レプリカ説が有力だし!!


 うん。なんだ。コロネに好きな人がいたかもしれないと悩んだ私は一体なんだったんだろう。

 こんな事ならとっとと話しておけばよかった。


 に、してもコロネには悪いことしたな。うん。反省。


『オリジナルがかなりの年齢を重ねているところを見ると、ゲーム化する際にかなり歴史を巻き戻したようですね。

 一度sion様にも映像を見てもらって検証したほうがいいかもしれません。

 いくらオリジナルとはいえ、自分が絡むと、どうしても思考が一方通行になりがちですから。

 第三者の視点が必要でしょう』


 と、コロネがため息をついた。


『うん…そうだな。

 とりあえず、私達の出来ることは……』


『事は?』


 私の言葉にリリが聞き返し


『ここを調べた後、神龍を倒して全員分のSSR装備を揃えるコトだ!!!』


 私がどどーんと宣言してみるが……物凄い白い目でリリとコロネに睨まれる。


 いや、だってねぇ……。

 やっぱり魔王に備えておくことが大事じゃん?


 と、私は心の中で言い訳してみるのであった。

 

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